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北海道根室市・フレシマの風力発電施設建設計画に対して北海道知事及び 北海道教育長に要望書を提出しました

2014.05.19
要望・声明

(公財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数4万6千人)と、(公財)日本自然保護協会(事務局:東京、理事長:亀山章 会員数2万7千人)、日本野鳥の会根室支部は、北海道根室市に計画されている風力発電施設「根室フレシマ風力発電所」の建設計画に対して、日本野鳥の会が独自に行った調査結果等に基づき、オオワシやオジロワシなど希少な鳥類等に及ぼされる重大な影響を懸念し、これら希少種を含む生態系保全の観点から、北海道知事および北海道教育長に対して、予定地の変更の検討など、事業計画者に対して適切な指導を行うよう書面をもって要望しました。

建設予定地は、太平洋に面する北海道根室市フレシマの海岸付近。当該地は、国指定天然記念物で絶滅危惧種でもあるオオワシやオジロワシ、タンチョウやシマフクロウが利用する重要な地域です。越冬期には多数のオオワシ、オジロワシが採食地や休息地として利用し、繁殖期にはオジロワシが最大2つがい営巣していると考えられています。

(公財)日本野鳥の会独自の調査結果を元に、ワシ類がブレードの回転する高度を飛翔する頻度の予測を行ったところ、計画地内で最も高頻度に飛翔するメッシュは年間約363回、平均でも約79回通過すると予測されました。また、衝突数の予測を行ったところ、平均して年間0.39羽(最大1.01羽)がブレードに衝突すると推定されました。年0.39羽の衝突は、過去にワシ類の衝突事例が知られている北海道内の発電所の衝突数と比較して第3位に匹敵します。

これらの調査結果から、私共はフレシマにおける風力発電所の建設は周辺の生態系およびオオワシ、オジロワシなどの希少鳥類に影響を与えると判断し、要望書の提出に踏み切りました。

なお、本計画に対して、国際的な自然保護団体であるバードライフ・インターナショナル(BirdLife International, 本部・ケンブリッジ)も、オオワシ、オジロワシに影響があると予測されることから、フレシマは風力発電所の建設に適さないという意見を道知事、道教育長に提出しています。また、これまでに当会以外に北海道自然保護協会が根室市長に要望書を提出しています。

<要望書提出先>
北海道知事、北海道教育長

<同時発表>
環境省記者クラブ、根室市役所記者クラブ


平成26年5月19日

北海道知事
高橋はるみ 殿

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本野鳥の会 根室支部
支部長 阿部 嗣

「根室フレシマ風力発電所」建設に対する要望書

東日本大震災以降、自然エネルギーへの転換が指向されています。化石燃料や原子力から再生可能エネルギーへの転換が推進され、その一環として、各地で風力発電施設の設置計画が進められています。再生可能エネルギーへの転換の必要性については、私共も十分に理解し賛同するところです。しかしながら、このたび電源開発株式会社が計画している「根室フレシマ風力発電所の建設計画」については、私共が独自に取り組んだ環境影響予測調査の結果から、根室の自然環境と生物多様性の保全に重大な支障を及ぼすと考えております。

ついては、行政当局として、「生物の多様性の保全等に関する条例」の趣旨にもあるように、人と自然とが共生する豊かな環境の実現を図り、また地域の優れた自然環境と生物多様性を保全し、後世に豊かな郷土を残すため、「根室フレシマ風力発電所」の当該計画区域における建設計画の見直しを、下記の通り事業者に求めることを要望いたします。

【要望事項】
電源開発株式会社が計画している「根室フレシマ風力発電所」について、計画地の再検討を行うよう求めること。

【理由】
電源開発株式会社が、根室市別当賀と初田牛を結ぶ太平洋岸の海岸段丘上に計画している「根室フレシマ風力発電所(最大34,500kW、2,300kW×15基)」について、当該計画が発表された後、事業者とは別に、当会らが中心となり鳥類を中心とした独自の影響予測調査や文献調査を実施した。その結果、以下のような実態が明らかとなった(詳細は添付資料参照)。

