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2019.01.25

奄美大島嘉徳海岸の陸と海の連続性を保全することについての要望書を提出

全国で砂浜生態系が失われつつあります。奄美大島にある嘉徳(かとく)海岸には、海から陸、川から砂浜までがひとまとまりに残されている貴重な砂浜があります。

日本自然保護協会は、この砂浜生態系のまとまりを保全することを求めて活動してきました。2018年秋に行った甲殻類調査の結果がまとまりましたので、鹿児島県知事に要望書とともに提出しました。

調査では希少種の発見や琉球列島の砂浜環境に生息する3種のスナガニ類のすべてが嘉徳海岸に生息していることが確認されました。

20190109_奄美大島嘉徳海岸の陸と海の連続性を保全することについての要望書(PDF・128KB)


2019年1月9日

鹿児島県知事 三反園 訓 殿

公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章

 

奄美大島嘉徳海岸の
陸と海の連続性を保全することについての要望書

鹿児島県は、全国3位の海岸延長があり、さまざまな海岸線は県を特徴づける貴重な財産となっています。しかし、海岸線のうち自然海岸は全国的に減少傾向にあり、なかでも自然海岸の約2割しかない砂浜はさらなる減少が顕著です。鹿児島県では、1970年代に比べ2000年代は、砂浜が218.4ha、砂丘植生が666.5ha、それぞれ縮小しています。

そのなかで、嘉徳海岸は奄美大島でも数少ない人工物のない自然のままの砂浜生態系が残されている海岸です。世界的に絶滅が危惧されているアカウミガメとアオウミガメが産卵し、2002年にはウミガメの一種オサガメが産卵したことが記録されています。オサガメの産卵記録は日本ではこの事例だけであり、世界の最北端の産卵場所として記録されたものです。また嘉徳海岸に流れ込む嘉徳川は自然度が高く、環境省レッドリストの絶滅危惧IA類 (CR)であるリュウキュウアユが生息し、産卵することが知られています。

2017年と2018年に日本自然保護協会が海の生き物を守る会らと行った調査では、60種以上の生物種が記録され、これまでの調査と合わせると特に貝類の多様性が高く、432 種(腹足綱 318 種,ツノガイ綱 2 種,二枚貝綱 112 種)の貝類が確認され、そのうち環境省及び鹿児島県のレッドリストに登載された種が31 種あることが明かにされました。

2018年9月に日本自然保護協会は、藤田喜久氏(沖縄県立芸術大学)の協力を得て甲殻類の調査を実施しました。採集・記録された十脚甲殻類のうち,ヒメヒライソモドキ は,鹿児島県のレッドデータブックの「絶滅危惧 II 類」に、ヤエヤマヒメオカガニ・ケフサヒライソモドキ・カワスナガニの 3 種は「準絶滅危惧」に、ヨコヤアナジャコ・ムラサキオカヤドカリ・オカヤドカリ・ナンヨウスナガニの 4 種は「分布特性上重要」に、それぞれ区分されている希少種です。

今回の調査で特筆すべき点の一つは、河口域の砂干潟および砂泥底にて、アナジャコ科のコヨヤアナジャコとコメツキガニ科のリュウキュウコメツキガニが採集されたことです。嘉徳川河口付近には、これらの 2 種の生息を可能にする良好な干潟環境が極めて限られて分布していることが報告されています。また、河口域の河床転石帯には、鹿児島県のレッドデータブックに掲載されているヒメヒライソモドキ、ケフサヒライソモドキ、カワスナガニも高密度で生息していることが確認されました。

一連の調査結果から、嘉徳川が流れ込み、海浜植物帯、オカヤドカリ生息地、ウミガメ産卵地と続く自然度の高い砂浜生態系が生物多様性の高さを支えていることが伺えます。そして、河川から砂浜と海岸林から砂浜までのいずれにも人工物がなく、砂浜生態系の連続性が広範囲に保たれていることは嘉徳海岸の特徴であり、たいへん貴重といえます。

現在、鹿児島県により嘉徳海岸侵食対策事業として長さ180mの護岸建設が予定されており、同事業の実施により海と陸の連続性が壊されることが危惧されます。
砂丘はそれ自体が防災効果を持つものであり、防災・減災については、国際的には、巨大防潮堤などの人工構造物ではなく生態系を基盤にした防災・減災(Eco-DRR:Ecosystem-based Solutions for Disaster Risk. Reduction)の考え方、つまり自然が持つ力を利用した方法が注目されています。自然の緩衝材は往々にしてコンクリートの構造物よりも、高い防災効果を発揮することがあらためて確認されています。

鹿児島県には防災と生物多様性が両立できるEco-DRRなどの先進的な取り組みを行い、財産である自然海岸を大切にしていただくことを強く要望します。

以上

添付:
20190106_調査報告/奄美大島嘉徳海岸の陸棲・半陸棲十脚甲殻類相(PDF・1.1MB)

参考:
・日本自然保護協会(2018)奄美大島・嘉徳海岸侵食対策事業の検討委員会に関する意見
・向井宏、志村智子、安部真理子(2018)嘉徳海岸の生き物調査報告
・山下博由、向井宏(2018)鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳海岸の貝類相の特徴と保全の必要性
・海の生き物を守る会(2017)鹿児島県大島郡瀬戸内町嘉徳海岸の環境保全についての要望書及び添付資料
・環境省自然環境局生物多様性センター(2018)平成29年度 自然環境保全基礎調査沿岸域変化状況等調査業務報告書
・環境庁自然保護局(1998)第5回自然環境保全基礎調査海辺調査総合報告書


嘉徳ビーチ(写真)

▲ 人工物のない、「奄美のジュラシック・ビーチ」と呼ばれ地元でも愛されている嘉徳海岸。

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