箕面市小野原西地域の自然環境保全とまちづくりOnoharanishi, Minoh-City nature conservation

著者名Authors

みのお山自然の会Minoh-yama shizennokai

本多孝Takashi Honda1)

著者所属Affiliations

  1. 1) みのお山自然の会会長(大阪府箕面市新稲6-21-2)

1998年、既に計画が進んでいた箕面市小野原西特定土地区画整理事業により開発されることを知りました。この時点では、既に青写真ができている段階でした。私達は、この地域の自然観察をすすめていましたので、この里やまの地域の自然を見直し、自然そのものと人と自然の関わりを継承していくために行政と話し合いを持ちました。

小野原西は、市街地の中に残った里やまの地域があります。山あり谷あり、そして溜池あり、田畑あり。

里やまは雑木林ではなく竹林なので、今も高級料亭にタケノコを供給しています。エネルギー革命以降見捨てられた雑木林の里やまでなく、今も使われている生きた里やまの地域です。

その後この地域の自然環境調査をみのお山自然の会が市民参加で進め、それを行政が協力して自然特性を見極めまちづくりに活かして行こうと、調査や自然観察会を1年半がかりで調べてきました。

この調査では、自然観察会での市民聞き取り調査、人と自然の関わり、歴史文化の聞き取り調査、里やま調査、植物(木本、草本)、野鳥、昆虫等の調査を行ないました。博物館学芸員、エコミュージアムの研究者、野鳥の会・自然観察指導員等ベテランリーダーに参加・協力頂きました。

その結果、いくつかの発見があり、地元の人達も知らなかったヒメボタル(準絶滅危惧種・大阪カテゴリー)の大きな生息地帯がある事がわかりました。また、メダカを始めとした絶滅危惧種が生息している事も分かりました。そして、人と自然の関わりや昔からの歴史的なもの、文化的なものもだんだん明らかになってきました。行政も議会でヒメボタルの保全を取り上げるようになりました。

とても貴重な自然があるということと共に、人と自然の関わりの問題についても分かってきたことがあります。市民は自然が良いから残せというが、ゴミはほったらかし、草花は取って行く、犬の糞はしっぱなし、困ったものだということでした。そして地元の人達は、相続や税金、農業に希望が持てなかったり、高齢化や後継ぎ問題を抱えています。維持していけない田んぼが短い期間にうっそうとした竹薮になっていました。タケノコを取る竹林とははっきり違います。町中の地域だけに無計画な開発もあります。終戦直後の航空写真と比べるとお寺、墓地、テニスコート、車屋、ハイツ、ディスカウントショップと自然が壊されてきています。実はこのタケノコ畑の竹薮といえど、昔は畑だった所であり、人が関われなくなってきた中で竹林が増え、その結果としての新しい活用のスタイルということができます。

ここは人の農耕という関わりの中でできてきた多様な生物相を持つ自然環境です。そして、その関わりの中からこの地域の歴史や文化も感じられます。人々の暮らしがこれらの環境全般を作ってきたし、維持してきたのです。その人と自然の関わりが開発とは関係なくつぶれつつあります。開発がなくなれば自然が守られるという単純なものではありません。

私達は行政を市民主導で巻き込み、自然を活かしたまちづくりとしてできるだけ自然を守り配慮する方向を目指していくことになりました。

当初、行政は自然環境への配慮は、低公害の重機を使って工事をすることしか掲げていませんでした。

そこで2000年度の助成をいただき、これらの自然環境調査をまとめ関係行政機関にプレゼンテーションし、箕面市小野原西地域の自然環境保全とまちづくりを進めていくことにしました。

この地域の自然環境や歴史・文化・産業遺産を保全し、今の私たちの暮らしを築いてきた遺産を次の世代に引き継ぐことが求められていると思います。開発にあっても、まちづくり理念条例にある地球環境保全の課題を決して軽視してはならないと危惧しております。そして、その事が緑を活かしたまちづくりのコンセプトにもつながるはずであり、地元地域の自然環境や歴史・文化・産業遺産を保全・継承する努力を進めることは、われわれ市民・行政の責務と考えられます。

小野原西の緑を活かすことは、ただ単に木々が植われば良いというものではなく、生態系の維持を目指していくとともに「人と自然の関わり」を再構築していく方策、ソフトやプログラムづくりも、このまちづくりの中で行なわなければ残せないし、活かせないと考えます。集合農地の将来を考えていくことは、この地域の歴史・文化・産業遺産を継承していくことにもつながります。

また、過去この地域の自然環境や歴史・文化・産業遺産の調査の中で明らかになってきた点や、この間の何年かにわたる行政との話し合いの中で保全を要望してきた問題など、更に検討を進め下記の点について例え開発の中にあっても、保全継承の「市民・行政の責務」を強く求めています。

私達の話し合いの中で、行政も努力する方向を示してきました。そして、地権者とも話し合う機会を作っていただきました。はじめは自然保護団体と話し合うことに消極的で反発されていましたが、私達の趣旨を理解していただけるように努力いたしました。

