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2016.09.01

【配布資料】今日からはじめる自然観察「おいしい実 危ない実」

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【今日からはじめる自然観察】おいしい実 危ない実(PDF/1.91MB)
<会報『自然保護』No.553(2016年9・10月号)より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

みのりの季節。野山にも、自然が育んだ甘くておいしい実が熟しました。

山の動物や鳥たちの大切なご馳走ですが、ちょっぴりおすそ分けをいただきましょうか。

でも気をつけて。うっかり食べると危ない実も……。


自力で動けない植物は、タネ(種子)という小さく頑丈なカプセルで旅をします。タネを果肉にくるんで鳥やけものに食べさせるのも作戦のひとつ。こうした種子散布の仕組みを「被食(周食)散布」と呼んでいます。

熟した実の目立つ色や香りは、「食べてね」という誘いです。タネ自体は砕かれたり消化されたりしないように硬い殻などで守られ、動物の消化管を通って体外に出されます。

 

鳥を誘う実、けものを誘う実

こうした実を好んで食べるのは、サルやタヌキ、テンなどのけものと、ヒヨドリやツグミなどの鳥です。けものは嗅覚が鋭くて味にうるさく、鳥は色に敏感で実を丸呑みします。

けもの目当ての実は香りがよく、熟すと落下するのが特徴です。地味な色に熟すものも多いです。

鳥を誘う実は赤や黒など目立つ色で着飾り、樹上に長く留まります。鳥は丸呑みするので、鳥の口に入るような丸い一口サイズで、味はまずくても何とか大丈夫のようです。

糞を調べると誰が何の実を食べたかが分かります。キイチゴ類やクワ、ムクノキの実などは、鳥とけもの両方が食べてタネを運びます。

 

食べてね、でも、ちょっとだけよ

正月に飾るナンテンの実は有毒です。マムシグサの実も有毒で口にすると大変な目に遭います。でも、考えれば不思議。実を食べてもらいたいのに、なぜ毒で阻止するの?

庭に来るヒヨドリはたわわに実ったナンテンの実を少しだけ食べると飛び去りました。そうか。もしいくらでも食べ続けられるなら、木の真下に糞の山ができて、タネもまとめて出されてしまう。鳥が少しずつ食べるから、タネは時間的にも空間的にも広い範囲に運ばれる。実が毒だったりまずかったりするのは、植物の作戦なのです。「食べてね、でも、ちょっとだけよ。」というわけです。

 

では、おいしい実は?

クワやサクランボなどおいしい実は、全部一度には熟さず、少しずつ色を変えて熟します。鳥は必然的に、熟した分だけ少しずつ食べるのです。ここでも、「ちょっとだけよの法則」が成り立っています。

キウイフルーツや同属のサルナシは果肉にタンパク質分解酵素を含んでいます。私は山でどんぶり半分ほどサルナシを食べたら甘みを感じなくなり、酸っぱくなって食べるのをやめてしまいました。舌の味蕾(味を感じる器官)が酵素で溶かされたのです。大食漢のサルも同じ目に遭うでしょう。世界を見渡すと、果実食のサルの分布域でパパイヤやパイナップルなどタンパク質分解酵素を持つ実が独立して進化しています。舌の肥えたサルに対して、「ちょっとだけよの法則」を成り立たせる作戦が、果肉にタンパク質分解酵素を持つことだったのでしょう。
 
 
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多田多恵子 (植物生態学者)


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