風力発電所計画区域(以下「計画区域」という。)で2012年5月から2013年3月に実施したワシ類の飛翔状況調査の結果を、統計学的手法を用いて分析・評価したところ、計画区域周辺は、ワシ類がバードストライクを起こしやすい高度を飛翔する頻度が高い場所が多くを占めており、計画区域全体(235メッシュ)の合計では年間約18,500メッシュ通過すると予測されたこと。特に、最も高い頻度のメッシュ(250m四方)では、年間約363回通過すると予測されたこと。

球体モデル(由井・島田2013)を用いてワシ類の風車への衝突数を予測したところ、年間の衝突予測数が平均で0.39羽、最大で1.01羽と推定されたこと。なお、年間衝突数0.39羽という数値は、ワシ類の衝突事例のある北海道内8か所の風力発電所の1年あたりの衝突数と比較すると第3位に匹敵する数値であり、また、年間衝突数予測1.01羽は、最も衝突数の多い発電所をも上回る数値であること。
計画区域周辺では、オジロワシが最低1つがい繁殖し、2つがいのタンチョウが繁殖している。その他、オオジシギなど国内希少野生動植物種や、国の天然記念物、絶滅危惧種に指定されている希少な野鳥等の貴重な繁殖地であること。

計画区域は、根室半島で唯一、大径木が生育するまとまった面積の森林が残されている場所であり、環境省が絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に選定しているシマフクロウが周年生息していること。

計画区域は、多くの渡り鳥が飛来又は通過する、渡りの貴重な重要中継地となっていること。

計画区域一帯は、国際的に重要な湿地を保全するための国際条約「ラムサール条約」の登録候補地である「日本の重要湿地500選」に選定されている地域であること。

計画区域の北側には、国際的に重要性が認められたラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」が位置しており、オオワシ・オジロワシの一大越冬地になっていること。越冬のため飛来したオオワシは、風蓮湖が結氷する前後は、広く風蓮湖周辺の地域を利用していると考えられており、計画区域を含む風蓮湖周辺地域は、オオワシをはじめ、希少な鳥類にとって非常に貴重な生息場所となっていること。なお、半島を縦断する形で連続した自然環境が残っている場所は、根室半島でもほとんど残されていないこと。

計画区域一帯には、周辺地域と合わせて、海・浅海・干潟・砂浜・塩湿地・河川・汽水湖・池沼・湿原・草原・牧草地・森林(広葉樹、針葉樹林)など、多様な生態系を有する自然環境が残されており、面的な広がりも有している。根室地域を代表する自然環境や、多様な植物、鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、昆虫類、魚類等の生育・生息地となっており、優れた自然環境が残されていること。

これらの事から、計画区域での風力発電施設建設は、希少野生動植物や渡り鳥等に重大な影響を与えると予測される。また、野生動植物への悪影響だけでなく、根室の原生的な景観の破壊、騒音や低周波による人体や家畜への被害、自然探勝を楽しむ自然愛好家、市民、観光客などへの影響など、様々な悪影響を与えることが懸念される。

以上


平成26年5月19日

北海道教育委員会教育長
立川 宏 殿

公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 佐藤 仁志

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本野鳥の会 根室支部
支部長 阿部 嗣

「根室フレシマ風力発電所」建設に対する要望書

東日本大震災以降、自然エネルギーへの転換が指向されています。化石燃料や原子力から再生可能エネルギーへの転換が推進され、その一環として、各地で風力発電施設の設置計画が進められています。再生可能エネルギーへの転換の必要性については、私共も十分に理解し、賛同するところです。しかしながら、このたび電源開発株式会社が計画している「根室フレシマ風力発電所の建設計画」については、私共が独自に取り組んだ環境影響予測調査の結果から、国指定天然記念物であるオオワシやオジロワシなど希少な鳥類を含む生態系に重大な支障を及ぼすと考えております。

ついては、行政当局として、「生物の多様性の保全等に関する条例」の趣旨にもあるように、人と自然とが共生する豊かな環境の実現を図り、また天然記念物に指定された希少種の保全を通じて、地域の優れた自然環境と生物多様性を維持し、後世に豊かな郷土を残すため、「根室フレシマ風力発電所」の当該計画区域における建設計画の見直しを、下記の通り事業者に強く指導いただくことを要望いたします。