私達の会の中には地元の地権者も入会いただき、自分の田んぼを自然観察会に提供してくださっています。反対運動でない自然保護活動に一定の支持をいただきました。

下記は私達が行政に出してきた要望です。

1. 自然環境の保全について

  • 絶滅が危惧される種について適切な保全をして下さい。
  • ヒメボタルの生息地を現状で保全して下さい。
  • 小野原6号線の位置は、ヒメボタルの生息地に当たります。その道路の移動と緑地予定地の移動変更により生息地を保全して下さい。
  • 溜池の土手は現状を保全するとともに、改修する溜池の土手は表土を保全し、改修後は表土を戻し元の土手を復元して下さい。
  • 宮池は山側に浅瀬があり、水生植物などが繁殖し木々が覆い、冬場の渡り鳥がすごせる環境をつくりだしてください。また、釣り人などによる被害や脅威が及ばないよう、垣根と柵により最大限の渡り鳥の飛来する場をつくり、グローバルな問題にも対応し貢献できるものにして下さい。
  • 樹木は現在あるものをいったん保護し、この地域の自然特性を復元する努力をして下さい。
  • 田んぼや畦の表土を保全し、集合農地の自然環境が迅速に回復するように対応して下さい。
  • 用水路は、メダカなど絶滅危惧種が生息できる環境になるよう保護対策を講じてください。
  • トンボやカエルが生息できる池など、保護対策を講じてください。
  • 緑の核と千里公園との間が緑の回廊で繋がるようにし、生物が行き交うことのできる生態系を持ったものにして下さい。
  • 極端な段差や石垣により隔離されたような状況は避け、地形を活かしたものにして下さい。
  • 工事の途中にあっても自然環境の保全に努め、工区の境目などによる断面区域の自然環境の大幅な変化が起こらない努力をして下さい。
  • 地球環境保全の立場から工事請負業者には、箕面市地球環境保全行動計画の事業者の責務を実行するよう要請し、工事車両のアイドリングストップなど指導して下さい。
  • 関連業者や関係市職員に、工事に当たって事前に環境研修を実施し環境配慮の徹底を図って下さい。
  • 自然環境と人とのふれあいの場や活動の場を保全して下さい。
  • どうしても人工的資材を使う場合は、自然環境が復元しやすいサワガニブロックなど、環境に配慮した資材を使うようにして下さい。 
    ※注 サワガニブロックは自然保護団体の会長(大阪市立大学大学院で土木工学の教授)が考案されたもので、土木工学上の強度とともに自然生態系を知り尽くした仕組みを利用したものである。

2. 歴史文化・産業遺産の継承について

  • 公園は里山の環境を継承し、市民による里山管理や公園利用・活用のリーダー養成をすすめてください。
  • 区画整理事業の周辺農地や事業地内の生産緑地継承のための仕組みづくりを、農政課も含め今から検討し始めて下さい。産業遺産の継承に努めて下さい。
  • 農業が出来なくなり、このままでは乱開発になるので区画整理するということにより、乱開発防止になっても農業が続けていけないという問題については解決できていません。担当部局が違うかもしれませんが、農業が続けていけないという問題についても解決策を検討して、将来の箕面市のまちづくりの中に、田畑のある環境と一次産業の技や遺産を次の世代に引き継げるように対策を今から進めて下さい。
  • 用水池や集落内に流れる用水路など、生活の知恵から形作られてきた遺産の価値を調査し、将来のために記録をまとめ、後世に継承して下さい。小野原西の遺産を次の世代に引き継ぐ為にどうしても残すことが不可能なものについては、記録として残し伝える努力をしてください。

3. 市民参加について

  • 開発にあっても、小野原の「人と自然の関わり」から生まれた、自然や歴史文化、産業遺産の継承できるまちづくりを市民との共同によって行なうことが、今の小野原の自然を活かしたまちづくりに繋がると思います。ハードとしてのまちづくりにとどまらない、市民参加のソフトづくりもして、ハードとソフトを備えたまちづくりを目指して下さい。

何度となく話し合いを重ね、自然観察会も並行して続けてきました。

2000年の11月の話合いで、行政は地権者、市民、自治会、行政関係者(市民部、都市整備部、大阪府)により小野原西まちづくりデザイン会議を発足させ、みのお山自然の会から委員を送り出す事になりました。この助成事業により、公的な話し合いの場を作る事に成功しました。

この委員会での議論を進めるのと並行して自然観察会を続け、市民の声を行政に届ける取り組みを行ない、子供たちが作文を書いて自主的に行政に送るようになりました。

また、概要版のチラシを5000部作成し、この地域に全戸配布もいたしました。1月には、自然環境調査の報告会を行政の協力も得て開催する事もできました。

デザイン会議では緑の回廊づくりに取り組み、小野原7号線を歩行者専用道路として、8mの道路の半分以上に森を連ねる「生態の回廊」と名づけられたコリドーを作る事も合意されました。

また、自然と関わる市民を増やす為に講演会を2回開催いたしました。

現在、新たな課題が発生し、その為に慎重な取り組みを進めているところです。

写真1 自然観察会

写真1 自然観察会

写真2 ビラまき

写真2 ビラまき

写真3 講演会

写真3 講演会

写真4 自然環境調査報告会

写真4 自然環境調査報告会