南大東島に隔離分布するダイトウコノハズク個体群の保全に関する研究Conservation biology of the isolated population of the Daito Scopus Owl on Minamidaito Island.

著者名Authors

ダイトウコノハズク保全研究グループWorking group for the study of conservation of the Daito Scopus Owl

高木昌興Masaoki Takagi1)・ 赤谷加奈Kana Akatani1)・ 松井晋Shin Matsui1)

著者所属Affiliations

  1. 1) 大阪市立大学大学院理学研究科生物地球系専攻; 〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138

要約Summary

沖縄県島尻郡南大東島に生息するリュウキュウコノハズクの一亜種、ダイトウコノハズク Otus elegans interpositus の島内における分布、環境選好性、繁殖生態、生息個体数を明らかにすることを目的として調査を行なった。ダイトウコノハズクは、幅の狭い防風林と畑地の中の、小さな樹林地だけで確認された。防風林における雄のなわばりは一列に分布していた。調査した全ての雄のなわばり内で、それぞれ1個体の雌の声が確認された。島の内陸部の、モクマオウが優占する高木の被度が高い樹林地に生息する個体が多かった。繁殖期の雄の平均なわばり面積は2.4ha、平均行動圏面積は5.2haであった。つがいを構成する雌雄のなわばりは、繁殖期、非繁殖期ともにほぼ等しく、なわばりは経年維持された。行動圏となわばりの面積が等しい雄、行動圏の面積がなわばり面積の2倍~8倍になる雄があった。複数のなわばりを移動しながら行動する個体が確認された。平均一腹卵数は2.7卵、平均巣立ち雛数は1.6雛、巣立ち成功率は69%、繁殖成功率は78%であった。島全体で繁殖する雄の数は92個体と推定された。スピーカーから流した雄の声に反応した雄の個体数は、146個体と推定された。現在生息が確認されていない樹林地に巣箱を架設し、繁殖するつがいを増やすことが、ダイトウコノハズク個体群を保全する暫定的な措置として必要である。将来的には、ダイトウビロウなどの伐採前の大東諸島にあった樹種から成る森林を復活させることが重要である。


We studied distribution, habitat preference, and breeding ecology of the Daito Scopus Owl Otus elegans interpositus on Minami-daito Island, Okinawa. Daito Scopus Owls were only found in wind-shelterbelts and small patches of woods. Male breeding territories were distributed in wind-shelterbelts in a row. They were socially monogamy. They preferred the area were dominated by casuarinas with high coverage in the inside of hills on the island. Mean area of male's breeding territory was 2.4ha, and mean area of home range was 5.2ha. Some territories were occupied during two successive years by same pairs. Floaters of both sexes moved around the island. Mean clutch size was 2.7, the mean number of fledglings was 1.6, fledgling success (the number of fledglings*100/clutch size) was 69%, and nesting success was 78%. We estimated the number of breeding males was from 92 to 146 individuals on the island. It is important for conservation of Daito Scopus Owl population that nest boxes are established in woods without natural cavities for nesting. In the future, we should establish the forests composed by native trees on the Daito Islands, and increase the forest area.

1. はじめに

亜種ダイトウコノハズク Otus elegans interpositus は、南西諸島から台湾にかけて分布するリュウキュウコノハズクの一亜種で、沖縄本島から東に約390km離れた太平洋上に位置する大東諸島の北大東島と南大東島だけに生息するとされる(日本鳥学会 2000)。大東諸島は大陸と陸続きになった歴史がない大洋島で、かつては固有の8亜種の鳥類が生息していた。しかし、既に4亜種が絶滅した(姉崎ほか 2003)。絶滅した亜種のうちダイトウミソサザイ、ダイトウヤマガラ、ダイトウノスリは森林に依存する種である。これらの固有の亜種が絶滅したのは、1900年以降の開拓にともなった大規模な林木の伐採が主要因と考えられる。亜種ダイトウコノハズクも、北大東島では近年確認されず(赤谷・松井・高木 未発表)、南大東島では1999年に23個体の雄の声が記録されたに過ぎない(中村・嵩原 2001)。沖縄県版レッドデータブックでは、絶滅危惧種にランクされている(沖縄県 1996)。南大東島の樹林地は、小面積で、かつ分断化されている。現在でも、農地などの開拓のために樹木の伐採は継続されており、樹洞に営巣するダイトウコノハズクの生息はさらに困難になるであろう。

