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2013.10.30

【配布資料】今日からはじめる自然観察「 土の中の生物だっておもしろい!」

会報ページ画像

【今日からはじめる自然観察】土の中の生物だっておもしろい!(PDF/2.10MB)
<会報『自然保護』No.518(2010年11・12月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。

 

土の中には、モグラ、ダンゴムシ、ミミズ、ムカデ、
トビムシ、クモ……など、たくさんの生きものが暮らしています。
今回は晩秋に観察しやすいダニ類を中心に、
土壌動物の観察の仕方をお伝えします。


ダニって気持ち悪い!?

と、多くの方は思っているに違いないですよね。確かにダニにやられると痒くてたまりません。もうだいぶ前のことになりますが、九州のあるところにシカやイノシシなど哺乳類の調査に出かけたとき……何と100カ所以上もダニにやられた経験があります。もちろん痒くてその夜は眠れませんでした。

こう紹介するとますます、ダニが嫌いになりそうですね。ここで誤解を解いておかなければなりません。野外に生息するダニには動物や人にとりつくマダニの仲間、植物の葉につくハダニの仲間、そして土壌動物の代表種であるササラダニの仲間などがいます。このササラダニの仲間は決して人を刺したりかんだりはしません。

実は、ササラダニは土をつくっているのです。菌類だけで落ち葉を分解するとかなりの時間がかかってしまいます。そこで、土壌動物たちの出番になります。ササラダニのサイズはせいぜい0・3~1・5㎜程度ですが、多いところでは1㎡に数万匹が生息しています。落ち葉を砕いて食べ、糞として菌が栄養にしやすい状態で排泄するのです。ササラダニなど土壌動物は有機物の循環の重要な担い手なのです。

 

10~12月がチャンス!ダニ類の個体数は季節変動する

ササラダニは生息個体数がなぜか晩秋から初冬にかけて多く、逆に、普通の動物たちが活発に活動する夏季に少なくなる傾向があります(青木ほか、1997)。初めて土壌動物を観察しようというのなら数が多いときのほうが良いに決まってます。さあ、落ち葉をサンプリングして、手作り装置で観察しましょう!

土壌動物は一般的に光と高温、乾燥が嫌いです。電球で照らされると逃げだそうとして下に落ちます。下のカップを空にしておくか、水を入れておけば、生きたまま観察できます。トビムシ類が割合早めに落ちてきます。しっかり見るつもりなら、12時間程度はセットしておきたいですね。この場合はカップにアルコールを入れておくと良いでしょう。

手作りツルグレン装置
土壌動物のうち大きい個体は肉眼でも見えますが、1㎜以下になると難しくなります。そこで、上のような土壌動物を追い出す装置を準備します。100円ショップと家にある物でほとんどがそろいます。試料は新しい落ち葉は避け、上層から約5cmより深い表土(リター)をザルに入れ、上図の装置(ツルグレン装置)に掛け電灯を点灯します。電球が熱くなりますので、時々点検し、落ち葉が熱いようであれば電球を遠ざけてください。

カップに落ちてきた土壌動物たち(写真)
写真は3時間程度で下のカップに落ちてきた土壌動物たちです。土中のプランクトンと呼ばれるアヤトビムシやツチトビムシなどのトビムシの仲間、アリやハエの幼虫、捕食性のトゲダニの仲間などが観察できます。

生物多様性の現場=土の中の世界

土の中は、コミュニケーション手段として光、音、匂いなどはほとんど使えません。土が覆い被さっていますので、素早く飛んだり、走ったりもできません。土の中も食う食われるという世界ですが、ライオンが獲物を襲うような派手な出来事や緊迫感はありません。つまり、住人たちにとっては比較的安全な場所だと言えるのです。特に、小さな生きものや弱い生きものたちは土に保護されて暮らしているのです。

土の中の環境は私たちが思っている以上に、垂直方向に実に多様な変化をしていきます。深くなるにしたがって水分は多くなり、すき間は小さくなり、密度は増し、温度は変化しなくなり、有機物は減ってきます。この縦方向の変化こそが生きものたちに多様な環境を提供し、暮らしを支えているのです。

名前のおもしろさ

ヒメリキシダニは体の後端の毛が力士の「下がり」に似ていることからリキシダニと付いたそうです。振袖をまとったフリソデダニ、ハサミを持ったカニムシ、可愛さではダントツのオドリコトビムシなどなど、なんとも愉快な名前を持つ生きものたちがたくさんいます。

ヒョウタンイカダニ(写真)
ヒョウタンイカダニ
ヒョウタンなのか? イカなのか? 全国に分布し、観察会でよく見つかります。

ヒメヘソイレコダニ(写真)ヒメヘソイレコダニ
イレコは入れ籠。刺激すると足をたたんで丸くなります。環境適応の幅が広く全国に分布。

土壌動物の円盤検索表

土壌動物の円盤検索表

(青木淳一氏作成) クリックすると会員専用ページに掲載されたPDFファイルが開きます。ID/パスワードは最新の会報『自然保護』巻頭をご覧ください。


観察会を開くとき

生物多様性実感研修会の様子(写真)
6月に開催した生物多様性実感研修会in佐賀での土壌動物抽出実習の様子

コツと注意点

1.場所の確保

電灯のための電源の確保や顕微鏡を置く机などが必要です。

2.できれば事前に練習

土壌動物は土さえあればどこにでもいますが、落ち葉があるところをサンプリングすると観察しやすいでしょう。馴れるまでは必ず事前に練習してみてください。

3.サンプリング場所は複数

土壌サンプリングは環境を少しずらして2カ所以上で実施し、比較しましょう。

4.種名にこだわらない

名前を調べ始めると大変です。まずは、円盤検索表などを参考にしながらグループ分けに挑戦してみてください。グループごとの特徴から、サンプリングした場所の土壌環境を知る手がかりをつかみます。

5.顕微鏡は必需品

ズーム式の実体顕微鏡がおすすめです。ファーブル(ニコン製)も使えます。生物顕微鏡の場合は対物、接眼レンズとも倍率の低いものを準備しましょう。

6.記録するには…

  • a)スケッチ:細部まで観察するので記憶にも残る。
  • b)顕微鏡写真:カラーでスケールが入ればなお良い。
  • c)アルコールの入ったサンプルビン(15~30ml):日時と場所を明記して保管する。

 

足立高行(NACS-J 理事・応用生態技術研究所所長)

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