【要望事項】
電源開発株式会社が計画している「根室フレシマ風力発電所」について、天然記念物保護の観点から、計画地の再検討を行うよう強く指導を行うこと。

【理由】
電源開発株式会社が、根室市別当賀と初田牛を結ぶ太平洋岸の海岸段丘上に計画している「根室フレシマ風力発電所(最大34,500kW、2,300kW×15基)」について、当該計画が発表された後、事業者とは別に、当会らが中心となり、鳥類を中心とした独自の影響予測調査や文献調査を実施しました。その結果、以下のような実態が明らかとなった(詳細は添付資料参照)。

風力発電所計画区域(以下「計画区域」という。)で2012年5月から2013年3月に実施したワシ類の飛翔状況調査の結果を、統計学的手法を用いて分析・評価したところ、計画区域周辺は、ワシ類がバードストライクを起こしやすい高度を飛翔する頻度が高い場所が多くを占めており、計画区域全体(235メッシュ)の合計では年間約18,500メッシュ通過すると予測されたこと。特に、最も高い頻度のメッシュ(250m
四方)では、年間約363回通過すると予測されたこと。

球体モデル(由井・島田2013)を用いてワシ類の風車への衝突数を予測したところ、年間の衝突予測数が平均で0.39羽、最大で1.01羽と推定されたこと。

なお、年間衝突数0.39羽という数値は、ワシ類の衝突事例のある北海道内8か所の風力発電所の1年あたりの衝突数と比較すると第3位に匹敵する数値であり、また、年間衝突数1.01羽は、最も衝突数の多い発電所をも上回る数値であること。

計画区域周辺では、オジロワシが最低1つがい繁殖し、2つがいのタンチョウが繁殖している。その他、オオジシギなど国内希少野生動植物種や、国の天然記念物、絶滅危惧種に指定されている希少な野鳥等の貴重な繁殖地であること。

計画区域は、根室半島で唯一、大径木が生育するまとまった面積の森林が残されている場所であり、環境省が絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に選定しているシマフクロウが周年生息していること。

計画区域は、多くの渡り鳥が飛来又は通過する、渡りの貴重な重要中継地となっていること。
計画区域一帯は、国際的に重要な湿地を保全するための国際条約「ラムサール条約」の登録候補地である「日本の重要湿地500選」に選定されている地域であること。

計画区域の北側には、国際的に重要性が認められたラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」が位置しており、オオワシ・オジロワシの一大越冬地になっていること。越冬のため飛来したオオワシは、風蓮湖が結氷する前後は、広く風蓮湖周辺の地域を利用していると考えられており、計画区域を含む風蓮湖周辺地域は、オオワシをはじめ、希少な鳥類にとって非常に貴重な生息場所となっていること。なお、半島を縦断する形で連続した自然環境が残っている場所は、根室半島でもほとんど残されていないこと。

計画区域一帯には、周辺地域と合わせて、海・浅海・干潟・砂浜・塩湿地・河川・汽水湖・池沼・湿原・草原・牧草地・森林(広葉樹、針葉樹林)など、多様な生態系を有する自然環境が残されており、面的な広がりも有している。根室地域を代表する自然環境や、多様な植物、鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、昆虫類、魚類等の生育・生息地となっており、優れた自然環境が残されていること。

これらの事から、計画区域での風力発電施設建設は、天然記念物を含む希少野生動植物や渡り鳥等に重大な影響を与えると予測される。また、野生動植物への悪影響だけでなく、根室の原生的な景観の破壊、騒音や低周波による人体や家畜への被害、自然探勝を楽しむ自然愛好家、市民、観光客などへの影響など、様々な悪影響を与えることが懸念される。

以上


<添付資料>
根室市フレシマにおけるワシ類の飛翔状況調査と飛翔ポテンシャルマップの作成および衝突数の予測について(報告)
バードライフ・インターナショナルの北海道知事、教育長あてレター
北海道知事(Mrs. TAKAHASHI Harumi)
北海道教育長(Mr. TACHIKAWA Hiroshi)
知事あてレターの和訳はこちら
補足資料(フレシマ周辺の希少鳥類とバードライフ・インターナショナルについて)

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