本研究では、南大東島におけるダイトウコノハズクの島内の分布、環境選好性、繁殖生態、生息個体数を明らかにすることを目的とした。

本研究の実施にあたっては、南大東村教育委員会から施設の使用や資料の提供などでご協力を頂き、島在住の方々からも日々の生活など様々な面から支援を頂いた。心からお礼を申し上げる。

2. 調査地および方法

調査地は、沖縄県島尻郡南大東島(25°56'N、131°14'E)で行なった。南大東島は、沖縄本島から東に約390km離れた海洋上に位置する亜熱帯性気候の大洋島である。面積は約30km2で、島の面積の約60%がサトウキビ畑、約15%が樹林地、残りは居住地区や海岸植生である。島は盆地とそれを取り囲む標高約40~50m(最高標高75.8m)の丘陵地帯に分けられる。盆地の中央部には大小の池と湿地が点在し、神社を取り囲む小さな樹林地がいくつか見られる(図1)。丘陵地は、ビロウ(Livistona chinensis)、モクマオウ(Casuarina equisetifolia)、リュウキュウマツ(Pinus Luchuensis)が優占する、幅20~180mの環状の防風林が二重から三重に取り囲んでいる(図1)。畑の境にはテリハボク(Calophyllum inophyllum)やフクギ(Garcinia subelliptica)が植栽され、並木を構成している。海岸近くの植生は、ススキ(Miscanthus sinensis)とアダン(Pandanus odoratissimus)で構成される。

図1 南大東島におけるダイトウコノハズクの分布

図1 南大東島におけるダイトウコノハズクの分布

濃い影の部分は樹林、薄い影の部分とその中の白抜きは湿地と池、その他の白い部分はサトウキビ畑、横線の部分は住宅地を示す。破線で囲んだ部分は詳細調査区を示す。黒い丸印は雄の鳴き声をもとにダイトウコノハズクの生息を確認した場所。

(1) 分布と環境選好性

分布調査は、2003年10~12月、2004年3~11月に行った(一部に2002~2003年の調査を含む)。島全体の樹林地沿いに調査路を設定し、月1回、ダイトウコノハズクが最も活発に鳴く時間帯である日没後4時間以内に自転車で回り、雄の声が聞かれた位置を地図上に記録した。より詳細な調査を行う約300haの調査区を設定し(以下、詳細調査区と呼ぶ。図1)、2003年3~8月まで3日に1回、雌雄の鳴き声を確認した位置を地図上に記録した。巣立ちが始まる時期は林縁を歩き、雛の声を確認した位置を地図上に記録した。詳細調査区では、それぞれの個体のなわばりを特定するために、鳴きながら移動した場合や鳴き交わし地点に注意した。ダイトウコノハズクの鳴き声は、それぞれの個体に特徴的で識別が可能である(Akatani & Takagi 準備中)。声の特徴を利用し、定住している個体を特定した。

ダイトウコノハズクが生息している樹林地の特徴を明らかにするために、島全体の樹林地部分から乱数表を用いてランダムに51地点を抽出し、雄の鳴き声を確認した地点との間で植生の特徴を比較した。複数回の鳴き声を確認した地点を一地点と数え、この解析では51地点を用いた。複数個体が同時に鳴いていた情報を元にして、同一個体から複数地点を用いないようにした。解析は、各地点を中心とした一辺20mの方形区が、樹林地の林縁に水平になるように設置した。比較項目は、最も近い海岸からの各地点までの距離、方形区内の優占樹種、高木層(10m以上)、亜高木層(5m~10m)、低木層(5m以下)、林床部の各被度である。海岸からの距離は地図上で測定した。被度は目視により6段階(0:0%、1:方形区の25%まで、2:方形区の50%まで、3:方形区の75%まで、4:方形区の100%未満、5:100%)に区分した。

