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「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告 ~ 評価書の補正に係る提言 ~」に対する意見

2012.12.26
要望・声明

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告~ 評価書の補正に係る提言 ~」に対する意見書の送付(PDF/135KB)
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告~ 評価書の補正に係る提言 ~」に対する意見(PDF/240KB)


2012年12月25日

防衛大臣 殿
沖縄防衛局長 武田 博史 殿

 公益財団法人 日本自然保護協会
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
沖縄環境ネットワーク
沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団
沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
ヘリ基地反対協議会
ヘリ基地いらない二見以北十区の会
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
ジュゴン保護キャンペーンセンター
ジュゴンネットワーク沖縄
JUCON(沖縄のための日米市民ネットワーク)

 

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告~ 評価書の補正に係る提言 ~」に対する意見書の送付

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価」(辺野古アセス)の『評価書』に対し、沖縄県知事が「評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは、不可能」との厳しい意見を出しました。

それに対して、防衛省は、知事意見の内容を精査して評価書を補正するため、大臣への助言を行う「有識者研究会」を今年4月に発足させました。

その後、私たち市民団体は、同研究会の非公開性や中間的整理の問題点を指摘し、改善を要請してきました。しかし、最後まで改善が見られず、環境影響評価において重要な要件である科学性と公開性を無視したまま最終報告が出されたことは大変残念です。

「有識者研究会最終報告」に記載された科学性や論理性を欠いた部分が、補正評価書にどのように反映されているのか、また、公有水面埋立申請に引き継がれていくのか、私たちは引き続き注視していきます。

「最終ゴールは県外」と言いながら、一旦、基地を辺野古に作り、そこから移設するという石破茂幹事長の御意見も聞こえますが、これは多くの沖縄県民の意見を無視するばかりか、自然環境に「不可逆的に」悪い影響を与えるという観点からも絶対に認める訳にはいきません。

私たちは、沖縄県民や沖縄の自然環境を大切に思う国民の声が実現され、辺野古、大浦湾の地域、自然環境、生活環境が保全され、オスプレイが飛行せず、ジュゴンが絶滅しないことを強く願い、最終報告に対する意見書を送付します。

 


2012年12月25日

防衛大臣 殿
沖縄防衛局長 武田 博史 殿
普天間飛行場代替施設建設事業に係る
環境影響評価に関する有識者研究会の委員の皆さま

公益財団法人 日本自然保護協会
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
沖縄環境ネットワーク
沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団
沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
ヘリ基地反対協議会
ヘリ基地いらない二見以北十区の会
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
ジュゴン保護キャンペーンセンター
ジュゴンネットワーク沖縄
JUCON(沖縄のための日米市民ネットワーク)

 

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告~ 評価書の補正に係る提言 ~」に対する意見

2012年12月11日に公表された「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会 最終報告 ~ 評価書の補正に係る提言 ~」には多くの問題点があるので、以下に指摘する。

1. 環境影響評価のプロセスの問題

普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会が、今年4月に設置されて以来、私たち市民は、有識者研究会の非公開性や中間的整理の問題点を指摘し、改善を要請してきた。普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関しては、沖縄で実施されてきた今年3月までは、市民の粘り強い要求により、情報公開と市民参加が、十分ではないものの、なされてきた経緯がある。しかし、それに続いて設置された有識者研究会では、公開の場での傍聴や完全な議事録の公開、沖縄県民の意見を聞く機会を設けることなど、公開性が重要な要件である環境影響評価の手続きに大きな問題を残したまま最終報告が出されたことは極めて遺憾である。

また「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会最終報告 ~ 評価書の補正に係る提言 ~」の文章の作成者・発行機関・発行日が書かれていないことも大きな問題である。防衛省のウェブサイトの「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会」に最終報告が掲載されていたことから、同研究会が作成し防衛省が発行したものと考えられるが、正式な文書としては要件が欠けていると言わざるを得ない。

さらに同研究会は、「補正に関して科学的・専門的観点から討議を行い、防衛大臣に助言する」ことを目的として組織されたものであるが、最終報告が提出された12月11日の翌週18日に補正評価書が事業者により沖縄県へ提出されたということは、防衛省とコンサルタントによる評価書補正と研究会による検討が、相互乗り入れをしながら同時進行で行われてきたものと見られ、同研究会は中立性を保った助言を与えるための独立した機関としては機能していないと判断せざるを得ない。

2. 全般について

同研究会は沖縄県知事意見への対応をするに際して、以下の4つの方針(1)-4))に基づき分類したが、論理的に考えると、評価書補正方針には2項目(5)-6))が欠けている。予測不能な要素を多々含む自然環境が対象であるのに「対応が不可能なもの」や「影響が不明のもの」が出て来ないのは不自然である。従って事業者は今後、2項目を追加し、これらに基づき、補正評価書全体を再検討すべきである。

