移入鳥類の野生化の実態Ecological and genetic researches on the expansion of exotic birds in Japan

著者名Authors

九州大学移入鳥類研究グループKyushu University intoroduced birds research group

江口和洋Kazuhiro Eguchi1)・ 天野一葉Hitoha E. Amano2)・ 坂梨仁彦Masahiko Sakanashi2)

著者所属Affiliations

  1. 1) 九州大学大学院理学研究院生物科学部門
  2. 2) 九州大学大学院比較社会文化学府

要約Summary

移入鳥類の目撃情報を収集するとともに、ソウシチョウについて生態学的、遺伝学的研究を行った。35都道府県から564件の情報が得られた。繁殖の可能性のある種は52種で、従来より大きく増加していた。移入鳥類は撹乱された環境で多く見られるが、ソウシチョウやガビチョウ類などが、自然林へ侵入していた。ソウシチョウはササ密度の違いによりウグイスと営巣場所を違えていた。また、ササ群落上方の森林下層部で、飛びかかりによって飛翔性昆虫を捕らえることで、同所するシジュウカラ類との重複の程度を弱めていた。国内4繁殖集団(筑波山・六甲山・油山・えびの高原)と中国の計93個体について、ミトコンドリアDNA control領域661塩基の配列を決定した。中国の集団に比べて,ハプロタイプ多様度と遺伝的変異量が低く、移入に伴う創始者効果と遺伝的浮動が示唆された。国内集団同士は互いに分化し、遺伝的な隔離が示唆された。


We conducted an enquiry research through internet mailing lists and journals of birding clubs, and ecological and genetic researches of the Red-billed Leiothrix, one of dominant introduced birds in Japan. In total, we collected 564 cases of information from 35 prefectures. Fifty-two species were possible to breed out of cages. Most species bred in human-disturbed habitats, but Red-billed Leiothrix and three species of laughing-thrushes have invaded into native forests. Interspecific competition is plausible for nest-site with the Japanese Bush Warbler, and for foraging habitat with sympatric parids, Japanese Bush Warbler and Long-tailed Tit. However, overlap was minimised by differential nest-site preference based on the density of undergrowth, and segregation of foraging micro-habitat among species. Genetic relationships among four Japanese local populations (Mt. Tsukuba, Mt. Rokkou, Mt. Aburayama and Ebino) and a complex of Chinese populations were examined based on sequencing of mitochondrial DNA control region. In each Japanese population, both haplotypic diversity and genetic variation were smaller than in the Chinese population, which suggests a founder effect and/or genetic drift on and after introduction. Significant genetic differentiations among Japanese populations suggest restricted gene flows among them.

交通の発達、国際商取引の発展にともない、本来の生息域外への生物の人為的移動が急激に増えてきた。国際自然保護連合(IUCN)は、生物移入は生物多様性の保全への最大の脅威であると認識している。在来動物群集や環境に対する移入鳥類の影響は、有蹄類や食肉類のように劇的なものではないが、長期的に見て、その影響は無視できない。本研究では国内での移入鳥類の定着の実態を調べ、特に近年個体数が増加しつつあるソウシチョウ(Leiothrix lutea)について、定着の過程とその影響を明らかにするために、生態学的、遺伝学的研究を行った。ソウシチョウは中国中部からヒマラヤにかけて分布しているスズメ目チメドリ科の鳥である(Long 1981)。日本には原産しないが、江戸時代中期から飼い鳥として輸入されていた。ところが、1980年前後から日本国内各地の落葉広葉樹林や照葉樹林で、野生化個体が急速に数を増加させている(江口・増田 1994,江口・天野 1999)。

1. 移入鳥類の国内での広がり

野鳥の会支部会報、自然系雑誌、メーリングリストなどを通じて、移入鳥類の野外での目撃情報を収集した。35都道府県から564件の情報が得られ、このうち種名などが不確かなものを除く、520件(9目20科79種)について分析を行った。分類群毎ではスズメ目が40種と最も多く、次いでインコ目14種、キジ目11種、カモ目7種、ハト目3種で、コウノトリ目、キツツキ目、フラミンゴ目、ペリカン目がそれぞれ1種であった。繁殖は19種で記録されていたが、繁殖期に複数個体で目撃されるなど、繁殖の可能性のあるものは亜種を含めて、52種類であった(表1)。これは江口・天野(1999)の約30種から大きく増加している。ソウシチョウ(78件)、ベニスズメ(63件)、ハッカチョウ(51件)、ガビチョウ(36件)、セキセイインコ(25件)などが多かった。表2に、これらの種が確認された都道府県の分布を示す。このうち、ソウシチョウは関東から九州までの21府県について情報が得られ、九州では全7県で生息が確認されている。ベニスズメは関東に多く12県、ハッカチョウは5県で、兵庫県内で多く見られている。ガビチョウは北部九州と関東近辺に限られ(6県)、セキセイインコは散発的に8県で目撃されている。

