日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

  • 文字サイズ

海辺・干潟・湿地環境の保全

Home なくなりそうな自然を守る 海辺・干潟・湿地環境の保全 ニュース&トピックス 多摩川河口干潟の羽田横断道路、都市計画(案)に反対します。

海辺・干潟・湿地環境の保全 ニュース&トピックス 一覧に戻る

2016.09.30

多摩川河口干潟の羽田横断道路、都市計画(案)に反対します。


広々とした多摩川の河口干潟

東京湾に残る、貴重な河口干潟である多摩川河口干潟を横断する橋が計画されています。この自然が重要なものであることは、川崎市も総合計画の中で位置付けていますが、今回縦覧された都市計画(案)の理由書では、その点がふれられていません。
また、本案の上流には今年計画が決定した橋の改修と、下流に今年着工されたトンネルの計画がありながら、新たに追加されるもので、計画性が危惧されます。都市計画の理由書として必要な情報が記載されていないという考えから、日本自然保護協会はこの案に反対意見を提出しました。




多摩川河口干潟に計画された羽田横断道路
都市計画(案)「川崎都市計画道路の変更(3・4・29号殿町羽田空港線の追加)」に対する反対意見

2016年9月30日
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章

(案件名)川崎都市計画道路の変更(3・4・29号殿町羽田空港線の追加)

日本自然保護協会は、日本全国で65年にわたり自然保護活動を行ってきた公益財団法人です。「自然の力で、明日をひらく。」を活動理念として、くらしを支える日本の自然の豊かさを守り、その価値を広め、自然とともにある社会をつくることを目指しています。

多摩川河口は、川崎市民にとって自然とのふれあいの場であり、多くの生態系サービスの供給源として非常に重要な価値を持っています。日本自然保護協会の環境教育の主軸である自然観察会のボランティアリーダー「自然観察指導員」が長年活動してきたフィールドでもあり、重要な自然環境として、当協会として関心を持ってきた自然環境のひとつです。

以上の立場から、現在縦覧されている川崎都市計画道路の変更(3・4・29号殿町羽田空港線の追加)案に対して意見を述べます。当協会としては、以下の理由から、現在の都市計画(案)には反対いたします。

 

理由書には、本案は「川崎市総合計画では、臨海部の活性化の取り組みの一つとして」の基盤整備とあります。

川崎市は、川崎市総合計画で「臨海都市拠点としての機能の形成に向けた取組を推進する必要がある」としています。同時に、現状と課題として「川崎殿町・大師河原地域に隣接する多摩川リバーサイド地区は、羽田空港や貴重な自然資源である多摩川と近接するなど恵まれた地域特性を有しているため、これらを活かしながら産業基盤の高度化や機能強化、また円滑な土地利用転換の支援などを進め、良好な都市機能を形成することが重要」としています。

東京湾の干潟は、過去の10%程度しか残存していません。そのなかでも多摩川河口干潟は、東京湾に残存する河口干潟としては塩性植物群落が残る唯一の場所です。

プランクトンからゴカイ類、貝類、藻類、魚類、渡り鳥に至る多様な生物で構成される生態系は、水質の浄化、都会の中で本物の自然に触れられる自然観察や散策の場などとして、多くの生態系サービスを供給しています。豪州各地などから渡ってくるオオソリハシシギ、東京湾では絶滅したと考えられていたアサクサノリ、2014年に国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種(EN)にリストアップされたニホンウナギをはじめとする、多くの渡り鳥や、底生生物が生息する自然環境は、川崎市民にとってかけがえのない重要な環境です。このような自然が、日本の玄関口である羽田空港の直近に立地していることは奇跡的です。東京湾唯一である、多摩川河口の自然資源を活かしながらの都市計画である記載が、理由書には不可欠です。

本案については、環境影響評価の手続きがまさに同時並行で行われており、川崎市総合計画にあるような地域特性を活かしながらの都市計画であることが担保されているとは考えがたい状況です。貴重な自然資源を活かしながらの計画にする場合、このエリアのもっとも重要な自然である河口干潟と河口干潟を生息環境とする生物への影響を回避することが必須ですが、そのための道路の位置と構造についての記載が、理由書には見られせん。

 
東京湾は、2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックでも多くの人々が世界中から訪れます。高密度に都市化された湾岸で、広大な河口の景観と野鳥を観察ができる環境は、他地域にはない個性ある臨海都市の発展のための重要な資源です。多摩川河口干潟がここにあるのは地理的な必然性によるものです。都市計画道路だからこそ、そうした自然の必然性を考慮した計画がなされるべきと考えます。

 
また、本案の上流部には、今年2016年3月に変更が告示されたばかりの川崎都市計画道路「1・4・1号横浜羽田空港線」があります。この「1・4・1号横浜羽田空港線」の都市計画変更では以下のような理由が述べられています。

「本案の都市計画道路横浜羽田空港線は、首都圏の自動車交通の大動脈として、人や物流の交通を支える主要幹線道路の一つであり、昭和39年6月の都市計画決定以来、現在までに総延長約6,560mが完成しております。

本路線のうち、川崎区大師河原字上殿町耕地を通る区間にある高速大師橋は、昭和43年11月に開通して以降、40年以上が経過しています。累積する自動車交通量により、構造物の損傷が多く、補修、補強を繰り返し行っておりますが、今後の長期的な安全性を確保するための抜本的な対策として、高速大師橋の更新(造り替え)が必要です。当該橋梁の更新に際しては、現行の道路構造令の基準に則した道路幅員に変更する必要があるため、都市計画道路横浜羽田空港線の川崎区大師河原字上殿町耕地先の約240mの区間について、都市計画区域を変更するとともに、都市計画法施行令の一部を改正する政令(平成10年政令第331号)の施行に伴い、車線の数を定めるものです。」(都市計画道路の変更(横浜羽田空港線)の告示の概要

一方、本件の理由書には、前述の「1・4・1号横浜羽田空港線」の理由書にあるような具体性のある理由が記載されていません。

「国家戦略特別区域の目標を達成するプロジェクトの一環」であればプロジェクトの達成すべき目標を明記すべきであり、「必要な都市・交通基盤施設の整備等に取り組む」のであれば、どのような都市・交通基盤が必要とされているのかを具体的に記載するべきです。

さらに、本案の下流には、国道357号線東京湾岸道路(多摩川トンネル)の建設も始まっています。同時期に、同じ多摩川河口エリアに道路計画が同時並行で進行する中で、さらに新たな都市計画道路が必要である理由が記載されておらず、非常に計画性に乏しい都市計画であることを危惧します。

この理由書では、都市計画としての本案の位置や構造の必要性や妥当性が判断できません。理由書としての必要な情報が記載されていないといえます。

 
また、川崎市のウェブサイト(都市計画の決定及び変更までの流れ)には、「公述の申し出があった場合に公聴会を開催し、都市計画の素案について意見を述べていただき、都市計画の案に反映させます。」とあります。

2016年7月2日に開催された本案件の公聴会では、上記のような意見のほか、計画地周辺住民の方からも多くの意見が述べられました。しかし、本案の都市計画には、公聴会で述べられた公述人の意見が反映されていません。

以上


関連リンク先

海辺・干潟・湿地環境の保全 ニュース&トピックス 一覧に戻る