林内を歩いて樹洞を探索し、ダイトウコノハズクが利用しているかどうかビデオ撮影で確認した。繁殖に利用されていた樹洞は、繁殖終了後、巣のある木の樹高、胸高直径、巣の入り口の高さ、入り口の幅、深さを計測した。

(2) 行動圏となわばり調査

2003年10月から2004年11月まで調査を行った(一部に2002~2003年のデータを含む)。ダイトウコノハズクの行動圏を明らかにするために、電波発信器を装着した個体を追跡するラジオテレメトリー法を用いて調査した。ダイトウコノハズクは霞網を用いて捕獲した。電波発信機の重さは、リュウキュウコノハズクの別の亜種であるランユウコノハズクO. e. botelensisの調査で、装着される個体にとって安全とされる基準が体重の5%以内とされている(Severinghaus 2000、Kenward et al. 2001)。そこで、捕獲した個体の体重を計測し(装着個体数:15個体、体重範囲:76.4~103.5g)、電波発信器の重さが体重の5%以内に入っていることを確認した。電波発信機は、1.8gもしくは2.2gの尾羽装着型発信機(アメリカ合衆国ATS社製)、または3.5gのハーネス型(背負い型)発信機(イギリスBio Track社製)を用いた。行動追跡は日没後4時間継続的に行い、15分おきに電波の発信された位置を地図上に記録した。鳴き声を確認した場合は、鳴いていなかった場合の位置と区別して記録した。一個体あたりの平均調査日数は、11.40±SD6.25日(範囲4~24、個体数15)、平均総調査時間は、45.6±SD25.0時間(範囲16~96、個体数15)。解析においては、特定した位置の最外郭点、および鳴いた位置の最外郭点をそれぞれ直線で結んだ多角形を行動圏、およびなわばりとした。

(3) 繁殖成績

2004年4~8月に調査を行った。一腹卵数、および一腹雛数の確認は、繁殖個体が巣を離れている間に行った。育雛後期になると、雛は巣から出て活動するが、翌朝までに巣に戻る。そのため、雛が巣から出て、翌朝になっても巣に戻らなくなる時点を巣立ちとし、その雛数を巣立ち雛数とした。一腹卵数に占める巣立ち雛数の割合を巣立ち成功率、全発見巣数に占める巣立ちを確認した巣の割合を繁殖成功率とした。

(4) 雄の個体数

2004年7月に、録音した雄の鳴き声をMDプレイヤーで再生し、スピーカーから流し、その声に反応して鳴き返す雄を確認するプレイバック法を用いて調査を行った。雄のなわばりの平均長径は366mなので(本研究)、それぞれの個体が声を流した地点から遠くにいる場合、流した声が聴こえずに反応しないことや何らかの要因で反応しないことがあると考えられる。そこで、電波発信器を用いた調査で行動圏が確定され、声の特徴から個体識別されている7個体を用いて行動圏の距離に応じた反応率を確かめる実験を行った。スピーカーから同音量の鳴き声を行動圏の端から100mの地点、200mの地点、300mの地点で流し、距離に応じた反応の有無を調べた。3つの地点で1個体につき5回ずつ実験を行った。被実験個体が機器から再生する声に慣れるのを避けるため、1個体につき1日1回だけ実験を行った。

