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那覇空港滑走路増設事業建設のための奄美大島からの石材の搬入に対する要望書

2016.01.08
要望・声明

2016年1月8日

沖縄県知事 翁長 雄志 様

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川 秀樹
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

奄美大島からの石材の搬入に対する要望書

那覇空港滑走路増設事業建設に向けた埋立に使う石材を奄美大島から搬入する届出が、沖縄総合事務局から沖縄県に提出されました。これは特定外来生物の侵入を防ぐため昨年11月1日に施行された県外からの埋め立て土砂などの搬入を規制する「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」の適用第1号となります。

今回届出を行った石材の特定外来生物の混入防止策について沖縄総合事務局は「今回の採石場で特定外来生物の生息は確認されなかった」として特別な防除策は講じないとしています。それに対し沖縄県は「専門家による採取地の調査などを含め、慎重に対処する」と報道されています。(琉球新報 2015年1月5日)。私たちも、沖縄の独特の自然環境の保全を目指す環境団体として、沖縄県による同条例を基盤にした、実質的かつ「慎重な対処」が必要であると考えます。

琉球列島のように希少な固有種が異なる島々に棲息するという特異な生態系を持つ島嶼域では、特定外来生物だけではなく、現時点において特定外来生物に指定されていない生物種についても慎重な対処が必要です。

環境省により2015年3月に公表された外来種被害防止行動計画の外来種被害予防三原則の中でも、悪影響を及ぼすおそれのある外来種を自然分布域から非分布域へ「入れない」ことが最も効果的、効率的な対策であり、侵略的外来種となり得る生物の利用は控えることが極めて重要であると記されています。

つまり現在の特定外来生物のリストは完璧ではなく、これまでに指定されていない生物種でも移動先の生態系に被害を与える懸念があるということです。そのため、外来生物法に基づく「外来生物(国外由来の外来種)」のみならず、「国内由来の外来種」も含め、人の生命・身体又は農林水産業に係る被害を外来種問題として取り扱っています。

沖縄総合事務局は、用いる石材について講じる対策として、採石場での石材洗浄や搬出前の目視確認をあげています。しかしながら、水での洗浄だけでは効果が高い方法とは考えられず、また目視確認についても、昆虫類や爬虫類および微小な土壌生物などは見逃しや捕獲が困難なケースが多いと考えられます。

小笠原諸島に導入されたグリーンアノールや本土にて分布域を拡大し続けているアルゼンチンアリなどの例をもってすれば、いったん侵入した生物の駆除が困難であることは推定できます。

2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10 回締約国会議にて採択された愛知ターゲットでも、個別目標9に「2020 年までに侵略的外来種を制御または根絶すること」があげられており、外来種の根絶は世界的にも関心を集める大きな問題です。特に、沖縄島や奄美大島などの島々における固有の生物種や生物亜種が生息する生態系の重要性をあげて、世界自然遺産登録を目指す沖縄島に対しては、沖縄島の独特の生物多様性を守るため、予防原則を取り入れた厳しい対応を求めます。

本件は、普天間飛行場代替施設建設事業の埋め立て土砂調達とも関連しており、社会的関心が高いので、市民への情報公開も重要視していただきたく思います。
以上のことから、次の4点を要望いたします。

  1. 指導を受ける専門家の氏名や所属を公表すること
  2. 複数の専門家の意見を取り入れること
  3. 議事録等、意思決定のプロセスを市民に見えるようにすること
  4. 奄美大島からの石材を用いないというオプションも含め、対応を検討すること

参考:外来種被害防止行動計画 (環境省、2015)

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