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辺野古の計画概要変更承認申請に対する要望書を出しました

2020.04.28
要望・声明

4月21日に防衛省から沖縄県に設計概要変更承認申請が提出されました。2012年までに実施された環境影響評価が科学的および市民参加という点で不十分なために環境保全に問題があり、軟弱地盤改良工事が規模の大きな工事であるため、環境影響評価のやり直しが必要です。これらの理由により、日本政府には環境影響評価の再度の実施、沖縄県知事には申請の却下を要望しました。

日本政府宛:普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請に対する要望書
沖縄県知事宛:普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請に対する要望書


2020年4月28日

内閣総理大臣    安倍 晋三 様
内閣官房長官    菅  義偉 様
防衛大臣      河野 太郎 様
環境大臣      小泉進次郎 様
沖縄・北方担当大臣 衛藤 晟一 様
沖縄防衛局長    田中 利則 様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請に対する要望書

本年4月21日に防衛省から沖縄県に米軍普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請が提出された。 同申請の内容は公表されていないものの、大浦湾に広がる軟弱地盤の改良のため、砂で固めた杭を打ち込む工法などの追加および埋め立て区域を仕切る護岸の形状などの変更が含まれていると報じられている。日本自然保護協会は、沖縄の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から以下のことを要望する、

 

軟弱地盤の改良に用いられる砂の量は350万㎥であり、これは県内の年間の海砂の採取量の約3年分 にあたり、貴重な砂が用いられること自体が問題であるとともにこの分量の砂が使われる工事は、規模の大きな環境改変になる。

事業者は埋め立て部分に用いる資材を砂からリサイクル材に変更している。これは沖縄の自然を新たに壊して土砂を調達するのではないことに関し一定の評価はできるものの、その場合にはリサイクル材が環境に与える影響の予測が必要となる。

事業者は護岸工事の施工を環境影響評価書への記載と異なる順番ですでに行っており、今回の申請で中仕切り護岸の配置など内容が変更される部分がある。沖縄島東海岸を流れる海流は、辺野古岬と長島の間から大浦湾に入る。施工の内容や順番が変わるのならば、それに伴い護岸工事の順番の変更が海流に与える影響を再度予測する必要がある。埋め立て方法の変更、揚土場の設置などの追加についてもひとつずつの規模は小さくとも複合的に環境に与える影響を評価する必要がある。

日本自然保護協会が主張してきたように、本事業に際する環境影響評価は科学的および市民参加という点で不十分なために環境保全に問題がある(2013)。また、環境影響評価後に新種や日本初記録種などが新たに発見され(2014)、工事実施区域付近に位置する長島の洞窟が科学的価値を持つことが明らかになり(2018)、さらに、最近になり地質調査等により軟弱地盤の存在が新たに明らかとなった。

工事実施区域付近の海草藻場を利用してきたジュゴンは生息状況が把握できなくなったものの、最近の調査で鳴声の記録があったというように、環境影響評価の際には予測できていなかった行動が確認されている。

普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会の第25回の資料「計画変更に伴う環境影響について」では、水質や音量などの計測可能な指標についてシミュレーションがなされている。しかしシミュレーションの結果から、環境への影響の程度をどのように判断し、申請前と比べて同程度あるいは少ないとしたのか、その過程が示されておらず、結論ありきの検討となっている。

埋め立て資材については、同委員会では土砂の性質が建築物に向いているかどうか、濁度や大気の変化など一部の指標について個別に検討されているものの、それらの複数の変化が同時に起こる場合について、貴重な生物や生態系に与える影響の複合的な予測評価はなされていない。また土砂や海砂の調達先についても明記されておらず、調達先の環境への影響も示さていない。

根本的な事項として、埋め立て工事に必要な土砂が2,020万㎥で新たに追加される軟弱地盤の改良に必要な土砂が350万㎥ならば、当初予定の約6分の1から7分の1の規模の追加である。これを「軽微な変更」とは到底言えない。追加分の土砂が環境に与える影響だけを考慮しても「環境への影響は現在されている評価と同程度かそれ以下」だとは判断できない。

最近の日本自然保護協会の調査結果から辺野古・大浦湾のサンゴ礁の健康度が落ちていることが示唆され、気候変動の影響も年々大きくなっているが、これらのことは環境監視等委員会や技術検討委員会では考慮されていない。

