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2019.03.05

沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明を発表

沖縄のジュゴン保護に携わってきた環境団体として、辺野古新基地建設工事着手後に不明となったジュゴンの状況などに鑑み、絶滅が危惧される沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える声明を、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ジュゴンネットワーク沖縄とともに公表しました(2019年3月5日付)。

第三者の専門家による検証を行うことやジュゴンを国内希少野生動植物種に選定することなど5点を要望しました。

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琉球朝日放送「環境保護団体がジュゴン存続の危機を訴え緊急声明」
https://www.qab.co.jp/news/20190305111883.html

 

20190305_沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明(180KB)


2019年3月5日

 

沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明

 

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
北限のジュゴン調査チーム・ザン
代表 鈴木雅子
ジュゴンネットワーク沖縄
事務局長 細川太郎

私たちは沖縄のジュゴン保護に携わってきた市民グループとして、この度の辺野古新基地建設工事着手後に不明となったジュゴンの状況や、他の個体が直面する生存の危機に鑑み、絶滅が危惧される沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える。

名護市東海岸に位置する嘉陽地先は、ジュゴンが棲む海として地元ではよく知られ、集落の歴史が記された字誌にもその名前が登場する。この嘉陽海域では、1990年に生後間もないジュゴンが刺網に混獲され、また、1998年には親子3頭のジュゴンが確認されたことなどから(琉球新報)、同海域はジュゴンの出産海域として推測される。また、1999年には求愛行動が確認されるなど(沖縄テレビ)、絶滅が危惧される日本産ジュゴンの重要な繁殖海域としても位置付けられる。

私たち市民グループは1998年からこの嘉陽地先においてジュゴンの食み跡調査を開始し、2007年からは毎年ジュゴンの食性調査を実施してきたが(北限のジュゴン調査チーム・ザン)、この20年間に同海域においてジュゴンの食み跡が観察できなかったことはなかった。1998年以降にジュゴンが確認されていた他の海域では、その後ことごとくジュゴンが確認できなくなったが、嘉陽地先では周年ジュゴンが確認され、また、官民のいずれの調査においても継続的にジュゴンによる餌場の利用が確認されてきた。私たちはこの海域が日本産ジュゴンの重要な生息地であることから、嘉陽という地名の公表も伏せてきた。

 

個体Aの状況:

ところが、昨年11月11日に同海域において食み跡を探索したが確認することができず、その後沖縄防衛局は11月28日に実施した環境監視等委員会において、10月以降の調査でジュゴンの個体Aが確認できなくなったことを報告した(2018年12月3日琉球新報)。私たちはその後も12月20日、22日、23日、2019年1月13日、20日と同海域においてジュゴンの食み跡を探索したが、11月以降にできたと考えられる新しい食み跡は確認することができなかった。

その後沖縄防衛局は環境監視等委員会(第18回)を平成31年1月22日に実施し、資料4「工事の実施状況」を同局のホームページに公表した。

その資料によると、沖縄防衛局が環境アセスメントで実施した航空調査によって、平成19年(2007)8月から名護市東海岸で確認されていた個体Aは、その後の調査によって平成30年(2018)9月までの11年間に継続して確認されていたが、同年10月以降の調査からその姿は確認できなくなった。また、個体Aが餌場として利用していたと推測される嘉陽地先の海草藻場では、同年10月16〜17日に同局が実施した調査によって25本の食み跡が確認されたが、以後の調査から新しい食み跡は確認されなくなり、同局は個体Aが嘉陽周辺海域の海草藻場を利用しなくなったと推測した。

沖縄防衛局はこの資料の中で個体Aが嘉陽地先から姿を消した要因として新基地建設工事による影響について考察し、捨石投入など最も大きな騒音や振動が発生した平成29年11月から平成30年8月の期間においても個体Aが嘉陽地先で確認され、一方、個体Aが確認されなくなった頃の騒音や振動は、そのピーク時以下のレベルであったとし、建設工事による影響を否定した。

