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2013.02.12

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見


 

日本自然保護協会は、2011年2月に、沖縄県辺野古に計画されている普天間飛行場代替施設建設事業(以下、本事業)評価書に対する意見として、豊かな生物多様性に大きな影響を及ぼし、環境保全上問題があるという指摘をまとめ、提出しました。
日本自然保護協会の意見などをふまえ補正された部分もありますが、根本的な改善がなされた箇所が少なく、依然として問題が多い評価書となっています。そのため、補正評価書をもってしても環境保全は不可能であると言わざるを得ません。
評価書に続き、補正評価書においてもデータを恣意的に利用するなど科学性を欠いているため、環境影響評価の要件を満たしていないのです。国が事業者であるにも関わらず、科学的な議論と合意形成の手続きを経てきた文書とはいえず、環境影響評価としては極めて不適切なものである、として、防衛大臣、沖縄防衛局、環境省、沖縄県に対し、意見書を提出しました。

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見書(PDF/277KB)
「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見の理由書(PDF/1MB)


2013年2月12日

防衛大臣    小野寺五典 殿
沖縄防衛局長 武田博史   殿
環境大臣   石原伸晃   殿
沖縄県知事   仲井真弘多 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

 

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見

 (財) 日本自然保護協会は、辺野古・大浦湾海域において、海草藻場モニタリング調査「ジャングサウォッチ」や「チリビシのアオサンゴ群集の調査」などの各種現地調査を行い、辺野古・大浦湾の生物多様性の豊かさに注目し、その保全を訴えてきた。この度、沖縄県条例および環境影響評価法に基づく「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」(以下、補正評価書)に対して、科学的知見をもとに、環境保全の見地から下記の問題点をあげ、意見を述べる。

要 約

日本自然保護協会は、昨年2月に、普天間飛行場代替施設建設事業(以下、本事業)評価書に対する意見として、豊かな生物多様性に大きな影響を及ぼし、環境保全上問題があるという指摘をまとめ、提出した。日本自然保護協会の意見などをふまえ補正された部分もあるが、根本的な改善がなされている箇所が少なく、依然として問題が多い。そのため、補正評価書をもってしても環境保全は不可能であると言わざるを得ない。評価書に続き、補正評価書においてもデータを恣意的に利用するなど科学性を欠いているため、環境影響評価の要件を満たしていない。国が事業者であるにも関わらず、科学的な議論と合意形成の手続きを経てきた文書とはいえず、環境影響評価としては極めて不適切なものである。

問 題 点

1.沖縄県知事意見の項目に回答していない部分が多い

2012年に提出された沖縄県知事意見では、評価書では辺野古周辺の「生活環境および自然環境の保全は不可能」と結論付け、579件の指摘がなされているが、これらの全てには回答していない。また回答がなされている部分についても環境を保全するに至らない内容の記述が多い。この事実は、本補正評価書をもってしても環境保全が不可能であるということを意味する。

2.県知事意見に回答する際に適応されている対応方針について不備がある

沖縄県知事意見への対応が、以下の1)-4)の4つの方針に基づいてなされている。しかし、論理的に考えると、本補正評価書には5)-6)の2項目が欠けている。予測不能な要素を多く含む自然環境が対象であるのに「対応が不可能である」や「影響が不明である」が出て来ないのは不自然である。従って事業者は今後、2項目を追加し、これらに基づき、補正評価書全体を再検討すべきである。1)-4)におさめようとする結果、科学的論理性を欠いた評価書となっている。

  • 1) 評価書の内容をより丁寧に説明することで対応するもの
  • 2) 追加的な調査、解析、知見等を増やして対応するもの
  • 3) 環境保全措置を新たに行うことで対応するもの
  • 4) 事後調査又は環境監視調査を続けて、その結果に応じた措置を講じるもの
  • 5) 対応が不可能であるもの
  • 6) 影響が不明であるもの

3.日本自然保護協会などの環境団体から指摘された事項を反映していない

水収支の詳細が説明されたことなど、新たに対処された事項があることは評価できる。しかし根本的な変更が加えられていない部分の方がはるかに多い。例えば生物への予測のもととなる海水流動と堆積物移動のシミュレーションは、再三の指摘にも関わらず、台風時に関する検討が欠落している。本文書に再掲載した「5.生物多様性豊かな海域、辺野古・大浦湾の特性や琉球列島の中でのユニークさが評価されていない」、 「6.データを恣意的に使い、評価と予測に科学的論理性を欠いたままである」、「8.具体性を欠いた環境保全措置で、実施責任が明記されていない」の項目に書かれていることは環境保全上重要な、改善されるべき指摘である。

4.孤立した沖縄のジュゴン個体群は危機的状況にあることの認識に欠ける

PVA(個体群存続可能性分析)解析がなされたことは評価できるが、解析に用いた条件が適切でないため、本事業がジュゴンの個体群に与える影響は相変わらず過小評価されたままである。辺野古地区に食(は)み跡が残り、辺野古沖の遊泳の記録がある以上、本事業がジュゴンの生息に致命的な影響を与えることは明白である。特に、絶滅危惧種であるジュゴンの確認個体が3頭と極めて危機的な状況にある現在、個体数を回復させるには、生息可能性をもつ海草藻場の環境をすべて保全できるかどうかにかかっている。種の保存法による種指定、生息地等保護区の指定、保護回復計画などあらゆる制度と施策を用いた保全回復措置が必要である。

