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外来種被害防止行動計画(案)に関する意見

2015.01.13
要望・声明

[意見]
現在、国内各地で、ペットとして持ち込まれたり、人や物資の移動にともなって入り込んだ外来生物が野生化し、その地域に生育・生息していた在来の生物を脅かしたり、外来種との交雑によって、本来の自然集団がもつ遺伝的固有性や多様性が失われるなど、生物多様性喪失の深刻な状況となっている。

日本自然保護協会は、これまで外来種問題についての普及啓発活動や、「外来生物法」の制度のあり方や外来種の対策について国へ提言活動を行ってきた。こうした立場から「外来種被害防止行動計画(案)」に対して、以下、意見する。

外来種被害防止行動計画(案)に関する意見

  1. 該当箇所
     第2章第1節3のⅡ、及び第2章第1節5と関連項目
  2. 意見内容
     上記該当箇所に、「非意図的な外来種の導入の予防的観点から、埋め立て事業や建設残土処理等に際して島嶼間や、異なる流域生態系間での土砂等の移動については、原則禁止とする」旨を明記するべきである。
  3. 理由
     本行動計画案では、外来種対策の被害予防三原則として、「入れない」、「捨てない」「広げない」を再定義し、特に「入れない」については、“国内由来の外来種”についても同様に外来種問題であり、それについても「入れない」の対象となる行為であることを明確に示すために、「日本に」から「自然分布域から非分布域へ」に置き換えた。しかし、対策の具体例としてあげられているのは、尾瀬国立公園や小笠原国立公園での靴底洗浄等の取り組みであり、侵略的外来種に該当する植物やアリ等の昆虫、クモ類等が生息・生育している地域の土砂や、土付きの植栽木、ポット苗、資材等を、他の地域に移動させることによる侵略的外来種の分布拡大を防止する具体的な対策は記載されていない。わが国は島嶼国であり、島ごとに特異な生態系を有していることは本行動計画案にも明記されている事実である。また、同時に外来種対策でもっとも重要なことは、「入れない」ことであるとも明記されている。従って予防的観点にたてば、島嶼間(例えば本州から、南西諸島へなど)の土砂等の移動は禁止するべきである。現在、沖縄島北部辺野古/大浦湾(名護市)にて計画されている埋め立て事業(普天間飛行場代替施設建設事業)においては、沖縄島の外から埋め立て土砂を購入する計画が公有水面埋立承認願書に記載されている。この土砂移動による環境への影響は、環境影響評価法の手続きの対象外として、影響の予測評価がないままに進められようとしている。県外の土砂を利用することにより辺野古/大浦湾に外来種が持ち込まれ、貴重な生態系に悪影響を与える可能性があることは予測できることであり、一度侵入した外来種を完全に取り除くことは困難であることは小笠原諸島での外来種対策の難航をみれば一目瞭然である。従って、島嶼間や、異なる流域生態系間での土砂等の移動については、原則禁止とすることを、本行動計画案に明記するべきである。
  1. 該当箇所
     第2章第1節の1

  2. 意見内容
     外来種対策の普及啓発の内容に、これまでの人間による無知な行為の結果、罪なき生き物の命を奪わざるを得ない事態に至ったことを含めるべき。

  3. 理由
     小笠原の外来種対策で、その効果が飛躍的に認められた事例に、ノネコの排除がある。野生化したネコを捕獲し馴化させ、新たな飼い主に引き渡すというシステムが各関係機関のボランタリーな努力で実現した結果、一匹のネコも殺処分すること無く、排除することに成功し、その結果、アカガシラカラスバトの生息確認数が飛躍的に回復することになった。一方で、グリーンアノールについては殺処分を実施している。島の子供の中でも、「グリーンアノールは悪いやつだから殺していい」といった、同じ命でありながら、異なった印象を与える結果にも繋がってしまっている。固有の生態系を保護するために、動物愛護法の精神から、苦痛を与えずに外来種を処分することと、人間の生命や生活は他の生物に支えられ、犠牲の上に成り立っていることを理解させるよう努める事は書かれているが、駆除をしなければならない状況に至った原因についての記述が不十分である。こうした状況に至った原因は、これまでの人間の無知な行為によるものであり、その結果、開発行為や経済活動によって便益を享受したことにともなう負の側面が、外来種問題の大きな問題点であり、こうした点に踏み込んだ内容をしっかりと教育として伝えたうえで、命に差があるような受け止め方にならないよう配慮したプログラム作りが必要である。
  1. 該当箇所
     1)外来種被害予防三原則の徹底 P40 等
  2. 意見内容
     ミシシッピアカミミガメの段階的規制や輸入規制について具体的に記述すべきである。
  3. 理由
     日本自然保護協会では、市民参加型調査「自然しらべ2013 日本のカメさがし!」を2013年に実施し、野外で報告確認された個体6,468頭のうち64.1%がミシシッピアカミミガメであるという結果から、法規制を求める提言、「カメが生息する自然と生物多様性を守る」(2014)を公表し、環境省にも提出している。また、2014年8月には規制のあり方を考えるシンポジウムを開催し、特定外来生物の指定の効果と課題を議論した。基本的には、「特定外来生物」に指定することにより、輸入禁止等の規制をかけ、順次、流通販売の規制をする一方で、飼養等許可について暫定処置を設けるなど、柔軟に段階的な法の運用ができるようにすべきである。本行動計画でも、大量の遺棄の対策を行ったうえでの「段階的な規制」や「新たに入れないような取り組み」の検討が必要であると明記されたことは評価できるが、私たちの提言のように、より具体的な対策や規制のあり方など踏み込んだ記述をすべきである。
  1. 該当箇所
     第6節 同種の生物導入による遺伝的撹乱への対応 1基本的な考え方、2具体的な行動
  2. 意見内容
     遺伝的な撹乱への配慮と徹底は、緑化植物のうち、植樹行事や活動でも重要であることを明記すべきである。
  3. 理由
     本計画の「基本的な考え方」でも、国は遺伝的撹乱に配慮した緑化植物の利用を推奨することを明記のうえ、「林野公共事業における生物多様性保全に配慮した緑化工の手引き」を具体的な行動の手段としてあげている。また、震災後には、林野庁「今後における海岸防災林の再生について」(平成24年2月)がまとめられ、広葉樹の苗木供給について「植栽予定地に従来自生する樹種であるとともに、できる限り植栽地の生育環境に近い地域で採取した種子から生産できるような体制を整えることが望ましい。」と明記されている。しかし、東北沿岸部で行われる民間団体等の防災林復旧の植樹活動に対して、皇居内の樹木の種子を配布する事業「海岸防災植樹用種子の配布」を2014(平成26)年度に林野庁が行っており、遺伝的撹乱に十分な配慮がされているとは言いがたい。今後、そのようなことがないよう踏み込んだ記述が必要である。

以上

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