中村・嵩原(2001)は、少なくとも500mまでダイトウコノハズクの鳴き声を聞き取れるとしている。本研究では、島内全域に600m間隔の66箇所の調査地点を定めた。日没後4時間以内にそれぞれの調査地点で雄の鳴き声を流し、半径300m以内の距離で反応して鳴いた雄の位置を地図上に記録した。それぞれの調査地点で半径300mの円を描くと、島内の全ての樹林地の96.7%を覆っていたので、ダイトウコノハズクが潜在的に生息可能な範囲はほぼ全て調査できていると思われる。解析では、調査地点から100m以内、100mより遠く200m以内、200mより遠く300m以内の3つの距離別に区分し、反応した個体数を集計した。反応しない雄の個体数を含めるために、距離別の集計数と実験から求めた反応率から、以下の式を用いて全体の雄数を推定した。

N = r1 / P1 + r2 / P2 + r3 / P3……………………(1)

N:全体の雄数、rn:距離nの範囲内で反応した雄数(1:0~100m、2:100~200m、3:200~300m)、Pn:距離nの反応率

以下、ただし書きがない限り、文中の数値は平均値±SD(範囲、例数)として記述される。

3. 結果

(1) 分布と環境選好性

ダイトウコノハズクは防風林と、畑地の中の小さな樹林地だけで確認され、住宅地、畑地、畑の境の並木、海岸植生では確認されなかった(図1)。詳細調査区内では、18個体の雄のなわばりが、防風林に沿って一列に並んでいた(図2)。18個体全てのなわばり内で、それぞれ1個体の雌の声が確認された(図2)。詳細調査区内の10個のなわばりで、巣立ち雛を確認した(図2)。

図2 調査区内のダイトウコノハズクのなわばりの分布

図2 調査区内のダイトウコノハズクのなわばりの分布

灰色の部分は森林を示す。黒丸は雄の鳴き声を確認した場所、白丸は雌の泣き声を確認した場所、黒の四角形は巣立ちの雛の泣き声を確認した場所を示す。実践で囲んだ枠は雄のなわばりを示す。

ダイトウコノハズクの鳴き声が聞かれた地点の海からの距離の中央値は783m(174~1,119m、51)、ランダムに抽出した点の中央値は417m(97~1,380m、51)で、鳴き声地点は海からの距離が有意に遠かった(Mann-Whitney U検定, z=-2.75, P<0.01)。各階層の被度を比較したところ、鳴き声が聞かれた地点における高木の被度が有意に高かった(Mann-Whitney U検定, z=-3.95, P<0.0001、図3)。鳴き声が聞かれた地点51箇所のうち、ダイトウビロウ、モクマオウ、ダイトウビロウとモクマオウの両種、その他の樹種(リュウキュウマツやシマグワなど)が優占する地点の割合は、それぞれ19.6%(10箇所)、37.3%(19箇所)、39.2%(20箇所)、3.9%(2箇所)であった。ランダムに抽出した地点51箇所でも同様の順番で、45.1%(23箇所)、21.6%(11箇所)、21.6%(11箇所)、11.8%(6箇所)であった。声が聞かれた地点は、ランダムに抽出した地点よりもモクマオウが優占していた(χ2検定、χ2=11.867, df=3, P=0.008)。

図3 ダイトウコノハズクの生息地とランダム抽出点の各層の被度の比較

図3 ダイトウコノハズクの生息地とランダム抽出点の各層の被度の比較

黒抜きは雄の泣き声が聞かれた場所(n=51)、白抜きはランダムに抽出した点(n=51)の平均の被度を示す。
Mann-Whitney U-test*P<0.0001

9つがいの繁殖を9巣で確認した。これらは、全てモクマオウにできた樹洞で確認された。巣の入り口から地面までの長さは、384.2±146.8cm(223.0~687.0cm)、巣の入り口の幅は、9.3±3.3cm(6.0~16.0cm)、巣の入り口から巣の中の最深部までの長さは42.9±22.1cm(15.0~90.0cm)であった。巣の作られた樹の高さおよび胸高直径は、それぞれ13.8±1.8m(10.2~15.5m)、44.4±12.0cm(24.4~62.1cm)であった。