5.生物多様性豊かな海域、辺野古・大浦湾の特性や琉球列島の中でのユニークさが評価されていない

本事業の対象地は外洋的環境から内湾的環境の特性を持つ大浦湾と、サンゴ礁生態系の辺野古が一体となって存在していることより、生物多様性が高く、保全上高い重要性がある。特にその接点である遮蔽された大浦湾西部の砂泥地は、特異的な生物群と希少種が分布し、さらには、本評価書においてジュゴンの食み跡が記録され、今後の利用可能性を秘めた極めて重要な場所である。このような生物多様性のホットスポットを、科学的な評価をせずに、埋め立てを行い、失おうとしていることは、将来世代へ大きな禍根を残すことになる。

6.データを恣意的に使い、評価と予測に科学的論理を欠いたままである

評価対象となっているほとんどすべての項目において、評価と予測に科学的論理を欠き、事業の実施を前提として、評価と予測に科学的論理性を欠いた環境保全措置となっている。そのため、事業者の都合のよいデータを恣意的に用いていることが散見される。例えば海水流動のシミュレーションにおいては台風の影響のデータすら含められておらず、毎年キャンプ・シュワブ週辺の海岸に上陸しているウミガメに対し、同海岸を利用していないと結論づけていること、などである。

7.生物等の移植、自然環境の造成に関する記述について

自然環境は人工的に造成や再生ができるものではない。サンゴ礁生態系には砂礫地や岩礁地、泥地など多様な環境が存在し、その結果として多様な生物が棲んでいる。潮の流れや水中の光環境なども含め本来の環境を再現し、そのうえで棲息するすべての生物を移植するのでなければ保全したことにはならない。
したがってこれらの措置は環境保全措置と呼べる段階にはなく、また環境に与える影響を軽減させる主な手段となり得るものでもない。このような提案は、自然破壊の免罪符を与えることにつながりかねないものである。

8.具体性を欠いた環境保全措置で、実施責任が明記されていない

工事中および供用後のモニタリング方法や環境監視体制、環境変化の指標や環境保全の目標の設定が曖昧にされたままでは、環境影響評価が形骸化したものになる。影響の低減・代償として行われる環境保全措置は、「必要に応じて」「可能な限り」など条件付きの記述では実効性がない。また米軍にマニュアルを提供する、米軍に要請するなどの実効性を伴わない記述を環境保全措置とするべきではない。環境保全に失敗した場合の責任者の明記がないままでは、最初から、環境保全上の責任を放棄しているとしか考えられない。

9.埋め立て土砂の調達先は環境保全上重大な問題がある

本補正評価書には埋め立て土砂の調達先として県内・県外のダム堆積土砂や浚渫土を含む建設残土、リサイクル材等を候補としてあげている。特に県外からの土砂の持ち込みは、外来種混入の可能性が高く、環境保全上大きな問題がある。「外来生物法に準拠した対策を講ずる」とあるが、誰が責任を持つのか、その所在が明確でない。また沖縄県内から購入すると記されている海砂60万m3についても調達先を明記すべきである。
大量の埋め立て土砂について、採取先が県内・県外や陸上・海上のいずれでも、採取地と埋立地の両方の自然環境に与える影響は大きく、長期的・複合的な影響を考慮する責任が事業者にはある。

10.環境影響評価のプロセスが守られていない

本事業に係る環境影響評価においては、方法書の公告縦覧以降に追加方法書・追加修正方法が公表され、評価書の段階になってオスプレイの配備が記されるなど、本来は方法書や準備書にさかのぼって記載されるべき内容が評価書の段階で書かれており、環境影響評価のプロセスが守られていない。

特に、一連の環境影響評価のプロセスが始まる前に実施された事前調査(環境現況調査)による環境の破壊は著しい。事前調査ではパッシブソナー、水中撮影機材、海象調査機器、連結式サンゴ着床具など計112個の大型の機械が海底に設置された。評価書、補正評価書には水中の至近距離でジュゴンを映した写真が掲載されているが、このような行為がストレスに敏感なジュゴンに影響を与えることは当然のこととして予測される。環境現況調査を行うことによって調査対象をかく乱したために、事業が環境に与える影響を正しく評価することは不可能にされている。

11.環境影響評価の要件である市民への公開性を満たしていない

本環境影響評価において公告縦覧された準備書は約5,400ページ、評価書と補正評価書は7,000ページ以上であった。インターネットで閲覧可能になったことは評価できるが、膨大なファイルの数と量のため、ダウンロードしてプリントアウトするには困難を極める。広く市民への公開性を心がけたものにはなっていないことから、より多くの関係者から意見を聞くという姿勢に欠けている。

12.国際的に求められている要件を満たしていない。CBD/COP10議長国としての責務が問われる

国際自然保護連合(IUCN)世界自然保護会議から三度にわたるジュゴン保護の勧告が日米両政府にされている。また米国に対するジュゴン訴訟として米国連邦地方裁にて国家歴史保存法違反として、沖縄のジュゴンに与える影響への配慮が米国国防省に求められている。これらの国際的に求められている要件を、本補正評価書はまったく満たしていない。また、2010年名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議(CBD/COP10)では、愛知ターゲットにおいて新たな戦略目標「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急の行動を実施する」ことを約束した。その開催国、議長国としての責務が世界から問われることになる。先日、沖縄島北部の豊かな自然環境も世界遺産登録の暫定リストに含まれたが、やんばるの森に隣接する海域でこのような環境破壊が行われているのであれば、登録が実現することはないであろう。

以上

 

*本書の付属資料の理由書(総23ページ)と合わせて意見内容として提出する。
*本書写しは、防衛大臣、環境大臣、沖縄県知事にもあわせて送付する。

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