しかし、平成30年11月28日に実施された環境監視等委員会(第17回)の資料2「平成29年度事後調査報告書について」の「ジュゴン確認位置(事業実施区域周辺)」(86p、87p)を見ると、個体Aは同局が調査を開始した平成19年度(2007)から平成26年度(2014)までは大浦湾の湾口にしばしば姿を見せていたが、平成27年度(2015)以降大浦湾の湾口に姿を見せる頻度が減るとともに、確認される場所が辺野古崎から離れるように徐々に東南へ拡大し、平成29年度(2017)にはかつて記録の無い東南海域まで達するようになった。湾口に姿を見せなくなった平成27年度は、沖縄防衛局が大浦湾に多数の警戒船を航行させ、トンブロックを投入し、立ち入り制限を示すブイを設置し、ボーリング調査を実施し、護岸工事に着手した時期と重なり、それまで大浦湾で確認されていた個体Cが確認できなくなった時期でもある。また確認場所が辺野古崎から離れ、かつて記録の無い東南海域まで拡大した平成29年度は、本格的な護岸工事が開始され、沖縄防衛局が捨石投入など最も大きな騒音や振動が発生したとする時期と重なる。これらの状況を客観的に判断するならば、個体A及び個体Cは新基地建設工事の影響を徐々に受け、行動範囲を変えていたが、個体Cは平成27年6月から避難し、個体Aも平成30年10月から工事区域周辺から避難するに至ったと考えるのが合理的である。

沖縄防衛局は環境アセスメント準備書の中で、個体Aは「環境省による平成15年11月以降の調査においても同海域にて確認されており、嘉陽沖を中心とした安部崎からバン崎にかけての沖合5kmの限られた範囲内に定着している」と定着性を強調していたが、沖縄防衛局は自らが行なった新基地建設工事によって、個体Aを唯一の安住の地であった嘉陽海域から追い出す結果となった。

一方、環境省はジュゴンの保護対策を検討する目的で、平成13年度(2001)から平成17年度(2005)にかけて、ジュゴンと藻場の広域的調査を実施し、平成15年(2003)11月に尾ビレに切れ込みのある個体(環境アセスメント調査以降に沖縄防衛局が個体Aとする個体)を初めて個体識別し、平成17年度までの調査期間中に同じ個体を計7回確認した。なお個体Aは個体識別された平成15年11月には既に成獣だったことや、私たちが調査を開始した平成10年(1998年)には既に嘉陽地先では食み跡が確認されていたことから、定着性が強い個体Aが嘉陽地先を拠点に生息していたのは、少なくとも20年前の平成10年(1998年)以前からと推測される。

環境省はジュゴンと藻場の広域的調査の一環で、嘉陽地先においてラジコンヘリによる空撮調査、陸上からの24時間行動観察調査、マンタ法+マーキングによる継続的なモニタリングなどを実施し、ジュゴン生息地としての嘉陽海域の重要性を明らかにした。また、同省は平成16年(2004)第159回国会において、調査の結果、ジュゴンは沖縄本島の周辺海域での確認頭数が極めて少なかったことから、種の保存法の国内希少野生動植物種選定要件に該当すると認め、平成23年(2011)には地元の名護市議会もジュゴンを国内希少野生動植物種に選定するよう環境大臣及び法務大臣に意見書を提出したが、同省は国内希少野生動植物種への指定を行わず、開発行為からジュゴン及び生息地を守る手立てを行わないまま現在に至った。今回定着性の強い個体Aが生息地を追い出されるという事態を招いたが、日本産ジュゴンの存続の危機や生息地としての嘉陽海域の重要性を認識していた環境省は責任を逃れることはできない。

定着性の強いジュゴンが生息地を追い出された場合、他のジュゴンとの餌場の競合や、不慣れな海域での混獲死亡事故のリスクが懸念され、それでなくとも絶滅が危惧される日本産ジュゴン個体群の絶滅リスクがさらに高まったと推測される。

