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【配布資料】今日からはじめる自然観察「知ってるようで知らないカモの世界」

2016.12.28
解説

ページ画像

【今日からはじめる自然観察】知ってるようで知らないカモの世界(PDF/2.3MB)
<会報『自然保護』No.555(2017年1・2月号)より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

冬になると、平たいくちばしでずんぐりした体型の鳥が池に浮かんでいるのをよく見かけませんか。
今回は、水辺の鳥の中でも、マガモ属の鳥(以下、カモ)に注目して、観察のポイントをご紹介します。

小田谷嘉弥 (我孫子市鳥の博物館 学芸員)


優れた飛行能力

北半球では、カモは多くの種が夏に北方で繁殖し、越冬のために南方へ渡ります。日本で冬を過ごすオナガガモやコガモは、ロシアの東部などから長い距離を渡ってきていることが、足環や発信器による調査から分かっています。

マガモが飛ぶ速さは、およそ時速70㎞(水平飛行時)にもなります。地上を歩いているときには鈍臭く見えるカモですが、その翼は優れた飛翔性能を持っているのです。カモは昼間にも渡っている姿を見ることがありますが、主に夜間に渡りをします。

寒さに対する強さの秘密

冬のカモは、氷が張るような冷たい池にも浮かんでいます。こうした場所でも平気なのはなぜでしょうか? その秘密は、羽毛の密度と尾羽の付け根から出す脂にあります。カモの胸から腹にかけては、羽毛が密集して生えており、その内側には綿羽(ダウン)がびっしりとすき間を埋めています。

さらに、羽毛に尾脂腺から出る脂をくちばしで塗りつけることで、羽毛のはっ水性を保ち、体が水にぬれるのを防いでいます。これらの機能によって、防寒と防水を同時に達成しているのです。

ヨシガモの尾脂線の写真

夜はどこに行く?

昼間にカモを観察していると、多くの種が休んでいる時間が長いことに気が付きます。実はカモのほとんどの種が夜行性で、昼間の時間は主に休息にあてているからです。多くのカモは、日が暮れると、昼間の休み場から夜間の餌場である水の入った田んぼや沼地へ向かって飛んでいきます。稲刈りの終わった水田は、収穫の際にこぼれた落穂がたくさんあるため、カモにとってよい餌場になります。

餌は落穂のほか二番穂、草の実や葉など。沼地などの水辺では、水面にくちばしをつけて泳ぎながら、水ごと吸い込んだ餌をこし取って食べます。逆立ちして水底の水草などを食べるものもいます。

日没前後に「ヒュヒュヒュ……」と特徴的な羽ばたき音が空から降ってきたら、餌場に向かって飛んでいくカモの姿を想像してみましょう。

公園にいるオナガガモノの昼と夜の写真

水田で採食するカルガモの写真

換羽と求愛行動

カモの雄は子育てをまったく手伝いません。冬の間、雄は雌より鮮やかな羽毛をまとっていますが、雌との交尾が終わると繁殖地の近くで目立たない羽毛に生え換わります。この姿をエクリプスといいます。秋に日本に渡ってきたばかりの雄は、エクリプスのままですが、徐々に羽毛を生え換えて、冬の中ほどまでにはまた鮮やかな羽毛(生殖羽)を獲得します。

美しい生殖羽を獲得すると、求愛行動が始まります。雄が雌に求愛するダンスは、マガモ属ではある程度共通していて、くちばしで水をはね上げ、鳴きながら上体を持ち上げる(または、尾羽を上げる)動作はどの種でもよく見られます。

春が近づくにつれ、つがいで行動する個体が増えていき、繁殖地まで一緒に渡っていくと考えられています。これからの季節は、カモの求愛行動を頻繁に観察できます。

エクリプスのコガモと、生殖羽に換わったコガモの写真

集団で雌に求愛行動を行う雄の写真

クイズ:オナガガモの雌はどれ?


クイズの答え:③
①雄の成鳥、②雄のエクリプス、③雌、④雄の幼鳥
雄の脇の羽は、冬は灰色になり、夏も少し灰色が残る。また、雄の成鳥はくちばしの色が灰色と黒がくっきりと分かれ、雌は境目が不明瞭、幼鳥は個体差がある。

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