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IUCNレッドリスト2013が発表されました。海洋・淡水の生きものたちの危機的状況も続々と判明。

2013.07.02
活動報告

IUCNのレッドリストの最新版が7月2日に発表されました。

4807種の評価結果を新たに追加し、IUCNレッドリストデータベースに登録されたものは70,294種。うち20,934種が絶滅危惧種と評価されることとなりました。3種の絶滅も宣言されています。

今回もっとも注目すべき発表は、スギの仲間(conifer)について、2度目となる再評価が行われ、34%が絶滅危惧種ということが分かったことです。スギ科は、前回は1998年に全種評価を行っており、その際には29%が絶滅危惧種と判定されていました。

「地球に現存する最古の、かつ、最大の生物」であるスギ科。樹齢5000年にもなるブリスルコーンパイン(Bristlecone Pine (Pinus longaeva))、樹高110メートルにもなるセコイア(Coast Redwood (Sequoia sempervirens))などが有名で、炭素固定能力も、温帯や熱帯の樹林の3倍にもなるといいます。

木材やパルプ材などで活用されているのみならず、イチイの仲間の樹皮からは、タクソール(R)という抗がん成分が発見されるなど、経済的な価値は測りしれない植物の危機的状況が分かりました。カリフォルニアラジアータパイン(California’s Monterey Pine (Pinus radiata))という成長の早くパルプ材の質が良いため世界的に植えられている種の原生種が軽度懸念(LC)から、絶滅危惧1B類(Endangered)になっています。

そのほかにも、海洋・淡水の生きものたちの危機的状況も続々と分かってきました。

20130701onitenagaebi.jpgオニテナガエビ(GiantRiverPrawn Macrobrachium rosenbergii 撮影 Chris Lukhaup)

淡水のエビの全種評価が行われ、28%が絶滅危惧種であることが分かりました。その危機要因は過剰消費によるもの、その例として、オニテナガエビ(Giant River Prawn (Macrobrachium rosenbergii))があげられています。汚染や生息地の改変、食品以外にも、観賞用の取引による影響も大きいとみられています。
イモガイの仲間(熱帯海洋環境で見られる)も初めて評価され絶滅危惧種が8%もいることが分かりました。

20130702yosukousunameri.jpgヨウスコウスナメリ(Yangtze finless porpoise撮影Xiaoqiang Wang)

中国では、ヨウスコウスナメリ(Neophocaena asiaeorientalis asiaeorientalis スナメリの淡水性の亜種として希少)が1980年代から年5%の勢いで減少を続け、2006年の段階で1800頭にも満たないことが分かり、絶滅危惧ⅠA類とされました。

淡水・海洋生態系の危機が世界的に広がっていることが見てとれます。しかしこれは世界に限らず、日本でも大きな問題となっています。
たとえばジュゴンは2008年のIUCNレッドリストで絶滅危惧2類にリストアップされており(http://www.iucnredlist.org/details/6909/0)、NACS-Jが10年間調査を続けている辺野古・大浦湾など沖縄島でも生息が確認されています。しかしその生息数は少なく、その分布の北限にあたる日本ではさらに絶滅の危険が大きい絶滅危惧ⅠA類(環境省レッドデータリスト)に挙げられています。

そして日本では、今まさに辺野古のサンゴ礁が埋め立てられようとしています。NACS-Jは「沖縄・辺野古サンゴ礁を守るため 沖縄県知事に意見を送ろう!」と呼び掛けています。2013年7月18日が〆切です。海の豊かさを未来に贈るため、あなたの意見をお送りください。
縄・辺野古のサンゴ礁を守るため 沖縄県知事に意見を送ろう!

日本に生息・生育する種で、今回(2013年)に評価したもののうち、絶滅危惧種となったものは以下の種です。

●トゲクリイロナマコ
Actinopyga echinites
(Deep Water Redfish)
Status:Vulnerable A2bd ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加
●チリメンナマコ
Actinopyga miliaris (Harry Blackfish)
Status:Vulnerable A2bd ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加
●マナマコ
Apostichopus japonicus
(Japanese Spiky Sea Cucumber)
Status:Endangered A2bd ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加
●ナガスクジラ
Balaenoptera physalus (Fin Whale)
Status:Endangered A1d ver 3.1
個体数(群)傾向: 不明
再評価の上、危機ランクに変更は無し
●イシナマコ
Holothuria nobilis
(Black Teatfish)
Status:Endangered A2bd ver 3.1
新規追加
●ハネジナマコ
Holothuria scabra
(Golden Sandfish)
Status:Endangered A2bd ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加
●ミナミトリシマヤモリ
Perochirus ateles
(Micronesia Saw-tailed Gecko)
Status:Endangered B1ab(v) ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加・環境省RDBで絶滅危惧1B類
●ヒメバラモミ
Picea maximowiczii
(Maximowicz’s Spruce)
Status:Endangered A2acde; B1ab(iii,v)+2ab(iii,v) ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
旧レッドリストカテゴリーでは、絶滅危惧2類(VU)。(単純比較はできない)
●ハリモミ
Picea torano
(Tigertail Spruce)
Status:Vulnerable A2ce+3ce ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加
●ヤクタネゴヨウ
Pinus amamiana (Amami Pine)
Status:Endangered A3ce; B1ab(iii,v)+2ab(iii,v) ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
旧レッドリストカテゴリーでは、絶滅危惧1B類。(判定基準が異なるため単純に危機状況が同じとはできない)
●和名は不明
(イヌマキPodocarpus macrophyllusに近い種と考えられる)
Status:Vulnerable A2acd ver 3.1
個体数(群)傾向: 不明
旧レッドリストカテゴリーでは、絶滅危惧2類(VU)。(単純比較はできない)
●トガサワラ
Pseudotsuga japonica
(Japanese Douglas-fir)
Status:Endangered C2a(i) ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
旧レッドリストカテゴリーでは、絶滅危惧2類(VU)。(単純比較はできない)
●バイカナマコ
Thelenota ananas (Prickly Redfish)
Status:Endangered A2bd ver 3.1
個体数(群)傾向: 減少
新規追加

保全の取り組みが成功している種もあります。ローソンヒノキはかつて過剰に取引された種ですが、カリフォルニアやオレゴンでの管理活動が功を奏し、準絶滅危惧種(Nearly Threatened)と評価され、この取り組みが続けば10年以内に軽度懸念(Least Concern)にまで回復すると言われています。しかし、このような取り組みはまだまだ不十分と言わざるを得ないというのがレッドリストに関わる人々の共通の見解と言えます。

*本解説文は、IUCNのプレスリリースをもとに作成しました。

レッドリスト掲載種数の増減一覧

20130702redrist-hyou.jpg

※新規レッドリスト掲載種数について、上記表では4776種となり、プレスリリースの発表数4807種と齟齬があります。これは、分類学上の修正(同種とみなされていたものが、別種として分類されることや、またはその逆で別種とされていたものが、科学的知見の深まりから同種とみなされるようになることなど)によるものです。

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