 

個体Cの状況:

環境省は2001〜2005年にかけてジュゴンと藻場の広域的調査を実施し、このうち2003年7月に行った調査によって最小発見個体数を5頭とした(環境省2004)。なおこの5頭は全て成獣と思われたこと、また1998年から2002年までに計6頭の死亡が確認されており、これらのジュゴンが生存していたと考えられる1998年11月時点での最小個体数は11頭となる。しかし、実効性のある保護対策が取られないままジュゴン保護は放置され、2008年に実施された辺野古新基地建設に伴う環境アセスメントの調査で確認できた個体数はわずかに3頭だった(沖縄防衛局2009)。

この3頭は個体A、B、Cと識別され、個体Aは前述の通り辺野古新基地建設工事着手後に不明となった。また、個体B、Cは母子と考えられ古宇利島沖を拠点に東海岸まで移動していた。その後個体Cは2009年頃から単独で行動するようになり、親離れしたと考えられ(沖縄防衛局2011)、大浦湾にしばしば姿を見せた。同じ時期(2009〜2015年)大浦湾では沖縄防衛局の調査で49本、私たち市民グループの調査で238本(累計)の食み跡が確認された(細川2018)。これら大浦湾で確認された食み跡について沖縄防衛局は評価書(6-16-172)(沖縄防衛局2012)の中で「個体Cによるものと考えられます」と個体Cが大浦湾を餌場として利用していたことを認めたにもかかわらず、個体Cの重要な餌場の存在を無視するように護岸工事に着手し、その結果前述の通り、2015年以降個体Cもまた消息不明となった。

 

個体Bの状況:

個体Bが確認される古宇利島周辺海域では、現在沖縄戦当時のものと思われる不発弾の存在が確認されており、私たち市民グループはジュゴンやサンゴ礁生態系にダメージを与えない処理を行うよう沖縄県に求めているが、未だ処理方法が確定していない。仮に従来通りの不発弾の海中爆破処理が実施された場合、日本産ジュゴン個体群の存続にかかわる重大なダメージを与えることが懸念される。
以上の理由から、私たちは次のことを要望する。

    1. 本環境アセスメントの環境保全図書では「工事の実施後は、ジュゴンの生息範囲に変化が見られないか監視し、変化が見られた場合は工事との関連性を検討し、工事による影響と判断された場合は速やかに施工方法の見直し等を行なうなどの対策を講じます」と記載されている。沖縄防衛局は個体A及び個体Cが確認されなくなった要因について工事の影響はないとしているが、上記の通り工事の影響は明らかであることから、沖縄防衛局は速やかに工事を中止すること。また、環境省は沖縄防衛局に対して速やかに工事を中止するよう指導すること。
    2. 沖縄防衛局は、本工事によるジュゴンへの影響やジュゴンの調査について、工事や調査に携わる業者から過去に寄付を受けていた委員らで構成される環境監視等委員会ではなく、第三者の専門家による検証を行い、透明性を確保し検証結果を公表すること。なお専門家については、例えば、粕谷俊雄氏、エレン・ハインズ氏、アマンダ・ホジソン氏、ヘレン・マーシュ氏、Marine Mammal Commission (https://www.mmc.gov/)などを推薦する。
    3. 環境省及び沖縄防衛局は、個体A及び個体Cが辺野古新基地建設工事着手後に不明となったことから、これらのジュゴンの消息について調べるための沖縄島及び周辺離島を含む広域調査を緊急に実施すること。
    4. 環境省は、速やかにジュゴンを国内希少野生動植物種に選定すること。
    5. 沖縄県は、以前から指摘されていた海中不発弾の処理に関する検討会について、処理に関わる関係機関及び海生哺乳類やサンゴ礁保全などの研究者、また、漁業者や観光業者、そして私たち市民グループを交えた形で実施すること。

※ なお防衛省、沖縄防衛局、環境省及び沖縄県には後日別途要望書を提出する。

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