表1 繁殖の可能性のある種ないし亜種

表1 繁殖の可能性のある種ないし亜種

下線は繁殖確認の情報があるもの,*印は亜種名ないし品種名

表2 目撃件数の多い上位5種が確認された都道府県. 括弧内は確認市町村数を示す

表2 目撃件数の多い上位5種が確認された都道府県. 括弧内は確認市町村数を示す

繁殖の可能性のある種について、水禽を除く全249件の生息環境をまとめた。アシ原、河川敷、草原などは113件で最も多く、18種の種と亜種が含まれれ、ハッカチョウとベニスズメの記録が圧倒的に多かった。市街地、住宅地、農耕地などでは74件、32種類で、ハッカチョウとインコ類が多かった。森林では62件、9種類で、ソウシチョウ、ガビチョウ、コジュケイが多かった。このように、移入鳥類の多くは、河川敷、住宅地、農耕地など、人の撹乱が生じている環境で多く見られているが、ソウシチョウやガビチョウ類(3種)などが、自然林へ侵入していた。

2. ソウシチョウの生息環境

ソウシチョウの採餌空間利用に関する生態学的な位置を、同所的に生息する鳥類群集のうち、似た採餌ギルドに属すると考えられるシジュウカラ科鳥類(カラ類)やウグイスとの間で比較した。

(1) 方法

調査は、1997年と2000年の4月から9月に主に宮崎県と鹿児島県にまたがる、えびの高原で行った。主調査地はアカマツ Pinus densiflora、ミズナラ Quercus crispula などが優占する混交林である。森林の下層部には、約2mの高さのスズタケ Sasamorpha borealis が優占し、場所によってはパッチ上の裸地が見られた。林内を歩きまわり、ソウシチョウ、カラ類(シジュウカラ Parus major、ヤマガラ P. varius、ヒガラ P. ater、コガラ P. montanus)とウグイス Cettia diphone、エナガ Aegithalos caudatus の個体または群れに出会うたびに、1個体につき連続10サンプルまで採餌行動のデータをとった。2001年には菊池渓谷、油山で補助的なデータをとった。

採餌中の個体について、採餌高・採餌した樹木の高さ、採餌部位・採餌場所のササの有無・採餌方法を記録した。採餌部位として、葉・小枝・太枝・幹・下生え・地表・空中の7類型、採餌方法として、つまみ捕り・飛びつき・空中停止・空中採餌・つつき・ぶらさがり・とびかかりの7類型に分けた。

飛翔性昆虫の林内での分布について、1997年、2000年に調査を行っている。ササ群落上部と裸地上部の飛翔性昆虫の分布を測るため、1997年5月に、ササ群落の内側1mの地点と、そこから10m離れた裸地の地点に、500mlアルミ缶の周囲に鳥もちをつけたトラップを地上から3-4mの高さに各1個ずつ設置した。トラップの組を主調査地内に50ケ所配置した。2日後に回収し、付着したクモ類と昆虫を記録した。ササ群落上方の飛翔性昆虫の垂直分布を測るため、2000年4、5、8月に、ハエ取り用の粘着性テープ(70cm×3.5cm;両面粘着)を釣り糸に沿って固定し、ササ群落の葉層の1m上(地上から高さ約3m)と4m上(地上から高さ約6m)に各1個設置した。これらのトラップを主調査地内に15ケ所配置した。2日後に回収し、トラップに付着した昆虫・クモ類などを記録した。

