エゾシカ猟用鉛弾を原因とするワシ類の鉛中毒に対する防止活動Activities for prevention of eagles' lead poisoning caused by lead shot for deer hunting

著者名Authors

市民団体 ワシ類鉛中毒ネットワークLead Poisoned Eagles Network

黒沢信道Nobumichi Kurosawa

著者所属Affiliations

  1. 北海道釧路市芦野2-12-3302 齊藤慶輔方

エゾシカ猟に用いられた鉛銃弾によるワシ類の鉛中毒を防止するため、2002年10月より2003年9月まで以下の活動を行なった。

まず鉛中毒の多発地帯である北海道東部の山林を中心に、定期的な巡回を行ない、ワシ類の生息数、異常の有無、シカ猟の状況等について調査した。調査には36名が参加し、のべ304日に渡って調査を行なった。その結果、北海道内におけるワシ類の生息状況が明らかとなり、道東山間部ではエゾシカ猟の終了する2月より飛来数が増加することから、エゾシカ残滓への依存度がきわめて高いことが示された。今年度の調査では、異常をうかがわせるワシが少数観察されたが、収容例や死体回収例はなかった。

また環境省と連携のもと、北海道内で収容されたワシ類の死因究明のために2002年度の死亡17例について解剖を行なった。この結果、7例について鉛中毒死と解明した。その他に他機関での収容例1例についても鉛中毒症と診断され、全体では8例の鉛中毒死が確認された。また生体収容例については、血液検査の依頼を受けて鉛濃度の測定を行ない、治療についてのアドバイスを行なった。 鉛中毒を含むワシ類の保護について啓蒙するため、2003年2月9日に釧路市において「オオワシとオジロワシの現状と保護」と題したシンポジウムを開催した。シンポジウムには海外からの研究者として、モスクワ大学のV.B.マストロフ教授、アメリカからWildlife StudiesのD.K.ガルセロン氏を招聘、国内からも3名の研究者をパネリストとして立てた。参加者は80名余となり、盛り上がりのある会となった。

その他にも、鉛中毒防止の一環として、関係団体や関係者への情報提供、インターネットを使った情報発信、鉛中毒対策会議への参加など幅広い活動を行なった。

これらの活動および関係各方面の努力の結果、2002年度(2002年秋から2003年春まで)の北海道内での鉛中毒死はオオワシ2例、オジロワシ6例の合計8例と、これまでより減少する傾向になった。しかしワシ類以外にも、クマタカやオオタカにおいて鉛中毒の発生が確認されるなど、シカ猟を原因とした鉛中毒の被害は、広い範囲に拡大していることも明らかとなった。鉛中毒根絶のためには、なお一層の努力が必要であると考えられた。

今年度の活動の詳細については、A4版76ページにわたる活動報告書「ワシ類の鉛中毒根絶をめざしてV-ワシ類鉛中毒ネットワーク2002年度活動報告書-」にまとめ、今後の鉛中毒防止活動への資料として活用されるよう、関係機関、関係団体等に配布した。

写真1 現地巡回(鉛中毒の原因となるシカの残滓を埋却している)

写真1 現地巡回(鉛中毒の原因となるシカの残滓を埋却している)

写真2 死亡したワシを解剖して死因を究明する

写真2 死亡したワシを解剖して死因を究明する

写真3 シンポジウム「オオワシとオジロワシの現状と保護」で挨拶する黒沢代表

写真3 シンポジウム「オオワシとオジロワシの現状と保護」で挨拶する黒沢代表

写真4 招聘したガルセロン氏(左)とマストロフ博士(右)

写真4 招聘したガルセロン氏(左)とマストロフ博士(右)

写真5 北海道野生生物室研究員・玉田克己氏の講演

写真5 北海道野生生物室研究員・玉田克己氏の講演

写真6 会場には立ち見も出て、熱気に包まれた

写真6 会場には立ち見も出て、熱気に包まれた