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伊豆高原メガソーラーパーク(仮称)発電所建設に関して行政指導を求める要望書を提出しました

2018.08.13
要望・声明

各地でメガソーラー発電所計画が引き起こす自然破壊が問題になっています。静岡県でも県内最大規模のメガソーラーの開発計画が進みつつあり、要望書を提出しました。

伊豆高原メガソーラーパーク(仮称)発電所建設に関する要望(PDF 404KB)


30日自然 第37号
2018年8月13日

経済産業大臣 世耕 弘成様

 

伊豆高原メガソーラーパーク(仮称)発電所建設に関する要望

 

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

 

公益財団法人日本自然保護協会は、創立以来60年余にわたり、生物多様性豊かな日本の自然環境の保全に取り組んできた団体です。近年、大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設による自然破壊の相談や情報が各地から多数寄せられています。

その中の一つ、静岡県伊東市で計画された伊豆高原メガソーラーパーク(仮称)発電所建設事業は、事業面積約104ヘクタール(造成面積:約45ヘクタール、残置森林面積:約59ヘクタール)という大面積の事業計画です。開発予定地には、環境省のレッドリストで絶滅危惧種Ⅱ類に指定され、絶滅の危機に瀕しているミゾゴイが生息しています。ミゾゴイは世界では日本でのみ繁殖する鳥類で、我が国が特に責任をもって保全すべき生物種のひとつです。また、樹冠が閉じて薄暗く湿潤な谷地形に好んで営巣するミゾゴイが生息するということは、地域の環境の多様性や、森林の生物の豊かさを示しています。環境省も本種の保全の重要性から、平成28年6月に「ミゾゴイ保護の進め方」を作成し、開発にあたってその保護の指針を示しました。しかし、本開発計画では、「ミゾゴイ保護の進め方」に準拠した調査や十分な対策が行われていません。

本事業では、地域住民から景観や環境破壊を懸念した反対運動が起きているだけでなく、基礎自治体である伊東市も事業者に、事業の白紙撤回を申し入れています。また、伊東市では「伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例」を策定していますが、そのことを事業者は認知しているにも関わらず、条例には該当しないという姿勢でいます。県内最大規模である本事業に対して静岡県知事は条件を付けて林地開発を許可しましたが、「事業者はエネルギーという公益なものを担うだけの規範があるか深い疑念があるが、書類上問題がなければ条件は満たしていると言わざるを得ない」と述べたと報道されています。これらのことから、本事業は現在に至るまで地域との合意形成がなされたとは言えない状況です。そのため、環境破壊への懸念を払しょくし、合意が得られてから事業を進めるべきであると考えます。こうした状況にも関わらず、事業者は工事に着手し、伊東市が現場で条例違反による作業停止を口頭で指導したにもかかわらず強行したため、書面で指導を通達したことが報道されました。

このような事業を認めることは、再生可能エネルギーの推進にもマイナスに作用すると考えられることから、所管官庁である経済産業省に、以下2点の行政指導を強く要望します。

1)ミゾゴイについて、環境大臣と協議し保全に努めること。
2)地域との合意形成がなされてから事業を進めること。

本事業に限らず、再生可能エネルギーの推進は、地球温暖化という生物多様性の危機への対策になるべきものですが、その開発行為自体が生物多様性の危機になっては本末転倒です。そうした事態にならないよう、所管官庁としての対応を求めます。

以上

 

参考資料
ミゾゴイ保護の進め方(環境省、平成28年6月)
伊豆高原メガソーラーパーク発電所(仮称)建設計画等伊東市における太陽光発電所建設に伴う開発行為に対する反対決議(伊東市議会、平成29年7月)(PDF 146KB)
伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例(伊東市、平成30年6月施行)
伊東のメガソーラー 建設計画 知事、林地開発を許可 規制条例適用か焦点に(毎日新聞、平成30年7月3日)
伊東・八幡野メガソーラー計画 事業者が「着工」、市は行政指導(静岡新聞SBS 平成30年8月11日)

(担当)公益財団法人日本自然保護協会(辻村、松井)
〒104-0033東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
tel.03-3553-4101 tsujimura@nacsj.or.jp


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