(2) 結果

ソウシチョウは森林内の高さ2-6m(特に2-4m)を主な採餌空間にしていた。ウグイスは主に4m以下の下層部を利用し、カラ類とエナガはソウシチョウよりも上方の、8m以上の森林上層部をよく利用していた(表3)。採餌部位については、どの種も葉層部をよく利用していたが、これに加えて、カラ類は幹や下層部でも比較的多く採餌していた。ウグイスを除くどの種も、観察の半分近くはつまみ捕りで採餌をしていたが、ソウシチョウはとびかかり採餌法が多く、カラ類とエナガは、ぶらさがりやつつきが多い点が異なっていた。ウグイスは、大部分、つまみ捕り採餌を行っていた。ソウシチョウとウグイス、ヤマガラは、それぞれ下生えにササがあるところで多く採餌する傾向が見られた。一方、シジュウカラとエナガはササ群落を避ける傾向がみられた。ソウシチョウがとびかかりで頻繁に採餌し、森林下層部を主な採餌空間とするという傾向は林層が似ている菊池渓谷、林層の異なる油山でも見られた。菊池渓谷でのカラ類との採餌空間の分離傾向はえびの高原と同様であった。

表3 ソウシチョウと同所在来鳥類の採餌行動の比較(えびの高原のデータ)

表3 ソウシチョウと同所在来鳥類の採餌行動の比較(えびの高原のデータ)

ササ群落と裸地上部の飛翔性昆虫・クモ類の個体数を比較すると、体長1cm以下のものについては有意差が見られなかった。特に数が多かったシリアゲムシは、ササ群落上部にやや個体数が多い傾向が見られた(対応のあるt検定: df = 49, t = 1.937, p = 0.059)。

ササ群落の葉層のすぐ上と森林の上層部で飛翔性昆虫・クモ類の個体数を比較すると、総個体数では、どの月もササ群落の葉層のすぐ上の方が多かったが、有意差は4月だけに見られた。分類群毎では、4月のハエ類、8月のハエ類とハチ類の個体数で、ササ群落の葉層のすぐ上の方が、有意に多い傾向があった。8月の甲虫類の個体数は、森林の上層部の方が有意に多かった(すべて Wilcoxon の符号付順位検定による)。

(3) 考察

Amano & Eguchi (2002)によると、ソウシチョウは落葉広葉樹林林床のササ群落内に営巣し、九州ではウグイスと営巣環境が重複するが、選好するスズタケ密度がやや異なり、ウグイスは密度の高い地域に営巣し、ソウシチョウはスズタケ密度には影響されることが少なかった。同じササ群落での営巣でありながら、巣の固定方法の違いにより、選択する場所を違えている。

採餌場所については、カラ類は採餌高の幅が広く、ソウシチョウの採餌空間と重なっていたが、森林のより上層を主に利用していた。ウグイスは下生えの中を主に利用していた。ソウシチョウはササ群落のすぐ上の樹木の葉層でとびかかり採餌をするという、独特の採餌空間利用と採餌方法の特徴があることがわかった。この採餌空間は、飛翔性昆虫が多く、他種はあまり利用しない傾向があった。このように、ソウシチョウは、カラ類やウグイスがあまり利用していない森林下層部のやぶの多い環境の飛翔性昆虫という資源を有効に利用していると考えられ、似た採餌ニッチを持つ在来鳥類群集との食物資源における激しい競争は見られなかった。この傾向は異なる地域個体群でも同様に見られている(江口・増田 1994,本研究)。このことは、九州のソウシチョウの生息環境には、森林下層部を利用する種が少なく、有力な競争種がいなかったためソウシチョウが定着できたという、江口・増田(1994)の主張を支持している。

3. ソウシチョウの分布拡大

(1) 方法

1998年~2001年にかけて、茨城県筑波山、兵庫県六甲山、福岡県油山、英彦山、佐賀県脊振山、熊本県菊池渓谷、五家荘、五木村、宮崎県椎葉村、宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島山系えびの高原において、かすみ網を用いてソウシチョウの捕獲を行った。

各個体の翼長・全嘴峰長・嘴高・ふしょ長・尾長・体重を測定し、カラーリングで標識し、採血後に放鳥した。捕獲個体の翼下静脈から約50-150µl の血液を採取した。血液はバッファー (10mM Tris-HCl, 25mM EDTA, 50mM NaCl, 0.2% SDS, pH 8.0)に入れて保存した。油山の標本の一部は肝臓又は筋肉を用いた。また、原産地の中国において、販売店の飼育個体から血液標本を採集した。採集地は販売店からの情報に基づいた。中国のサンプルは各地点のサンプル数が少ないのでまとめて解析した。外群として、同属のゴシキソウシチョウ(Leiothrix argentauris) 2サンプルを用いた。