上記の理由から、日本政府は環境影響評価を最初からやり直すよう要望する。

参考文献:
日本自然保護協会(2013)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見 
日本自然保護協会(2013)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見への理由書
日本自然保護協会(2014)記者会見資料:環境アセス後に判明した新たな事実を発表
日本自然保護協会(2018)島洞窟群の緊急調査結果とその学術的重要性について
沖縄防衛局(2020)資料3-1 計画変更に伴う環境影響について


2020年4月28日

沖縄県知事 玉城デニー 様

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請に対する要望書

本年4月21日に防衛省から沖縄県に米軍普天間飛行場代替施設建設事業に関する設計概要変更承認申請が提出された。 同申請の内容は公表されていないものの、大浦湾に広がる軟弱地盤の改良のため、砂で固めた杭を打ち込む工法などの追加および埋め立て区域を仕切る護岸の形状などの変更が含まれていると報じられている。日本自然保護協会は、沖縄の生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から以下のことを要望する、

軟弱地盤の改良に用いられる砂の量は350万?であり、これは県内の年間の海砂の採取量の3年分 にあたり、貴重な砂が用いられること自体が問題であるとともにこの分量の砂が使われる工事は、規模の大きな環境改変になる。

事業者は埋め立て部分に用いる資材を砂からリサイクル材に変更している。これは沖縄の自然を新たに壊して土砂を調達するのではないことに関し一定の評価はできるものの、その場合にはリサイクル材が環境に与える影響の予測が必要となる。

事業者は護岸工事の施工を環境影響評価書への記載と異なる順番ですでに行っており、今回の申請で中仕切り護岸の配置など内容が変更される部分がある。沖縄島東海岸を流れる海流は、辺野古岬と長島の間から大浦湾に入る。施工の内容や順番が変わるのならば、それに伴い護岸工事の順番の変更が海流に与える影響を再度予測する必要がある。埋め立て方法の変更、揚土場の設置などの追加についてもひとつずつの規模は小さくとも複合的に環境に与える影響を評価する必要がある。

日本自然保護協会が主張してきたように、本事業に際する環境影響評価は科学的および市民参加という点で不十分なために環境保全に問題がある(2013)。また、環境影響評価後に新種や日本初記録種などが新たに発見され(2014)、工事実施区域付近に位置する長島の洞窟が科学的価値を持つことが明らかになり(2018)、さらに、最近になり地質調査等により軟弱地盤の存在が新たに明らかとなった。

工事実施区域付近の海草藻場を利用してきたジュゴンは生息状況が把握できなくなったものの、最近の調査で鳴声の記録があったというように、環境影響評価の際には予測できていなかった行動が確認されている。

普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会の第25回の資料「計画変更に伴う環境影響について」では、水質や音量などの計測可能な指標についてシミュレーションがなされている。しかしシミュレーションの結果から、環境への影響の程度をどのように判断し、申請前と比べて同程度あるいは少ないとしたのか、その過程が示されておらず、結論ありきの検討となっている。

埋め立て資材については、同委員会では土砂の性質が建築物に向いているかどうか、濁度や大気の変化など一部の指標について個別に検討されているものの、それらの複数の変化が同時に起こる場合について、貴重な生物や生態系に与える影響の複合的な予測評価はなされていない。また土砂や海砂の調達先についても明記されておらず、調達先の環境への影響も示さていない。

根本的な事項として、埋め立て工事に必要な土砂が2,020万?で新たに追加される軟弱地盤の改良に必要な土砂が350万立方メートルならば、当初予定の約6分の1から7分の1の規模の追加である。これを「軽微な変更」とは到底言えない。追加分の土砂が環境に与える影響だけを考慮しても「環境への影響は現在されている評価と同程度かそれ以下」だとは判断できない。

最近の日本自然保護協会の調査結果から辺野古・大浦湾のサンゴ礁の健康度が落ちていることが示唆され、気候変動の影響も年々大きくなっているが、これらのことは環境監視等委員会や技術検討委員会では考慮されていない。

上記の理由から再度の環境影響評価が必要であることは明白である。沖縄県には沖縄の大切な財産である辺野古・大浦湾のサンゴ礁保全のため、同申請を却下いただき、防衛省に環境影響評価をやり直すよう要望していただくようお願いいたします。

参考文献:
日本自然保護協会(2013)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見
日本自然保護協会(2013)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見への理由書
日本自然保護協会(2014)記者会見資料:環境アセス後に判明した新たな事実を発表
日本自然保護協会(2018)島洞窟群の緊急調査結果とその学術的重要性について
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会(第25回)
沖縄防衛局(2020)資料3-1 計画変更に伴う環境影響について

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