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2022.01.21

(仮称)JRE鏡野風力発電事業における計画段階環境配慮書に関する意見書を出しました

岡山県北部で大規模な風力発電が計画されています。事業計画地は、岡山県内で自然度が最も高いエリアであり、生物多様性の喪失などの自然環境面での多大な影響が予測されることから、配慮書段階で中止することを求める意見を提出しました。

仮称)JRE鏡野風力発電事業における計画段階環境配慮書に関する意見書(PDF/959KB)


2022年1月20日

(仮称)JRE鏡野風力発電事業における計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10
ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、岡山県真庭市で計画されている(仮称)JRE鏡野風力発電事業(事業者:ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社)の計画段階配慮書に関して意見を述べる。
本事業は下記のような懸念があり、生物多様性の喪失などの自然環境面での多大な影響が予測されることから、同地域で風力発電事業を行うのには適さない環境であり、配慮書段階で中止すべきである。

1)種の保存法の政令指定種イヌワシとクマタカの個体群に影響を及ぼす懸念がある

事業実施想定範囲では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシの生息が推定され、クマタカの生息が確認されている。特に、イヌワシは国の天然記念物にも指定されており、中国山地の個体群は、個体数が極めて少なく繁殖も極めて厳しい状態で、他地域の個体群とは生息地が分断され孤立している。本事業の遂行は、生息が推定されている同地域のイヌワシの生息環境を脅かし、生息個体を発電施設への衝突事故の可能性にさらされることになり、中国地方のイヌワシ個体群の絶滅に繋がることが強く懸念される。環境省は2021年8月19日に「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を発表し、地域ブロックごとのつがい数・繁殖成功率の目標値を設定した。目標値達成にむけた「生息環境改善促進候補地」に中国地方の個体群も含まれており、本事業は今後求められるイヌワシの保全の取り組みに逆行するものである。

2)ブナ林やミズナラ林などの植生自然度の高い植生が喪失する

事業実施想定範囲には、風力発電機の設置想定範囲の尾根部を中心に植生自然度9のクロモジ-ブナ群集を含むブナ林やミズナラ林が広範囲に分布し、岡山県内で自然度が最も高いエリアである。これら広葉樹自然林の一部は、環境省指定の特定植物群落「大空山のブナ林」となっている。さらに対象事業実施想定範囲のほぼ全域が保安林に指定されている。本事業を実施するためには、既設の林道がほとんど存在しないことから、風力発電機の設置想定範囲以外にも工事用道路の新設による土地の改変および立木の伐採を行う必要がある。このような自然度の高い森林の広範囲な伐採行為は、自然環境保全上から看過できるものではなく、本地域に建設を計画した事業者の見識が問われる。

3)昆虫類の多様性への影響が懸念される

事業実施想定範囲の一部は、日本昆虫学会自然保護委員会発行の「昆虫類の生物多様性保護のための重要地域(第1集)」に掲載されている「奥津・上斎原地域」に含まれており、昆虫類の種多様性上、重要な地域である。特に、岡山県下では数少ないギフチョウの生息地および、ナナフシハバチの岡山県下で唯一の既知産地となっている(巣瀬他1999)。本事業による伐採および土地改変によって、これら多様な昆虫類の生息への影響が強く懸念される。

4)土砂災害の危険性増大が危惧される

事業実施想定範囲から流下する渓流のほとんどが土石流危険渓流に指定されており、特に北麓の羽出西谷川右岸は土砂災害特別警戒区域が複数分布している。土砂災害が発生した場合、建築物に損壊が生じ、住民の生命に著しい危害が生ずる恐れがあり、一定の開発行為の制限や居室を有する建築物の構造が規制されている。上流部の乗幸山の尾根上で大規模な土地改変や伐採行為を行うことは、下流部の羽出西谷川右岸の各渓流での土砂災害リスクを高めることが懸念される。

(参考文献)
巣瀬 司・広渡俊哉・大原昌宏(編)(1999)昆虫類の多様性保護のための重要地域第1集.日本昆虫学会自然保護委員会,東京.

以上

▲事業予定地直下の白賀渓谷(撮影:西本孝)

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