血液と肝臓の各サンプルから、Isoquick Kit またはQIA DNA抽出キット(QIAGEN)を用いてDNAを抽出した。ミトコンドリアDNAコントロール領域の断片約700塩基対を標準的なPCR法で増幅した。プライマーLCR3 とH1248 で、コントロール領域のライトドメインの3'末端側の774塩基を増幅した。内側に3つのプライマー、重鎖側のHcont1 (5'-AGTTTGAGACGGGCTTATCC-3')、Hcont499 (5'-TAAAAAGAATGGATGAAAAA-3')と軽鎖側のLcont1 (5'-GGATAAGCCCGTCTCAAACT-3')を設定した。PCRは95℃1分間に続き,95℃30秒間,57℃30秒間,72℃1分間を30回くり返し,最後に72℃4分間のように設定した。PCR産物の精製は、QIA PCR精製キット又は1%ゲルから切り出して、QIAGEN ゲル抽出キット (QIAGEN)を用いて行った。PCR産物はABI377またはABI3100 (Applied Biosystems Inc.) シークエンサーを用いて、ダイレクトシークエンスを行った。塩基配列は、Sequence Navigator ver. 1.0 (Applied Biosystems Inc.)と SeqPup ver. 0.6 でアライメントした。塩基配列の編集には Se-Al ver. 2.0a7b を用いた。

ソウシチョウとゴシキソウシチョウの平均遺伝距離、ソウシチョウのヌクレオチド構成はMEGA ver. 2.1 (Kumar et al. 2001)を用いて計算した。塩基多様度 π (Nei 1987)、DNA多型量 θw (Watterson 1975)、ハプロタイプ多様度 (h = n(1-Σxi2) / (n-1);ただし、n はサンプル数、xi はハプロタイプ i の頻度 (Nei 1987))、 Tajima's D (D = (π-θw / (√ (Var (π-θw)))、集団の分化の指標を表すWrightの固定指数 Fst、集団間の移動の交流の程度を示す Nm (=(1-Fst)/2Fst) (Hudson et al. 1992)を、DNAsp ver. 3.01 (Rozas & Rozas 1999)を用いて計算した。Tajima's D は無限サイトモデルと集団サイズ一定を仮定し、中立的な分子進化からの逸脱の程度を示す(Tajima 1989)。全標本のDNA分析はまだ完了していないので、今回は筑波山、六甲山、油山、えびの高原、および原産地の中国の標本を用いて解析を行った。

(2) 結果および考察

解析には661塩基を用いた。93個体のソウシチョウの塩基配列は、17変異サイト(2.57%)を示し、そのうちの7サイト(1.06%)は系統学的に情報のあるサイトだった。ソウシチョウの全サンプルには挿入または欠失はみられず、全ての塩基置換はトランジションだった。ソウシチョウとゴシキソウシチョウの間の遺伝距離は5.92%で、ソウシチョウの全ハプロタイプ間の平均遺伝距離は0.42 %であった(0.00 % ~ 0.92 %)。

塩基多様度 π の平均値は0.0024であった(表4)。日本の各集団と全日本の π と θw は、中国の集団より小さかった。特に六甲山の集団は小さく、油山の集団は大きかった。Tajima's Dはどの集団でも負に偏る傾向があった。中国のTajima’s Dは5%水準で有意に負に偏っていた(表 4)。

表4 標本採集地,標本数,ハプロタイプ数,ハプロタイプ多様度,塩基多様度(π),DNA多型量(θw),Tajima's D.

表4 標本採集地,標本数,ハプロタイプ数,ハプロタイプ多様度,塩基多様度(π),DNA多型量(θw),Tajima's D.

