長野県南部のハナノキが自生する湿地の保全活動Conservation of Japanese Red Maple in Wetlands and Other Natural Habitats of Southern Nagano Prefecture.

著者名Authors

はなのき友の会Japanese Red Maple Conservation Group

北沢あさ子Asako Kitazawa・ 長野康之Yasuyuki Nagano・ 大熊純子Sumiko Okuma・ 下平春夫Haruo Shimodaira・ 岡田いく代Ikuyo Okada・ 清川博明Hiroaki Kiyokawa・ 古松隆明Takaaki Komatu・ 椎原澄Kiyoshi Shiihara・ 椎原幸子Satiko Shiihara・ 筒井和彦Kazuhiko Tutui・ 仁木洋子Yoko Niki・ 八木充生Mitio Yagi・ 八木和恵Kazue Yagi・ 他etc.

ハナノキ(カエデ科ハナノキ節)は長野県南部、岐阜県南東部、愛知県北東部の極めて限られた湿地に分布する日本固有の落葉高木である。ハナノキは自生地での個体数が減少し、現在、環境庁版レッドリストで絶滅危惧II類に指定されている。ハナノキは雌雄異株であるので、雄木と雌木の開花個体が近くに存在しないと種子を作ることができない。長野県の自生地の大部分は長野県南部の飯田市山本と隣の下伊那郡阿智村の4ヶ所に集中しているが、そこでは雌木が34本程度しか確認されていない上に、代表的な3ヶ所の自生地に7ヶ所のゴミ処分場の計画があり、今しっかりとした保全策を立てなければハナノキの種としての存続が危ぶまれる。はなのき友の会は、ハナノキとハナノキが生育する湿地を後世に残すことを目的として1993年から様々な活動を行ってきた。2000年10月からはPNファンドの助成を受け (1) 長野県南部のハナノキ自生地4ヶ所の毎木調査と個体位置図作成、 (2) 自生地の環境調査、 (3) 実生と幼木の生存率・成長率調査、 (4) 充実種子率調査、 (5) 自生地の保全管理作業を行ってきた。これらの活動によりハナノキの生態を把握して同種の保全を検討する際の基礎的な情報を得ること、さらに今ある自生地を保全管理することを目的とした。

胸高直径5cm以上の267本(株)のハナノキについて、毎木調査と詳細な個体位置図を作成することができた。ハナノキ実生の生存率は調査を行った4ヶ所の調査地のうち1ヶ所ではおよそ80%と高かったものの、他の3ヶ所ではおよそ10%と低かった。生存率が高かった1ヶ所はギャップの下に設けた調査地であり、日照量が生存率に影響を与えたと考えられるが、相対照度等の環境要因との関係は明らかでなかった。3ヶ所の調査地で採取した種子の充実種子率は、昆虫または鳥に食害されたと思われる種子を含めるとおよそ80%であり、種子形成は正常に行われていると考えられた。また、毎月1回の割合で地主の協力を得てハナノキ自生地のゴミ拾い、竹やぶ払い、つる切り、崩壊地の土留めなどの保全活動を行った。現在残されたハナノキの自生地は非常に貴重なものなので、何としても優先的に残し、積極的に保全していく必要がある。

写真1 ハナノキのし果(羽の付いた種子:4月下旬)

写真1 ハナノキのし果(羽の付いた種子:4月下旬)

写真2 ハナノキ自生地内のミカワバイケイソウ

写真2 ハナノキ自生地内のミカワバイケイソウ

写真3 ハナノキ調査隊

写真3 ハナノキ調査隊

写真4 ハナノキ個体位置図作成時の調査風景

写真4 ハナノキ個体位置図作成時の調査風景

写真5 ハナノキ自生地にはびこった竹やぶ払い

写真5 ハナノキ自生地にはびこった竹やぶ払い

写真6 山本小学校3年生と、崩壊地の土留め作業風景

写真6 山本小学校3年生と、崩壊地の土留め作業風景