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国際自然保護連合(IUCN)レッドリストの改訂を発表~アユモドキなど日本で生息環境が脅かされている生き物がリストアップ

2015.11.19
要望・声明

国際自然保護連合(IUCN)レッドリスト改訂発表を受けての声明(PDF/299KB)


2015年11月19日

国際自然保護連合(IUCN)レッドリスト改訂発表を受けての声明

公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山章

本日(2015年11月19日)、国際自然保護連合(IUCN)がレッドリストの改訂を発表した。IUCNのレッドリストは、7,500人を超す科学者・機関の協力のもと、7万種を超す世界の生物種の絶滅の恐れを調査し、世界の植物や動物の多くが絶滅の危機にさらされているという危機的状況を明らかにしてきた。国連、国際条約あるいは国際金融機関等が、地球環境の状況を把握し、あるいは、開発事業における環境配慮に基づいた投融資を判断する際の指標などとして採用するデータである。

今回、発表されたリストには、現在、わが国の自然保護問題において注目されている生物が含まれていることから、以下の声明を発表する。

アユモドキ(Parabotia curtus)が、絶滅危惧IA類(Critically Endangered(CR))に掲載された。アユモドキは、IUCNのレッドリスト掲載以前から、国の天然記念物及び種の保存法の国内希少野生動植物種に指定されており、過度の捕獲・採取、人間の生活域の拡大等による生息地の消滅又は生息環境の悪化等の改善が強く求められてきた。今回のレッドリスト掲載は、こうした危機的状況が世界的観点でも認識され、本種の保全が地球的規模での保護の優先度が高いと判定されたことである。

現在、本種の最大の生息地の京都府亀岡市において、京都スタジアム(仮称)整備事業が京都府によって計画されている。本種の絶滅回避のためには、スタジアム建設地の見直しまたは計画を中止し、国、京都府、亀岡市および我々国民も、本種の保全のための活動に積極的に取り組んでいくことが重要である。

Kissing Loach Parabotia curtus_ Tsukassa Abe Okayama Freshwater Fish Society, Lago.jpg▲アユモドキ((C)Tsukassa Abe Okayama Freshwater Fish Society, Lago)

また、ホウロクシギ(Numenius madagascariensis)が、絶滅危惧Ⅱ類(Vulnerable(VU))から、絶滅危惧IB類(Endangered(EN))に変わり、より危機的な状況にあることが示された。

オーストラリアなどで越冬し、中国東北部やシベリア東部で繁殖し、日本にも渡来するこの大型のシギは、生息環境である干潟などの減少により個体数を減少させている。日本は多くの干潟が通過地点で一時的な利用であるため、個々の環境改変の影響を軽微に捉えがちであるが、長距離を移動する水鳥にとって経路上にあるそれぞれの干潟は重要な意味を持つ。

日本最大の河口幅をもつ徳島県吉野川の河口干潟は、ホウロクシギが立ち寄る干潟のひとつであるが、西日本高速道路株式会社による自動車道の橋が計画されている。吉野川河口域には、4kmほどの範囲にすでに3本の橋がある。それらの複合的な影響評価は行われておらず、本種への影響回避が科学的に行われているとは考えがたい。事業の見直しも含め、フライウエイ全体として積極的な保全に取り組むことが重要である。

houroku.jpg▲ホウロクシギ

一方、アカウミガメ(Carettacaretta)は、絶滅危惧ⅠB類(Endangered(EN))から、絶滅危惧Ⅱ類Vulnerable(VU)となった。
これまで、日本の各地で本種の保全への取り組みが一定の効果を挙げている証左ともいえ、喜ばしいことである。

しかし、本種の重要な生息環境の一つである海岸は、海岸法の対象事業が環境影響評価法の対象外であるとともに、2011年の東日本大震災以降の防潮堤建設などで、開発による消失の危機にさらされている。また、本種の個体レベルでの寿命の長さから、環境の変化が生息数に反映されるまでに長期を要することなどを考慮すると、今後の本種の生息が安定的であるとはいえない。

地域での取り組みをさらに継続的に行うとともに、海岸法による防潮堤建設を環境影響評価の対象事業にするなど、国のさらなる本種の保全への取り組みの強化が必要である。

以上

(参考)IUCN(国際自然保護連合)による絶滅の危険性の分類基準

絶滅種 絶滅 Extinct(EX) style=”vertical-align:middle”すでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 Extinct in Wild(EW) 飼育・栽培下であるいは過去の分布域外に、個体(個体群)が帰化して生息している状態のみ生存している種
絶滅危惧種 絶滅危惧IA類 Critically Endangered(CR) ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
絶滅危惧IB類 Endangered(EN) ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧Ⅱ類 Vulnerable(VU) 絶滅の危険が増大している種。現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続いて作用する場合、近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられるもの
準絶滅危惧 Near Threatened(NT) 存続基盤が脆弱な種。現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの

国際自然保護連合(IUCN)のリリース

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