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川辺川ダム建設計画問題

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2021.03.12

川辺川における「流水型ダム」に対する住民参加手続きと環境影響評価法による環境アセスメントを求める要望書を提出しました

日本自然保護協会(NACS-J)は地元市民グループとともに、約30年にわたり川辺川の自然環境調査やダム建設の影響の大きさを指摘してきた立場から、現在進められている川辺川での「流水型ダム」建設の検討に対し、住民参加でゼロオプションも含めてダム建設の妥当性を検討すること、環境影響評価法にもとづく環境アセスメントの手続きを計画構想段階から実施することを、熊本県と国に求めました。

川辺川における「流水型ダム」に対する住民参加手続きと環境影響評価法による環境アセスメントを求める要望書(PDF/921KB)


2021年3月12日

熊本県知事  蒲島 郁夫  様
国土交通大臣 赤羽 一嘉  様
環境大臣   小泉 進次郎 様

川辺川における「流水型ダム」に対する住民参加手続きと環境影響評価法による環境アセスメントを求める要望書

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

自然観察指導員熊本県連絡会
会長 靏(つる) 詳子

日本自然保護協会は、球磨川水系で計画された「川辺川ダム」事業に対して、1990年代から自然観察指導員熊本県連絡会(以下、熊本連絡会)をはじめとする市民グループや各分野の専門家と連携して、希少猛禽類クマタカをはじめアユや水環境、九折瀬洞など、この水系の自然環境に関する調査を独自に行ってきました。こうした調査結果をふまえ、「川辺川ダム計画と球磨川水系の既設ダムがその流域と八代海に与える影響」(2003年)などの報告書を公表し、川辺川の河川生態系の重要性と貯留型の「川辺川ダム」事業による影響の大きさを指摘してきました。今般、日本自然保護協会は、20年以上にわたって球磨川流域で調査活動を続けてきた熊本連絡会とともに、下記について要望いたします。

1.「流水型ダム」建設を前提にせずゼロオプションを含めた検討を住民参加で行うこと

「令和2年7月豪雨」を発端に、熊本県と国土交通省九州地方整備局による「球磨川流域治水協議会」が設置され、川辺川に「流水型ダム」を建設することを前提とした治水方策の検討が進んでいます。熊本県知事が2020年11月に国に「流水型ダム」建設の要望を表明するまで、「住民や関係者の意見を聴く場」や「学識経験者等の意見を聴く場」での意見聴取が行われたものの、株式会社マイズソリューションズと横浜国立大学が実施した流域住民へのアンケート調査では「住民との議論・説明不十分」との評価が73%を占める結果となっており、住民の間に合意が形成されている状況にはありません。

河川法には、河川整備計画策定の際には必要に応じて「関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」との規定が設けられています(第16条の2の4)。球磨川水系は、全国の一級河川で唯一、未だに河川整備計画が策定されていない水系であり、河川法改正から四半世紀が経とうとしている現在まで、この状況が放置されてきたことは河川行政の不作為と評価せざるを得ません。この状況下で、住民意見の反映が不明確なまま「球磨川流域治水協議会」で検討が進むことは手続きに問題があります。

国土交通省九州地方整備局は「国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン」(2003年)にのっとり、当該事業を行わない、いわゆるゼロオプションも含めた複数案を作成、公表し、生活や環境、経済などの面からメリット・デメリットを比較検討する場を設けるなど、自ら定めた住民参加手続きを行うべきです。

2.環境影響評価法による環境アセスメントを行うこと

私たちは、従前の貯留型の川辺川ダム事業の際、事業者である旧建設省に環境影響評価法にもとづく環境影響評価(環境アセスメント)の実施を求めてきました。しかし、1997年の法施行よりも前に着手された事業であることを理由に、当時はその手続きが行われませんでした。わずかに行われた自主的な調査による環境レポート「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」(2000年)は、予測評価も環境保全策も十分なものと言えず、環境アセスメントと呼べるものではありません。さらに、この調査は20年以上前に実施されたもので、その後も道路建設など付帯工事が多く行われたため、現在の当該流域における自然環境の実態を評価するには不十分であり不適切です。

