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「熊井の森」をはじめとする埼玉県内の重要な里山環境の保全と太陽光発電事業の進め方について要望書を提出しました

2020.02.21
要望・声明

要望書を手渡すNACS-J高川の写真

日本各地の里山で生き物たちが急速に姿を消している中、メガソーラー発電施設の無秩序な建設開発がさらなる問題となっており、地域住民から反対の声が上がっている場所が多く見られます。

一方で、生物多様性の最も重大な危機をもたらしている地球温暖化の抑止のためには、再生可能エネルギーの導入をより意欲的・計画的に進めていく必要があり、地域の生物多様性の保全と両立していくことが強く望まれています。

この度、埼玉県鳩山町の「熊井の森」において、メガソーラーの開発計画が持ち上がりました。熊井の森は、環境省のモニタリングサイト1000の重要生態系監視地域でもあり、またサシバやミゾゴイなどの絶滅危惧種の生息や、まとまった面積の希少なモミ群落が確認されるなど、保全上重要な里山です。また埼玉県下では、この場所以外にも保全上重要な多くの里山でメガソーラー開発問題が頻発しています。

これまでこの場所に関わってきたNACS-Jでは、地元地域で活動を続ける2団体(はとやま環境フォーラム、および埼玉県生態系保護協会東松山・鳩山・滑川支部)からのご協力を頂きながら、日本野鳥の会およびWWFジャパンと共同で埼玉県知事および鳩山町長あてに要望書を提出しました。

 
【埼玉県知事宛】熊井の森をはじめとする埼玉県内の重要な里山環境の保全と太陽光発電事業の進め方についての要望書(PDF/236KB)

【鳩山町長宛】鳩山町における重要な里山環境の保全と太陽光発電事業の進め方についての要望書(PDF/244KB)


令和2年2月21日

埼玉県知事 大野 元裕 殿

熊井の森をはじめとする埼玉県内の重要な里山環境の保全と太陽光発電事業の進め方についての要望書

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
会長 末吉 竹二郎
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
(公印省略)

平素より、埼玉県の生物多様性の保全にご尽力いただき敬意を表します。
さて、近年、県内各地の里山において太陽光発電事業の計画が進められております。
太陽光発電事業の推進は気候変動対策のために大切ですが、それぞれの地域の生物多様性保全と両立した形で進めることが重要です。
しかし現在、県内のいくつかの場所では太陽光発電事業が地域の自然環境へ悪影響を及ぼすことを懸念する声が地元住民からあがっています。

鳩山町では、「熊井の森」で太陽光発電事業の計画が進んでおり、問題となっています。
当該地は、典型的な里山的景観が良好に残されており、生物多様性の保全上重要な場所です。このような場所での太陽光発電事業は、規模が小さくとも地域の生物多様性への大きな悪影響を招きます。

熊井の森をはじめとする県内における生物多様性保全上重要な里山の適切な保全を進めながらも、太陽光発電を導入していけるよう、以下のことを要望します。

要望1.熊井の森での太陽光発電事業を抑止するための措置を講じること

環境省の重要生態系監視地域にも指定されている熊井の森では、特に豊かな鳥類相が確認されているほか、サシバやミゾゴイなどの絶滅の危機に瀕する里山の鳥類が安定的に生息しています。また「環境省特定植物群落」や「埼玉県レッドデータブック2011植物編」に「熊井のモミ林」として記載されている全国的にも希少なモミ群落が成立するなど、保全上重要な場所です。当該地に計画されている太陽光発電事業は、規模が小さくとも希少な植生や絶滅危惧種の鳥類の繁殖活動に影響を及ぼす可能性が大きいです。
熊井の森の自然環境に悪影響が及ばぬよう、当該地を特別緑地保全地区に指定するとともに、太陽光発電事業等の開発行為について条例に基づく許可権者として許可しないことを要望します。

要望2.県内の保全上重要な里山での太陽光発電事業を計画的に抑止すること

生物多様性基本法では、開発行為にあたっては計画の立案を含む早い段階からの環境影響評価と生物多様性の保全への配慮を行うことが述べられています。基本法に即し、県内で自然環境の基礎調査をすすめるとともに、太陽光発電事業による開発行為を抑止すべき生物多様性保全上重要な地域を具体的に特定することを要望します。
その上で、特に生物多様性の保全上重要な里山については、保安林・鳥獣保護区・文化財等に指定し、開発を規制可能な地区とすることを要望します。
また、現在の埼玉県の環境影響評価条例では、太陽光発電事業のほとんどを占める2MW(約3ha)未満の計画については対象外となっていることから、小規模であっても生物多様性に大きな影響を与える可能性のある事業については20ha未満の事業規模でも対象にできる制度へと改訂することを要望します。

要望3.里山の保全と両立できる形で太陽光発電の導入を図っていくこと

開発による環境負荷が低いと想定される場所において再生可能エネルギーの導入促進が図られるよう、県として「再生可能エネルギー等導入計画」を策定することを要望します。計画の中では、太陽光を含む再生可能エネルギー全体の導入目標を定めるとともに、目標達成に必要な適地を示すことが重要です。また、地域住民や事業者への情報提供に関しても計画に含めることが重要です。

