名古屋東部丘陵地のトウキョウサンショウウオの生息調査The habitat research of Tokyosanshouo in the easternhill of Nagoya

著者名Authors

ネイチャークラブ東海Nature Club Toukai

篠田陽作Yousaku Shinoda・ 原田秋男Akio Harada・ 秋田貢Mitugu Akita・ 小川英作Eisaku Ogawa

要約Summary

トウキョウサンショウウオの生息域は約海抜300mまでぐらいの里山や雑木林、水田などの近くです。しかし近年その様な地域は都市化で開発されほとんどが生息出来なくなっています。10年程前に愛知県のトウキョウサンショウウオの生息調査を行なった後、生息地域の開発が進んですでに無くなった所も見られるので、今回再確認の為に名古屋市東部の開発の進んでいる場所の調査のみ限定して行ないました。やはり高速道路や宅地の造成などにより失われた部分と、周囲の環境の変化の為に生息出来なくなった場所があり、これから開発される予定地になっている場所もあり絶滅も時間の問題かと思われます。

はじめに

今回の調査では特に都市化の進んでいる地域を調査しましたが、それらの中で10年前から生息が続いている場所は、公園であったり湿地として保全や保護されている場所であったり、名古屋市の緑地保全地域や公園予定地として開発から逃れた所のみでそれ以外のところではほとんど生息できる環境は無くなっていました。この事から今後保護するならば早めに生息を確認し、その場所を保護地域の指定や市民の保全活動で囲い込みをする必要があるのではないかと思いました。

調査方法について

基本的には10年前に生息が確認された場所の再確認を行ないました。ほとんど名古屋市内ですが、さらにその周囲で生息の可能性がある場所を一部調べました。2月の始めから3月にかけての産卵時期に、湧水や水たまりのある場所をすべて探しながら確認をする作業によって生息を確認しました。しかし一度では見落としや産卵のタイミングに合わない場合もあるので、同じ場所を少なくても2週間ぐらいの時間差をつけて2度から3度確認に廻りました。場所により水温や気温に幅があり、かなりの産卵の時期に幅があるのではないかと思われました。今回は卵の確認作業のみで時間が無かったけれど、今後このような生息環境や産卵の条件などの調査も行っていく必要があると思います。

最初の予定では2名での調査をしていましたが調査地域内にある水溜まりや湧水など意外に数があり、さらに2名の応援を得て終了する事が出来ました。実際に直径30cm程の水溜まりや、わずかな窪地の草の間などでの産卵も見られ、逆にそのような意外な場所の卵は盗難にあわず残っていました。今回の調査では地元でトウキョウサンショウウオの保護や保全に関わっている、平和公園自然観察会や名東自然クラブ、大森自然観察会、東山自然観察会などの方々の協力もいただきました。

調査結果について

今回の調査では実際調査地点は18ヶ所です。その中で今回確認出来たのは6ヶ所で、10年前に確認できて今回確認できなかった場所は3ヶ所です。今回新たに確認出来た場所は無く、特に4年前に生息場所のデーターが流失して、その翌年に大量の卵が盗難に遭ってから、毎年同じ業者と見られる卵の盗難が続いているので、全体の個体数が減っているのか卵の数も少ないのが気にかかります。さらに各生息地の間の交流が隔絶されてしまい交配の条件がせまくなったのか、卵塊の中の卵の数も少なくなっているような状態です。このままではいずれ絶滅の心配もあり、今後各生息地の間での個体の交流を人の手で行なう必要もあるのではと考えられます。各生息地は完全に飛び地状態で、個体交流は全く出来ない状態です。種の保存のためにも組織的にそれらの問題を考え、実行する事が今後必要です。そのためにも今回の生息状態の確認はその第一歩として意味のある作業であると思われます。今後は愛知県全体での再調査と卵の数や成体の数の調査、その生息地を今後の開発から守るための方法や、交流をさせる場合のゾーンニングの設定など色々な作業が必要だと思われます。本格的な保護と保全のためのプロジェクトを始めないと手後れになります。