*: p<0.05

全部で20ハプロタイプが見られた。日本の4集団は合わせて15ハプロタイプ、中国の集団に13ハプロタイプ見られた。2つの主要なハプロタイプは、それぞれ全個体の38.7%と10.8%を占めていた。最も主要なハプロタイプは筑波の集団以外の全ての集団で見られた。ハプロタイプの40%(8/20)は日本と中国で共通してみられ、全個体の70%(65/93)を占めていた。日本の4集団を比較すると、互いに排他的な12ハプロタイプ(80%)を持っていた。中国の集団は日本にない5ハプロタイプ(38%)持っていた。中国の集団はサンプル数が少ないにもかかわらず、日本全体よりハプロタイプ数が多く、ハプロタイプ多様度は高かった(表4)。これらは筑波山と六甲山の集団では小さい傾向があった。六甲山の集団は、ハプロタイプ数が少ない上、最も主要なハプロタイプの割合が高かったため、ハプロタイプ多様度が低かった。これは、創始者個体数が少なかったか、または、移入後、集団が一時的に小さくなったことを示唆する。

原産地と比較すると、日本の各集団には、塩基多様度、ハプロタイプ数、ハプロタイプ多様度の低下がみられた。これは移入に伴う創始者効果、またはその後の遺伝的浮動によるものと考えられる。DNA多型量の減少の程度が小さかったのは、移入個体数が多かったこと、多回移入があったこと、集団が急速に拡大し、まれなハプロタイプが失われなかったこと、などの理由が考えられる。

筑波山と他の集団の間ではFstは特に大きく、筑波山の集団は他の集団と分化の程度が大きいことが示された。集団間の遺伝子交流の程度を表すNmは筑波と他の全集団との間で小さかった。一方、筑波以外の日本の集団と中国との間では大きかった (表5)。

表5 Fst(右上段)とNm(左下段)の推定値

表5 Fst(右上段)とNm(左下段)の推定値

Hudson, Slatkin & Maddison (1992)に従って計算.

筑波山の集団では、93%の個体が独特のハプロタイプを持っており、他の集団との遺伝的な分化の程度が大きかった。筑波山集団は形態的にも他の集団と異なっており、移入後にボトルネックを経験して独特のハプロタイプのみが集団内に残ったか、あるいは、他の日本の集団の移入元とは異なった集団からの移入があったと考えられる。筑波山以外の日本の各集団と中国の集団とは分化していなかった。これは、現在、現在主に香港経由でソウシチョウが移入されていることや、日本の野外で見られるソウシチョウが、中国地域に主に分布する2亜種と同じ体色を持つことと矛盾しない。

今回の分析により、国内集団は互いに有意に分化し、遺伝的にある程度隔離されていることが示唆された。ソウシチョウは季節的に生息する標高を変えるなど多少の移動をするが、本来長距離の移動を行なわないと考えられることから、国内のソウシチョウ集団のうち、1980年頃に個体数の増加が確認されるようになった各地域の集団はそれぞれ独立な起源から派生したと考えられる。

負のTajima’s Dは、ミトコンドリア遺伝子全体に自然選択が働いたか、あるいは過去に集団が急激に拡大したことを示唆すると考えられている (Tajima 1989)。中国の集団のTajima's Dは有意に負であり、数万年以前に中国の集団の急激な拡大があったのかもしれない。日本の集団では、負への偏りは小さく、有意ではなかった。これは、移入にともなってボトルネックを経たことを示すと考えられる。

謝辞

本研究を行うに当たっては、プロ・ナトゥーラ・ファンド関係者の方々には大変お世話になった。会誌へのアンケート掲載を許可いただいた日本野鳥の会、日本野鳥の会札幌支部、日本野鳥の会北九州支部、日本鳥類保護連盟、メーリングリストへの掲載を許可いただいた jeconet、banding、学会員のメールアドレスリストの利用を許可いただいた日本鳥学会、および情報をお寄せいただいた多くの方々には厚くお礼を申し上げる。また、下記の個人、機関には野外調査に際して種々の援助をいただいた。厚くお礼を申し上げる。上谷川則男、東條一史、中村秀哉、大城明夫、黒田治男、鴨川誠、中園敏之の各氏、九州大学農学部宮崎演習林、九州大学英彦山生物学研究所、福岡市油山市民の森管理事務所。

参考文献

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  • 江口和洋・天野一葉. 2000. 移入鳥類の諸問題.保全生態学研究.5:131 -148.
  • 江口和洋・増田智久. 1994. 九州におけるソウシチョウ Leiothrix lutea の生息環境. 日本鳥学会誌, 43:91-100.
  • Hudson, R. R., Slatkin, M. & Maddison, W. P. 1992. Estimation of levels of gene flow from DNA sequence data. Genetics, 132: 583-589.
  • Kumar, S, Tamura, K, Jakobsen, I. B & Nei, M. 2001. MEGA2: Molecular Evolutionary Genetics Analysis software, Bioinformatics (submitted).
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