(2) 行動圏となわばり

繁殖期の雄の平均なわばり面積は2.4±0.9ha(1.1~2.8ha、6)、平均長径は366.2±113.2m(185~487m、6)、平均短径は88.2±22.6m(70~132m、6)であった。繁殖期の雄の行動圏の平均面積は5.2±2.4ha(2.7~8.2ha、6)、平均長径は482.3±108.0m(371~674m、6)、平均短径は140.8±53.9m(75~195m、6)であった。繁殖期の雌の行動圏の平均面積は1.7±0.5 ha(1.2~2.2ha、4)、平均長径は280.9±103.1m(160~412m、4)、平均短径は75.9±14.9m(63~97m、4)であった。

2002年の非繁殖期に捕獲した図4aの雄個体は、2003年の繁殖期、非繁殖期を通してほぼ同じ場所をなわばりとしていた(図4a)。つがいの雌雄の両方に電波発信機を装着して調査した結果、つがいを構成する雌雄のなわばりは、繁殖期、非繁殖期ともにほぼ等しかった(図4b、c、d)。図4の4つがいは、2003年から継続して、2004年もモクマオウにできた樹洞を巣として利用した。

図4 ダイトウコノハズクのなわばりと繁殖巣

図4 ダイトウコノハズクのなわばりと繁殖巣

灰色の部分は森林を示す。a は同一雄個体の2年間のなわばりで、点破線は2002年の非繁殖期、太線は2003年の繁殖期、細線は非繁殖期。b、c、d はつがいのなわばり、実践は雄、破線は雌のなわばり、太線は繁殖期、細線は非繁殖期を示す。黒丸は繁殖巣を示す。

電波発信機で追跡した雄7個体のうち、3個体はなわばりと行動圏の大きさはほぼ等しかった。図5に示したように、なわばりから大きく離れた場所に出て行動する4個体が認められ、このような雄の行動圏面積はなわばり面積の2.4~8.2倍に及んでいた。

図5 ダイトウコノハズクの雄のなわばりと行動圏

図5 ダイトウコノハズクの雄のなわばりと行動圏

灰色の部分は森林を示す。白丸はラジオテレメトリーによる雄の観察点、実践はなわばり防衛行動が見られた範囲、破線は行動地点を結んだ最外郭多角形、黒丸は繁殖巣を示す。

非繁殖期に鳴かずに複数の雄のなわばりを移動しながら行動する雄1個体が確認された(図6a)。繁殖つがいのなわばり内で行動する繁殖していない雌1個体が確認された(図6b)。

図6 ダイトウコノハズクの非繁殖個体の行動圏

図6 ダイトウコノハズクの非繁殖個体の行動圏

灰色の部分は森林を示す。a は実線がなわばりを持たない雄の行動圏、破線は雄のなわばり。b は実線が非繁殖雌の行動圏、点破線が繁殖雄のなわばり、黒丸が繁殖雄の繁殖巣を示す。

(3) 繁殖成績

平均一腹卵数は2.7±0.8 (2~3、7)、平均巣立ち雛数は1.6±1.3 (1~3、8)だった。巣立ち率は69±41% (0~100%、7)、繁殖成功率は78%(7/9)であった。

(4) 個体数

島全体で雄の鳴き声を数えた結果、5月は46地点、6月は65地点、7月は43地点、8月は17地点、のべ171地点で雄の声が確認された。行動圏の調査からダイトウコノハズクは、平均長径366mのなわばりに定住していることがわかった。そこで、異なる調査日に366mよりも近接して記録されたものは同一個体とみなして、鳴き声の位置を整理した結果、島全体の雄数は92個体と推定された(図1)。

