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2020.11.19

気象庁の生物季節観測の種目・現象の変更について声明を出しました

2020年11月10日に、気象庁が発表した「生物季節観測の種目・現象の変更」に対し、日本自然保護協会は、本来的な季節観測の重要性に加えて、自然保護の観点から下記3点の理由で、生物季節観測とその継続の重要性について考えを申し述べます。

近年、重要性が増す、気候変動対策および生物多様性保全の観点からも、広域的かつ長期的で、精度の保たれた観測データの価値は極めて重要です。今後、気象庁において生物季節観測で廃止を予定されている対象について今一度再考されることを要望しますが、変更がやむを得ない場合には、例えば、気候変動対策や自然環境の保全を任務とする環境省などと省庁を横断して観測の継続を検討されることを期待します。

気象庁による生物季節観測の種目・現象の変更について(声明)(PDF / 647 KB)


2020年11月19日

気象庁による生物季節観測の種目・現象の変更について(声明)

公益財団法人 日本自然保護協会
亀山 章

気象庁は、2020年11月10日付で「生物季節観測の種目・現象の変更について」という表題で、1953年より継続していた生物季節観測の調査項目を植物 34 種目、動物 23 種目から、植物 6 種目 9 現象にまで削減することを発表しました。
この大幅廃止決定の理由は、植物については標本木の確保が困難であり、動物については対象を見つけることが困難であることとされています。

このことについて公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J)は、本来的な季節観測の重要性に加えて、自然保護の観点から下記3点の理由で、生物季節観測とその継続が重要であると考えて意見を申し述べます。

近年、重要性が増す、気候変動対策および生物多様性保全の観点からも、広域的かつ長期的で、精度の保たれた観測データの価値は極めて重要です。今後、気象庁において生物季節観測で廃止を予定されている対象について今一度再考されることを要望しますが、変更がやむを得ない場合には、例えば、気候変動対策や自然環境の保全を任務とする環境省などと省庁を横断して観測の継続を検討されることを期待します。

1.気候変動対策強化を進める基礎データとして価値がある

生物季節観測は、気候変動の影響を見る際の基礎的な記録となります。これまでにも、生物季節観測の観測データは温暖化影響を評価する研究にも使われた実績を有しており、これらの観測データがあったからこそ、1952年という過去から遡った評価を可能としました。

気候変動の問題ならびにその意欲的な対策のために合意されたパリ協定に基づいて、菅首相は、今年10月に気候変動対策を日本において大幅に強化することを表明しました。その矢先に、基礎的な長期・広域データを失うことは、日本だけでなく世界においても、大きな損失となります。

歴史学の分野では、過去の生物季節を記した史資料を用いて、それぞれの時代の気候の特徴を知り、長期にわたる気候変動を推定することがなされています。これは冷害や豪雨などの気候災害の歴史を知るうえでも欠かせないものになっています。

2.生物調査における「対象の生物がいない」という記録の重要性

今回の項目廃止では、観測地点において「対象を見つけることが困難」という理由が掲げられていますが、生物多様性観測において、調査を行った上で「対象の生物がいなかった」という記録は非常に重要です。

例えば、今回対象から外れた「ほたる」は、ゲンジボタルやヘイケボタルの成虫を対象としていますが、日本自然保護協会が事務局を担う、環境省モニタリングサイト1000里地調査においても、過去10年間で、これらの種の急減が確認されました。こうした生物種が減少している現状や今後の変化は、記録をしてこそ客観的な現象として確認することができ、それらの生物種の変化に対する保全対策の検討の根拠資料となります。

対象を見つけることが困難だからとして記録自体を止めてしまえば、その対象の生物の変化は曖昧になり、取るべき対策も取れないこととなってしまいます。近年、深刻化する生物多様性の喪失や気候変動の問題を考える上でも、観測が困難となっている現状を踏まえて、観測を続ける意義が再考されるべきです。

3.日本文化において重要な季節感の喪失につながる

日本は風景の美しさを世界に誇る国です。その美しさは風景が季節とともに変化するところから生じています。季節の変化は動植物などの生きものによって知ることができるものであり、それが多様であることから、季語を用いた和歌や俳句が生まれ、山水の風景画や鳥・植物などの静物画が描かれてきました。そこに花鳥を愛でる日本文化の特徴があり、日本の国際観光地としての魅力を高める要因となっています。生物季節は、かつては、農作物の種まきや病害虫の防除などの農作業のための農事暦と密接不可分で、地域の暮らしと結びついてきました。

今回の生物季節観測項目の大幅廃止の変更は、このような生きものから季節の変化を読み取る機会を奪うことにもつながり、生物文化多様性、ひいては日本文化の喪失へとつながるものと考えます。

以上

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