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中池見湿地の保全

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2015.03.09

ラムサール条約湿地「中池見湿地」の北陸新幹線ルートの見直しについて要望書を提出しました。

福井県敦賀市の中池見湿地は2012年7月に世界的にも重要な湿地であるとしてラムサール条約に登録されましたが、翌8月に北陸新幹線の新たな計画路線が公表されました。


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現在、事業者の鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって、建設工事の影響評価・予測のために事後調査検討委員会が設置され、2015年3月15日の委員会で結論が出される予定となっています。

事業による湿地の自然環境への影響を回避するためには、少なくとも表流水の集水域となっている条約登録湿地の範囲である稜線内の路線建設を避ける必要がありますが、第3回の委員会で認可ルートよりも動植物への影響が小さいとされた「環境アセスメント時の計画ルート(アセスルート)」であっても稜線内を貫通するため、水文環境への影響は避けられません。
また、湿地の自然環境への影響を回避するためには、複数の具体的な工法やルートの選択肢が示され、その評価や検討に十分な時間をかけることが必要不可欠です。複数のルートの選択肢については海外の専門家からもシンポジウムで指摘がなされています(参考記事)。
しかし、2015年1月14日に北陸新幹線の開業を3年間早めるという合意がなされたことにより、10万年の歴史をもつ中池見湿地への影響回避が十分行われないまま事業が進む恐れがあります。

そこで、日本自然保護協会とウェットランド中池見は、国および事業者、事後調査委員会に対して、次のことを求める要望書を提出しました。

① 新幹線ルートは、自然環境への影響が大きい認可ルートを回避するとともに、
ラムサール条約登録湿地の範囲外に変更すること
② 湿地の自然環境への影響を回避するルートや工法を検討する時間を十分確保すること

●プレスリリース

 


2015 年3 月5 日
環境大臣
望月 義夫 殿

国土交通大臣
太田 昭宏 殿

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 理事長
石川 裕己 殿

北陸新幹線、中池見湿地付近環境事後調査検討委員会 委員長
松井 正文 殿

ラムサール条約湿地「中池見湿地」を通過する

北陸新幹線建設計画の変更を求める要望書

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
NPO 法人 ウェットランド中池見
理事長 笹木 智恵子

福井県敦賀市の「中池見湿地」は、袋状埋積谷という地形が大きな特徴で、世界的にも希少な約10 万年の歴史をもつ40mもの厚さの泥炭層が堆積しています。加えて、多様な水辺環境により約3,000 種もの動植物の宝庫であることが評価され、2012 年7 月に世界的な保護地域であるラムサール条約の湿地として登録されました。しかし、登録直後に湿地を貫通する北陸新幹線のルートの変更と認可が公表されました。認可ルートは中池見湿地の水文環境に不可逆的な悪影響を与える恐れがあるほか、国内外の保護地域の開発を助長し、保護地域のあり方に対して大きな影響を与える恐れがあります。これまでに様々な学会や市民団体などから意見書が出されており、2014年12月には東京で国際シンポジウムが開催され、全国から参加者が集うなど、社会的に大きく注目されています。

2013年11月16日より事業者である鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって、建設工事の影響評価・予測のための調査計画などを話し合う専門家の委員会(中池見湿地付近環境事後調査検討委員会。以下、委員会とする)が設置・開催され、翌12月から調査が始まっています。2014年12月7日に行われた第3回の委員会では、認可ルートは変更前の環境アセスメント時の計画ルートよりも動植物への影響が大きいことが示されました。2015 年3 月の委員会で環境への影響についての結論が出される予定となっています。そのようななかで、2015年1月14日に新幹線推進に関する政府と与党による共同会合が開かれ、北陸新幹線の開業を3 年間早めるという合意がなされました。私たちは事業を3年前倒しするという社会的要請が高まることで、10万年の歴史をもつ中池見湿地への影響回避の検討や対策が十分行われないまま事業が進む恐れがあると懸念しています。
そこで私たちは次のことを要望します。

① 新幹線ルートは、自然環境への影響が大きい認可ルートを回避するとともに、ラムサール条約登録湿地の範囲外に変更すること

新幹線の建設により、中池見湿地の地下水や湧水などの水文環境に変化が生じれば、湿地の動植物や水文環境を含む自然環境に不可逆的な影響を及ぼしかねません。地下水脈も含めた中池見湿地の集水域の範囲や事業による水文環境への影響を正確に予測することは、最新の科学技術を使っても困難であり、その予測には不確実性が伴います。事業による湿地の水文環境への影響を回避するためには、できる限り湿地から遠くに路線を変更することが重要であり、少なくとも表流水の集水域となっている条約登録湿地の範囲である稜線内の路線建設を避ける必要があります。また、条約登録湿地の範囲内に新幹線を建設する計画自体が、国際的な信用を失墜させるだけでなく他の条約登録湿地の保全のあり方にも大きな影響を与えることとなります。
現在の認可ルートは第3回の委員会においても、湿地の動植物への影響が大きいことが認められています。また、委員会において認可ルートと比較された環境アセスメント時の計画ルートであっても、稜線内を貫通する路線であるため水文環境への影響は避けられません。
以上のことから、新幹線ルートは、自然環境への影響が大きい認可ルートを回避するとともに、ラムサール条約登録湿地の範囲外に変更してください。

② 湿地の自然環境への影響を回避するルートや工法を検討する時間を十分確保すること

国際的保護地域である湿地の自然環境を守ることは締約国の義務です。委員会では、認可ルートの影響を評価するため、そのルート周辺の範囲でしか自然環境の調査がなされていません。湿地の自然環境への影響を回避するためには、複数の具体的な工法やルートの選択肢が示され、それに基づく評価がなされることが必要です。またその検討のためには、評価の基礎となる広域的で科学的な調査と、できる限り確実な予測・評価が必要であり、それには十分な時間をかけることが必要不可欠です。日本政府は中池見湿地がラムサール条約湿地となった意味を認識し、事業を3 年前倒しすることで10 万年の歴史をもつ湿地が犠牲とならないよう、湿地の自然環境への影響を回避するルートや工法を検討する時間を十分に確保してください。

以上

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