  • 1) 評価書の内容をより丁寧に説明することで対応するもの
  • 2) 追加的な調査、解析、知見等を増やして対応するもの
  • 3) 環境保全措置を新たに(更に)行うことで対応するもの
  • 4) 事後調査又は環境監視調査を続けて、その結果に応じた措置を講じるもの
  • 5) 対応が不可能なもの
  • 6) 影響が不明のもの

3. 科学性に欠け、論理性を欠いている

本文及び別添において、科学的・論理的に問題がある部分が多い。

(1) 最終報告の本文と添付資料の内容が異なる部分が多々見られる。

例1:埋立土砂の調達計画において、本文には本土からのダムの浚渫残土が大部分を占めるような記述がなされているが、別添資料には本土のダムの浚渫残土以外の岩ずりが大部分であるという記述がある。いずれにしても埋立土砂の調達先について具体的な明記が欠けている。

例2:本文には、サンゴ類に関し、「台風の接近等による影響も把握することが望ましい」とあるものの、別添ではその要素については検討されていない。

(2) ジュゴンの個体群存続可能性分析(PVA)に用いられている成熟齢「9歳」は妥当なものとは思えない。

熱帯のトレス海峡のジュゴン個体群を研究しているKwan(2002)は成熟齢を「6-11歳」としているが、オーストラリアのジュゴン個体群を研究しているMarsh(1984, 1986)は成熟齢を「10-17歳」としている。このように環境によって大きく左右されるジュゴンの成熟齢を考える際に、亜熱帯の沖縄のジュゴンは、どちらかといえばトレス海峡よりもオーストラリアのジュゴン個体群に近いのではないかと推測される。従ってしたがって、成熟齢は「9歳」という仮定は、妥当なものとはいえない。(UNEP(2002),  Marsh et al. (2012))。

(3) サンゴや海草の種類や群体型等を全く考慮せず、被度のみを確保すれば良いという偏った考え方に基づき移植や造成等の措置を検討していることは、生物多様性保全の観点からは不適切である。

(4) 中城港湾(泡瀬干潟)や水産庁(2008)の事例を基に海草藻場の造成が検討されているが、前者に関しては、手植え移植と機械移植が行われたものの、いずれも失敗に終わっている(日本自然保護協会 2007)。後者は移植が可能であるとされている種が限られており、また生残率等のデータすら示されていない実験の段階にある。従って、これらの事例を基に移植が可能と考えるのは不十分である。

(5) 「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書に対する有識者研究会 中間的整理~評価書補正に係る基本的方針について~」に対するNGO意見にて(日本自然保護協会ほか 2012)指摘したが、移動させやすい生き物のみに絞り移植することは環境保全措置として適切ではない。また仮に、サンゴや海草の移植を試みるのであれば、事業全体の工程のなかで、いつどの位の量を移植するのか、どの方法を用いるのか、事後調査はどの程度の頻度で行うのか等の詳細を具体的に示すべきである。

(6)沖縄県知事意見や日本自然保護協会、沖縄・生物多様性市民ネットワーク、沖縄ジュゴンアセス監視団など市民や市民団体が出してきた意見の多くが反映されていない。

【おわりに】

有識者研究会は環境アセスの科学性を保証するために、沖縄県知事意見の一つ一つに、丁寧に応答すべきであると考える。情報の公開性や匿名の専門家が述べた意見への対応に苦労してきた私たちとしては、少なくとも分野ごとに執筆者の氏名を入れていただきたい。仮に、最終報告の起草者が防衛省の担当者や、コンサルタントの担当者であるのなら、これらのことを明示して、有識者研究会としての責任を果たしていただきたい。

また、最終報告では「事業自体の適否、環境影響評価の補正手続き自体の適否について意見を述べるために設けられたものではない」と自らを規制しているが、まさに「木を見て森を見ず」の類である。科学者は「与えられた条件」のもとでのみ考察しがちであるが、時と場合によりけりで、「与えられた条件」が作為的で誤りである場合には、その考察自体が疑わしいものとなる。これでは科学者の社会的責任を果たせないことを自覚していただきたい。

<参考文献>

  • 1)Marsh, Helene, Thomas J. O’Shea and John E. Reynolds III (2012) Ecology and Conservation of Sirenia : Dugongs and Manatees. Cambridge University Press, U.K.
  • 2)UNEP (2002) Dugong, Status Report and Action Plan for Countries and Territories, Early Warning and Assessment Report Series 02-1. UNEP/DEWA
  • 3)日本自然保護協会(2007)泡瀬干潟自然環境調査報告書.日本自然保護協会報告書第95号.日本自然保護協会
  • 4)日本自然保護協会など(2012)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書に対する有識者研究会 中間的整理~評価書補正に係る基本的方針について~」に対するNGO意見
  • 5)日本自然保護協会(2012)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書」への意見書・理由書
  • 6)水産庁・水産総合研究センター(2008)熱帯性海草藻場の再生に関する検討-ジュゴンと漁業の共生を目指して

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