本件に関する問い合わせ先:

公益財団法人 日本自然保護協会 高川晋一
東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
tel03-3553-4105
公益財団法人 日本野鳥の会 葉山政治
東京都品川区西五反田3丁目9-23丸和ビル3F
tel03-5436-2633
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
草刈秀紀・市川大悟
東京都港区三田1-4-28三田国際ビル3階
tel03-3769-1713


令和2年2月21日

鳩山町長 小峰 孝雄 殿

鳩山町における重要な里山環境の保全と太陽光発電事業の進め方についての要望書

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
会長 末吉竹二郎
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山章
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤孝一
(公印省略)

平素より、鳩山町における生物多様性の保全にご尽力いただき敬意を表します。
さて、近年、町内の里山において複数の太陽光発電事業の計画が進められております。
太陽光発電事業の推進は気候変動対策のために大切ですが、それぞれの地域の生物多様性保全と両立した形で進めることが重要です。しかし現在、町内のいくつかの場所では太陽光発電事業の計画が地域の自然環境へ悪影響を及ぼすことを懸念する声が地元住民からあがっています。
その一つが「熊井の森」です。当該地は、典型的な里山的景観が良好に残されており、生物多様性の保全上重要な場所です。このような場所での太陽光発電事業は、規模が小さくとも地域の生物多様性への大きな悪影響を招きます。
熊井の森をはじめとする保全上重要な里山の適切な保全と活用を進めながら、太陽光発電を導入していけるよう、以下のことを要望します。

要望1.熊井の森を保護地域とし、太陽光発電事業を抑止すること

環境省の重要生態系監視地域にも指定されている熊井の森では、特に豊かな鳥類相が確認されているほか、サシバやミゾゴイなどの絶滅の危機に瀕する里山の鳥類が安定的に生息しています。また「環境省特定植物群落」や「埼玉県レッドデータブック2011植物編」に「熊井のモミ林」として記載されている全国的にも希少なモミ群落が成立するなど、保全上重要な場所です。当該地に計画されている太陽光発電事業は、規模が小さくとも希少な植生や絶滅危惧種の鳥類の繁殖活動に影響を及ぼす可能性が大きいです。
熊井の森の自然環境に悪影響が及ばぬよう、埼玉県と調整を図りながら、当該地を特別緑地保全地区などの保護地域に指定することを要望します。

要望2.保全上重要な里山での太陽光発電事業を計画的に抑止すること

生物多様性基本法では、開発行為にあたっては、計画の立案を含む早い段階からの環境影響評価と生物多様性の保全への配慮を行うことが述べられています。基本法に即し、町内の自然環境基礎調査をすすめ、太陽光発電事業による開発行為を抑止すべき生物多様性保全上重要な地域を具体的に特定し、その結果を公表することを要望します。
また、現在の国や埼玉県の環境影響評価制度では、太陽光発電事業のほとんどを占める2MW(約3ha)未満の計画については対象外となっています。小規模であっても生物多様性に大きな影響を与える可能性がある事業を抑止できるよう、「鳩山町太陽光発電施設の設置に関する要綱」をもとに、より法的拘束力の強い「条例」を新たに定めることを要望します。また、生物多様性の保全上重要な里山での開発を未然に防ぐために、特に重要な里山が保安林・鳥獣保護区・文化財等に指定されるよう県に要請していただくことを要望します。

要望3.里山を活かした地域づくりを進めること

日本政府は現在、生物多様性の保全と持続可能な資源利用との両立が図られてきたわが国の里山の姿を、「SATOYAMAイニシアティブ」として国際的に発信しています。里山での伝統的な営みが全国的に危機的状況にあるなかで、熊井の森のように地権者や地元市民団体の手により生物多様性が豊かに残されている里山の存在は重要です。
このような場所を持続可能な社会モデルの場として位置づけ、里山を活かした地域づくりをすすめていくための具体的な政策展開を行っていただくことを要望します。既に昨年策定された鳩山町の都市計画マスタープランにおいても「里山としての自然の維持」、「自然を活用したレジャー機能の形成」が街づくりの理念として書かれています。今後はさらに総合計画等においても、熊井地区を含む里山のもつ、経済・福祉・教育の面での価値を十分に位置づけ、里山を活かした地域づくりの政策を具体化していただくことを望みます。また、そのためにも、自然資源の保全と活用を主眼とした環境基本計画および生物多様性地域戦略の策
定を早期に進めていただくことを要望します。

本件に関する問い合わせ先:

公益財団法人 日本自然保護協会 高川晋一
東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
tel03-3553-4105
公益財団法人 日本野鳥の会 葉山政治
東京都品川区西五反田3丁目9-23丸和ビル3F
tel03-5436-2633
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
草刈秀紀・市川大悟
東京都港区三田1-4-28三田国際ビル3階
tel03-3769-1713

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