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海岸法の改正が、国会で可決されました。

2014.06.04
活動報告
icon_shimura.jpg 保護・研究部の志村です。
 
 
NACS-Jがゆくえを注目していた「海岸法」の改正が、さきほど参議院本会議で可決、成立しました。
(参照:http://goo.gl/29VHYM )
 
 
法案そのものには変更はなく、課題は残りましたが、先日の衆議院に加えて、昨日の参議院でも付帯決議がつきました。
 
 
参議院では、生物多様性の保全と回復の項目として、
 
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五 「生態系ネットワークの更なる充実強化による生物多様性の保全と回復」が新たな「国土のグランドデザイン」(骨子)における基本戦略に位置付けられていることを踏まえ、海岸保全施設の整備を含む防災・減災対策の強化に当たっては、自然海岸の保全や砂浜の再生に努めるなど自然環境との調和を図ること。
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が追加されたのは、ささやかですが、大きな前進です。
付帯決議は、政府が法律を執行するにあたっての留意事項を示したもの。法的効力はありませんが、ざっくり言えば国会としての運用への注文というようなものです。
今後の運用に注目したいと思います。
 
また、審議の中では、ハードとソフトの双方が大事、という議論も多々されました。
防潮堤というハードは具体的ですが、ソフトの議論はまだまだ地域まかせという印象を受けました。
 
そのハードについて、防潮堤の計画のしかたが、東日本の被災地で問題になっているため、住民参加、合意形成は今回の大きな注目点でした。
 
住民参加や合意形成の具体的な場として、今回の改正で「協議会」が盛り込まれました。
改正案の「海岸保全施設整備や海岸の保全に関し必要な措置について協議を行うための協議会を組織することができる。」に対し、NACS-Jは、協議会の設置は「できる」ではなく、必須とすべきと主張してきました。
 
住民参加や合意形成については、複数の議員が、東北各地で問題となっている現状を挙げながら、いろいろな方向から繰り返し質問されました。
大事な議論がされましたが、国の答弁は、「協議会の設置やメンバーは、海岸管理者(=県)によって適切に判断されると考えている」の一点張りでした。
 
地方分権の流れから、国が頭ごなしに決められないという背景もありそうですが、答弁の中で、地元の意見を十分に聞き、話しあって進めていくこと、まちづくりの中で考えていくことが大事という方針は、国土交通大臣からも示されたので、現場で、この付帯決議が実行されるよう注目し、要望していくことが必要です。
 
参議院国土交通委員会では、「特に、地域の住民や市民団体等が協議会の設置と同協議会への参加を求めた場合には、海岸管理者等はこれらについて十分に検討すること。」という附帯決議がつけられています。
 
 
そのほかにも、防潮堤に使われる土砂に伴う外来種の危惧など、実際の運用の場面になれば問題が顕在化してくることが予想されます。
 
今回の改正では、5年後の見直し項目も追加されました。
小さなことのようですが、見直しが明記されていないと、今回のような大きな出来事でもなければ改正のタイミングがなかなかこないことになりがちです。
 
今回、NACS-Jでは、昨年度からの現地での地元のみなさんとの意見交換や、沿岸保全管理WG委員との検討、環境女子会☆への参画、議員へのロビーイングなどに取り組みました。
今回、盛り込まれなかった重要事項も、今後に向けて働きかけを続けていきたいと思います。今後ともご支援お願いします。
 
●衆議院での附帯決議はこちら
 
●NACS-Jが5月20日に提出した、海岸法改正に対する意見
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/wetland/2014/05/post-30.html
 
 

20140604kaiganhouseiritsu_image_R.jpg
▲宮城県気仙沼市の小泉海岸。宮城県最大の14.7mの巨大な防潮堤が、震災後にできた砂浜を覆い尽くすような計画がされている。
多くの意見を受けて、住民代表及び関係機関の代表者による「検討ワーキング」が開かれている。
 

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