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那覇空港滑走路増設事業の公有水面埋立承認手続きの利害関係人として意見を出しました。

2013.11.07
要望・声明

那覇空港滑走路増設事業に係る公有水面埋立承認手続きの利害関係人としての意見(PDF/190KB)


2013年11月7日

沖縄県知事 仲井真弘多 殿

那覇空港滑走路増設事業に係る公有水面埋立承認手続きの利害関係人としての意見

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、1951年に設立され、28,000人の会員に支えられて、日本の自然を守る活動をしてきた団体です。私たちは沖縄のサンゴ礁域の生物多様性の豊かさに注目し、その保全を訴えてきました。沖縄のサンゴ礁の自然を失うことは、長年、保全の対象として取り組んできた豊かな自然を失うだけではなく、これらの人々の信頼や想いをも裏切ることとなり、当会にとっては計り知れないほどの大きな損失となります。

上記事業が予定されている大嶺海岸は那覇市に残された最後の自然海岸であり、ボウバアマモやリュウキュウアマモ、リュウキュウスガモなどで構成される海草藻場や、絶滅危惧Ⅰ類で沖縄島のみでしか確認されていない一属一種のクビレミドロ、準絶滅危惧種のカサノリ、絶滅危惧Ⅰ類のホソエガサやウミボッスなどの貴重な生き物の分布が確認されています。トカゲハゼやカンムリブダイなどの魚類や、ハートガイやシイノミミミガイなどの希少な貝類も生息しています。礁斜面には造礁サンゴが分布しており、過去には被度50%を超える分布の記録もあり、また現在の沖縄島周辺のサンゴ類の健全度を鑑みると(沖縄県自然保護課 2011)、数少ない良好なサンゴ礁生態系です。

当協会が10月8日に事業者に提出した那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書(補正後)に関する意見でも述べた数々の指摘事項、例えば潮流のシミュレーションを正確にし直すこと、連絡誘導路の通水路部の評価の再実施、貴重な生き物の移動・移植のみを環境保全措置としているものに対する移植以外の環境保全措置の提示、実効性の伴う環境保全措置の導入、直接の改変地の周辺に及ぶ影響についての検討などがいずれも改善されていません。

また、今般、埋立土砂の調達先が公有水面埋立承認願書にて初めて明らかにされました。沖縄島周辺の4つの地点から3,788,000立方メートルの海砂が採取されるということや土砂の運搬船の運航ルートがジュゴンの生息域と一部重なることは、環境保全上大きな問題です。これらの行為がジュゴンの個体群の維持や沖縄島周辺の海草藻場に与える影響は甚大であると考えられます。これらの情報は本来は環境影響評価の時点で明らかにされ、環境への影響を評価されるべきであったと考えます。

また住民参加という点からも問題があります。事業実施当初はパブリックインボルブメントなどを行い住民の意見を積極的に行っていたにもかかわらず、途中からその姿勢が失われたことが残念です。本事業では公有水面埋立承認願書と環境影響評価補正書の公告縦覧が同時に行われました。補正書に対して住民の意見を聞くことは制度上にはないとはいえ、住民が補正書に目を通す時間も与えず次のステップに進むことは、住民参加という環境影響評価法の精神に反していると考えます。また11月2日に県と那覇港管理組合が沖縄総合事務局に提出した15の質問についても公開されていません。

この海域の有する生物多様性の豊さは未知の部分が多く、十分に解明されていないと考えられます。また提示されている環境保全措置も、環境大臣の意見にも日本自然保護協会の意見にもこたえられていません。市民参加という点からも多々問題があります。生物多様性のホットスポットを、十分な調査や評価もないままに、十分な保全措置を取らないまま失おうとしていることは、将来世代へ大きな禍根を残すことになります。

埋め立ては、サンゴ礁の自然に不可逆的な変化をもたらすものであり、一度行ってしまうと、もとに戻すことはできません。この夏は、1998年以来15年ぶりに大規模なサンゴの白化現象が沖縄島周辺海域において起こり、多くのサンゴに影響が及んだと思われます。また今年は多くの台風が沖縄に上陸または接近しましたが、その際に防波堤の役割を果たしているのはサンゴ礁です。沖縄の島々の海岸部に広がるサンゴ礁は市民にとって、大切な場所であり、積極的に保全すべきです。

沖縄県知事には、良好なサンゴ礁である大嶺海岸の生物や環境を失うことの大きさを再度ご認識いただき、市民が真の意味で自然と共生し、自然の恵みを享受できる方法を検討くださいますよう要望致します。

参考文献
沖縄県自然保護課(2011)平成21 年度 サンゴ礁資源情報整備事業サンゴ礁資源調査事業「沖縄島周辺」報告書
日本自然保護協会(2013年10月8日)「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見書(国土交通大臣、内閣府沖縄総合事務局長宛)
日本自然保護協会(2013年10月11日)沖縄島周辺のジュゴンの保全を求める要望書(沖縄県知事宛)

(▼写真:有光智彦)
海中のカニ(希少種)の写真

干潟の上を飛行機が飛んでいる写真

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