「流水型ダム」は貯留型ダムと比較して環境面での影響が少ないと言われることがありますが、実際にどのような環境影響があるのか科学的な知見は十分になく、他地域で運用されている事業のモニタリング調査も十分に行われていません。

また、以前の川辺川ダム事業がアーチ式コンクリートダムとして計画されていたのに対して、「流水型ダム」はより膨大なコンクリートを必要とする重力式コンクリートダムの構造となり、コンクリートの骨材を採取する原石山が大規模なものになります。事業そのものが以前の事業よりも大きく変更された以上、その環境影響の予測評価を環境影響評価法の趣旨にもとづいて適切に行うためには、法の規定による環境アセスメントが必要です。

加えて、「流水型ダム」であっても、希少猛禽類クマタカの繁殖への影響、ダムの堆積物や河床環境の変化、アユをはじめとする魚類・水生生物の移動阻害、湛水時に九折瀬洞水没によるコウモリ等や洞窟生態系への影響などがより一層懸念され、いずれも生物多様性の保全の観点からも重要な問題です。
熊本県知事は、2020年11月に表明した「球磨川流域の治水の方向性について」において、川辺川の「流水型ダム」を提案する一方で「特定多目的ダム法にもとづく貯留型『川辺川ダム計画』の完全な廃止」と「法にもとづく環境アセスメント、あるいはそれと同等の環境アセスメントの実施」を国に求めることを表明しています。しかし、「球磨川流域治水協議会」では、その要望が無視され、約20年前の環境レポートに「追加して必要となる環境調査や環境保全措置の検討を行う」と説明されており、環境アセスメントの本質的な要件を欠くものです。

環境影響評価法による手続きは、配慮書、方法書、準備書、評価書、報告書とその節目ごとに縦覧のうえ住民をはじめとする国民が意見を提出する機会を持ち、また、国の環境行政の責任をになう環境大臣が当該事業の影響評価と環境保全に対して意見を述べることになります。それらの意見に対して、事業は意見を反映しなければなりません。

以上のように「球磨川流域治水協議会」で浮上した「流水型ダム」は「環境に極限まで配慮する」ことができるのか不確実性が高いため、その建設の妥当性を「住民参加手続き」で検討し、環境影響評価法にもとづく環境アセスメントの手続きを計画構想段階から実施すべきです。

 
熊本県知事、国土交通大臣、環境大臣に下記のことを要望いたします。

1)
熊本県知事は、自らの表明でも述べられているように、国に対して法にもとづく環 境アセスメントの実施に加え、住民参加手続きを求めること
2)
国土交通大臣は、川辺川ダム建設問題の経緯を認識のうえ、住民参加手続きと法にもとづく環境アセスメントを実施すること
3)
環境大臣は、流域における環境と防災を考えるうえでも、国土交通省が法にもとづく環境アセスメントを実施するよう助言、指導すること

以上

(引用・参考資料)

  • 「川辺川ダム計画と球磨川水系の既設ダムがその流域と八代海に与える影響」(日本自然保護協会、2003年)
  • 「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み(平成12年6月)」(建設省九州地方建設局川辺川工事事務所、2000年)
  • 「川辺川に「流水型のダム」を求める表明に対する意見書」(日本自然保護協会、2020年11月21日)
    https://www.nacsj.or.jp/archive/2020/11/11310/
  • 「球磨川流域の復旧・復興と治水対策の検討についての意見書」(日本自然保護協会、2020年10月2日)
    https://www.nacsj.or.jp/archive/2020/10/11177/
  • 「球磨川流域の治水に関する流域住民アンケート調査」(株式会社マイズソリューションズ・及川敬貴研究室(横浜国立大学)共同調査、2020年12月10日)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000057581.html
  • 「国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン」(国土交通省総合政策局、2003年)
    https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/01/010630_.html

参考

ダム建設を前提としない「流域治水」を求める意見書を提出しました(2020年10月)

川辺川に「流水型のダム」を求める表明に対して意見書を提出しました(2020年11月)

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