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<海の生きものを守るフォーラム>「海の自然保護 最前線! ~海の生き物を守れない日本のシステム~」を開催しました。

2014.02.07
活動報告
icon_abe.jpg 保護・研究部の安部です。
 
2月1日、<海の生きものを守るフォーラム>「海の自然保護 最前線! ~海の生き物を守れない日本のシステム~」を開催しました。
 
向井宏先生の挨拶で会議が始まり、NACS-J志村から2012年5月に公表した提言書をベースに「日本における海洋保護区のいま」と題した発表をしました。
続いて、向井先生から日本の海洋保護区や環境省の重要海域選定に関する問題点の紹介がありました。
 
その後、「日本の水産業と海洋保護区」と題した勝川俊雄さん(三重大学)のお話し。
勝川さんのお話しは以下の通りでした。
 
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日本の水産資源は乱獲のため減少し、世界でもっとも人為的に攪乱された海と言える。現在の制度では、漁獲枠はたった7種にしかかけられていないうえに罰則がなく、また持続性を無視した過剰な漁獲枠が設定されており、日本の水産資源管理は管理とは呼べないほどである。
これらの漁獲枠は、科学者の勧告を無視し、勧告をはるかに上回る設定がなされている。そのため現在の制度では乱獲が防げないどころか、乱獲をサポートしているようなものである。また大型船の導入により未成魚まで一網打尽に獲り尽されるという問題もある。
 
京都府のズワイガニ漁業など自主的な禁漁区を設定し、管理を上手に行っている場所もある。南アフリカで40平方キロメートルの海洋保護区を設置したところ、10年間で漁獲が倍増した例もある。
海洋保護区を設ければ漁獲高が増えるということを知ればだれでもそうすると思う。東日本大震災ののち、人が入らなくなった海で魚が増えたという事例があり、対馬は漁業者自身の努力により海洋保護区としての管理が行われている。
これらのような成功事例を作っていき、仲間を広げ、ネットワークを作る必要がある。自主的禁猟区には「生態系への考慮がない」という問題もあるので、科学者やNGOが漁業者に仲間を作ることが必要である。
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20140201uminoforum1_R.jpg

その後、私から沖縄・辺野古の話をし、田中雄二さん(表浜ネットワーク)から「海岸利用者が望む海洋保護区」と題したお話しがありました(右写真)。
 
 
後半のパネルディスカッションには共同通信の井田徹治さんにコーディネーターをつとめていただき、吉田正人(NACS-J専務理事/IUCN-J会長)も交え、さまざまな意見が交わされました。
 
・海のデータが不足している。本来は今あるデータを全て集め、生き物の産卵場などの重要な場所を選定し、守る場所と使う場所を日本全体で決めるべきである。
・魚は漁場を頻繁に移動するため管理が難しい。
・海洋保護区を作ると「魚が増える=もうかる」とつながることを漁業者に知らせるべき。
・日本は科学技術のみが発達し、社会システムはそのままで経済ばかりに重点が置かれたバランスの悪い国になっている。
・ノルウェー、ニュージーランドなど効果的に水産資源を管理する方法は確立している。乱獲は過去のできごとであるので、良い事例を見習う必要がある。
・水産資源管理を上手に行っている国では国民世論が乱獲を許さなかった。保護団体が世論を作る大きな役割を果たしていた。
・海で何が起こっているか一般の人は知る術がない。
・海の保全に関する行政が縦割りの体制であるため、管理を効果的にできない。
・愛知ターゲットの目標11に書かれている海洋保護区10%は、世界全体の目標である。モンゴルのように海のない国は海洋保護区を設定することが出来ない。その分、日本のように四方を海に囲まれている国の責任は大きく、10%以上の責任を果たす役割がある。これをshared responsibility (責任の共有)と呼ぶ。
 
専門性の異なるスピーカーがそろったため、十分に議論できない部分もありましたが、海に関する問題は広いということを改めて感じました。
この日は「海面上昇で最大9割の砂浜消失か(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140201/k10014938471000.html)」
というニュースが報道されました。
 
NACS-Jは今後も海の保全に力を注いでいきます。
 
●フォーラムの様子は動画で見られます。
http://www.ustream.tv/channel/nacsjonair?utm_campaign=ustre-am&utm_source=ustre-am&utm_medium=social
 
●NACS-Jの海洋保護区の提言書「日本の海洋保護区のあり方~生物多様性保全をすすめるために~」は以下からダウンロードできます。
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/wetland/2012/05/83.html
 

20140201uminoforum3_R.jpg ←ジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)が会場でグッズ販売をしていました。

 

 

 

 

 



20140201uminoforum4_R.jpg←NACS-Jのデスクには会員/指導員の堀文子さんにご協力いただきました。

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