反応率の実験の結果、100m地点では0.69±0.11 (0.6~0.8)、200mの地点では0.43±0.21(0.2~0.8)、300mの地点では0.26±0.10(0.2~0.4)であった。66箇所の定点で、スピーカーから流した声に反応した雄の数は、定点から100mまでの範囲で43個体、100mより遠く200m以下の範囲で19個体、200mより遠く300m以下の範囲で10個体であった。これらの数値を式(1)に代入すると、雄の全個体数は146個体となった。

4. 考察

ダイトウコノハズクの雄の個体数は、92から146個体と推定された。ダイトウコノハズクは内陸部にある高木層の被度が高く、細長い帯状に連なる樹林地に、隙間なく隣接してなわばりを構え生息していた。高木が多い場所ほど繁殖可能な樹洞が多いため、このような分布を示すと推察される。なわばりと行動圏の面積が等しい場合がある一方で、行動圏の面積がなわばりの8倍におよぶ場合もあった。この要因は今のところ不明であるが、なわばり内だけでは餌を十分確保できず、採餌のために広く動いた可能性、つがい外交尾の相手を求めて広く動いた可能性などが考えられる。

ダイトウコノハズクは、つがい相手を替えずに、なわばりや営巣場所を複数年維持していた。雄のなわばり内では、つがい以外の非繁殖個体が確認された。これらがどのような履歴を持った個体なのかは不明であるが、なわばりを獲得できずに(または、せずに)放浪している個体である。台湾のランユウ島に生息するランユウコノハズクでも、同様の非繁殖個体が認められている(Severinghaus 2000)。ランユウ島の環境は、餌が豊富な一方、繁殖場所となる樹洞が不足しているために、なわばり内で採餌を許される非繁殖個体が存在すると考えられている(Severinghaus 2000)。非繁殖個体の放浪が、繁殖に参加していると思われる雄の個体数とプレイバック法による雄の推定数が大きく異なった要因となっている可能性がある。

ダイトウコノハズクは、移入樹種であるモクマオウが優占する樹林地を選好していた。潜在植生の優占樹種とされるダイトウビロウだけから構成される樹林は、選好されていなかった。モクマオウの成長は速いが、ダイトウビロウは成長が遅い。現在の南大東島のダイトウビロウは、ダイトウコノハズクに樹洞を提供できるほどには成長していないので、ダイトウコノハズクの営巣はモクマオウ無しでは不可能といえる。2004年に訪れた多くの台風で、樹洞が形成される程に成長したモクマオウは倒れ、潜在的に利用可能な樹洞の多くが奪われた。このような撹乱は今後も起こりうることである。そこで、ダイトウコノハズクの個体群を安定して維持するには、台風によって樹林地の一部が崩壊しても、生息場所を提供し続ける程の面積を確保する必要がある。

5. 結論

ダイトウコノハズクは、防風林として残されたわずかな樹林地のほぼ全域に生息していた。雄の繁殖個体の推定数とプレイバック法による推定数が大きく異なることから、なわばりを獲得できない個体が放浪している可能性が示唆された。ダイトウコノハズクが生息していない樹林地は、海に近い傾向があった。しかし、海に近い樹林地にも生息しているつがいが確認されているので、生息が確認できない樹林地は、高木の被度が低い他、何らかの条件がダイトウコノハズクの生息に適していないと考えられる。現在のところ、ダイトウコノハズクの巣立ち成功率は高い。ダイトウコノハズクが繁殖に利用可能な樹林地の面積を広くすることができれば、巣立った若い個体や放浪個体の定着や繁殖を促進できると思われる。しかし、ダイトウコノハズクに樹洞を提供できる程成長が速い土着の樹種はなく、潜在植生を復元するには時間が必要である。そのため、現在生息が確認されていない樹林地に巣箱を架設し、定着を促し、繁殖するつがいを増やすことが、暫定的な措置として必要である。それと平行し、ダイトウビロウをはじめとした、伐採前の大東諸島にあった潜在植生から構成される樹林地を増やすことが、ダイトウコノハズクが生息可能な環境全体を保全する上で重要であると考えられる。

引用文献

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