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2016.05.27

環境省の『重要海域』の抽出に対する意見

本日(5月27日)、環境省が4月23日に公表した「重要海域」に対して、日本自然保護協会は、日本の重要海域が適切に設定され、効果的な生物多様性保全が進むことを強く希望する立場からの意見書を、環境大臣あてに提出いたしました。


環境省重要海域抽出への意見書(PDF,180㎅)


                               2016年5月27日

環境省の『重要海域』の抽出に対する意見

                         公益財団法人 日本自然保護協会
                                理事長 亀山 章
環境省は平成28年4月23日に、生物多様性保全の観点からの重要度の高い海域(『重要海域』)の区域線を公表したが、その前提となる重要海域の抽出方法や重要海域の見直しの体制については問題がある。日本自然保護協会は、日本の重要海域が適切に設定され、効果的な生物多様性保全が進むことを強く希望する立場から、以下の事項について要望する。

1.生態学的に意味のある区域線の設定や区域の抽出を行うこと

重要海域抽出の際の区域線は、基本単位に5kmのグリッドを用いているが、この区域線では十分に生態学的な意味を反映することが出来ない。例えば海岸線やサンゴ礁のイノーなどのような重要な区域線が考慮されていないことが問題の例としてあげられる。一般にBioregionの区域線は、生態学的、地理学的に意味があるように設置することが重要である(WRI / IUCN / UNEP ,1992)。また特にサンゴ礁海域において、グリッドの5kmという距離は大きすぎ、海域の特性を十分に表現できていないため、より小さな単位での解析が必要である。

2.委員の専門分野のかたよりを是正すること

重要海域抽出のための検討会の委員の専門分野をみると、生物学や生態学、水産学が多く、地理学、地形学などの分野の専門家が不在である。生物多様性を検討するうえで、生物学、生態系、水産学等の分野は大事であるものの、生物多様性の基盤をなす地理学、地形学などの分野の知識も必須である。今後の検討を行うメンバーに加えていただきたい。

3. 生物多様性を測ることができるデータをより積極的に得ること

今回の抽出にあたり、水産資源のデータが多く用いられている。水産資源は生物多様性の一部を成すが、生物多様性の全体像は水産資源のデータのみでは測れない。水産学以外の分野のデータを得るように環境省が積極的に働きかけを行うことを要望する。

4.あらゆるデータを用いること

これまでにさまざまな場所にて開発に伴い環境影響評価が行われている。また浅海域や干潟などでは市民の手で調査が行われている場合も多い。これらの結果も含め、入手可能なあらゆるデータを用いて重要海域の抽出を行うことが望ましい。

5.新たなデータが出た場合には、重要海域の見直しを常に行えるような体制にすること

海に関しては現段階では十分な科学的データが揃っていないが、新しい発見も多くある。今後、新しい知見が得られた場合には、重要海域の選定の修正に素早く対応できる体制を取ることが大切である。
 重要海域抽出検討会においても平成23-25年度の作業で抽出された重要海域は、この時点において入手可能な情報に基づいて抽出されたものであることから、今後の海洋生物多様性に関する知見の充実や海洋環境の変化を踏まえることが大切であると認識され、10年後程度を目処として重要海域の見直しを行うとしている。しかし10年後の見直しでは海洋環境の変化や新たな発見に対応できないため、頻度を高くして対応できる体制を取ることを要望する。

6.市民調査を活かし、育てる体制を作ること

海の調査ができる人材は絶対数が少ないため、調査にかかわる人材の裾野を広げる必要がある。ビジターセンターのレンジャーや、地域のキーパーソン、地域の市民団体などの活用を通じ、市民にモニタリングの大切さを教え、調査への参加も出来るような人材育成システムの導入を検討することが望ましい。

7.省庁縦割りの解消

環境省だけではなく水産庁や国交省など他省庁をより積極的に関与・連携させ、国の戦略として位置づけること。環境省が検討会を設置して策定し、他省庁はオブザーバーに留まるという縦割りの戦略にとどまるのであれば、生物多様性国家戦略2010をはじめ、生物多様性条約第10回締約国会議で採択された愛知ターゲットを実現するものにはなりえない。

8.海洋保護区の設置をスピードアップして行うこと

日本自然保護協会が提出した提言書「日本の海洋保護区のあり方~生物多様性保全をすすめるために~」にて指摘したように、日本の海洋保護区とされているエリアの中で真に生物多様性保全に寄与していると言えるものは国土の0,03%以下である。愛知ターゲットで目標11として国際社会に約束した10%を達成するために、今回重要海域として抽出されたエリアを海洋保護区へと指定する手続きをスピードアップして行う必要がある。
≪参考≫
WRI/IUCN/UNEP(1992).Global Biodiversity Strategy.WRI, Washington, D.C./IUCN, Gland, Switzerland/UNEP, Nairoci, Kenya
日本の海洋保護区のあり方~生物多様性保全をすすめるために~(2012年5月17日)
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/wetland/2012/05/83.html

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