今回の調査で簡単に生息していた場所の水のpHを計ってみましたが、平均で5~6の間ぐらいですが中には4ぐらいの場所もあり、東海地方独特の湧水型の湿地の水を利用していると思われます。今後保護や保全をする時には、このような湿地と一体としての保護や保全も有効な手段かと思われます。今回確認出来なかった場所のうち一つはバイパス工事により生息地がなくなってしまった例でした。もう一つは生息地の沢の上流に大きな団地と病院が作られ、そのため沢の水がなくなり雨水のみが流れる状態となり、産卵期にはほとんど水がなく、たまに雨が降ると土砂が流れ卵が埋まったり流されたりする状態で、今回は確認できませんでした。

もう一ヶ所は昨年九月に東海地方を襲った集中豪雨で土石流が発生し、産卵する沢全体が埋まってしまい水流や湧水も無くなってしまった場所です。

このように災害や開発によって産卵場所が無くなった場合でも、その周囲50mぐらいの範囲に数箇所の代替えの水のある場所を造っておくとそこに産卵する場合もあります。今までも公園の造成や道路の造成で産卵場所が無くなった場合には何度も成功していますが、その場合卵を回収してより安全な場所に移す必要があります。その場合成体になった個体を元の生息場所に戻す必要があり、やはり飼育する必要が出てきます。しかしどこまで人の手を掛けていいものか、そのあたりの判断は非常に難しいものがあります。

今後の保全と保護について

今後はトウキョウサンショウウオの生息する地域全体での生息調査と、その現状を参考としての総合的な保護の為のアクションが必要だと思います。そのためにも各地域での活動をネットワークする必要と、お互いの情報の交換や問題の解決の為の協力が必要と思われます。5年程前に愛知県の環境部の自然保護課からの依頼で、宅地造成地の中にあるトウキョウサンショウウオの生息地を、そこから900m程離れた場所へ移動しました。これは3年がかりで行い現在も無事に生息しています。その時のノウハウを使えば、かなりの確率でグループ全体の移動が行なえると思います。そのような手段や方法なども使い、今後真剣に保護に乗り出さないと、個体数が繁殖の限界に近づきつつあるような状態であると思われます。私たちも個々に努力はしていきますが、自然保護協会もトウキョウサンショウウオのフォーラムやサミットを考えていただけたらと思います。それとも私たちが助成をいただいて行なう方が良いのでしょうか。このあたりも今後の課題だと思われます。トウキョウサンショウウオの保護や研究をなさっている方、是非ご連絡を下さい。一度皆さんとお話がしたいと考えています。

地図の解説

今回の調査では名古屋市内の東部丘陵地での生息調査を行いました。10年前の調査では周辺の日進市、長久手町、東郷町、尾張旭市なども含めて行いました。

地図の解説 今回の調査では名古屋市内の東部丘陵地での生息調査を行いました。10年前の調査では周辺の日進市、長久手町、東郷町、尾張旭市なども含めて行いました。

(1) のマークは1980年以前に確認されていた場所です。
(2) のマークは1992年に確認された場所です。
(3) のマークは今回確認できた場所です。
(1) (2) (3) と並んでいる場所は20年前から現在まで続けて確認できている場所です。

写真は今回確認できた現状の写真です。

写真1 東山地区で発見の卵

写真1 東山地区で発見の卵

写真2 東山地区で発見の成体

写真2 東山地区で発見の成体

写真3 東山地区で発見の成体

写真3 東山地区で発見の成体

写真4 大森地区での生息地

写真4 大森地区での生息地

写真5 守山地区の雨池の産卵場所

写真5 守山地区の雨池の産卵場所

写真6 平和公園での産卵場所

写真6 平和公園での産卵場所

写真7 明徳地区での産卵場所

写真7 明徳地区での産卵場所

写真8 明徳地区の人工の産卵池

写真8 明徳地区の人工の産卵池

写真9 明徳地区の人工の産卵池

写真9 明徳地区の人工の産卵池

写真10 猪高地区の産卵場所

写真10 猪高地区の産卵場所

写真11 猪高地区の産卵場所

写真11 猪高地区の産卵場所

写真12 猪高地区の湿地帯

写真12 猪高地区の湿地帯