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2013.01.25

自然しらべ2012「貝がらさがし!」 みえてきたこと


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誰でもが浜辺で拾うことができる貝がらは、海辺の自然環境の様子を知る手掛かりとなります。
今年の自然しらべでは、今の海辺の状況を「貝がら」を通して、その変化をとらえました。届いた貝がらの情報をすべて確認し解析したところ、変化の原因が、生息域の回復なのか、環境の悪化なのか、地球温暖化なのかを、貝がらが示してくれました。

 

(→自然しらべ2012 貝がらさがし!全調査ポイント385カ所)

 

たとえば、高度経済成長期の水質汚染や海岸の埋立て、その後の内分泌かく乱化学物質などによる貝の種の減少のあと、生息域が確実に回復しつつあるベニガイのような種もありました。
しかし一方で、思ったより集まったデータが少ない貝もあり、回復傾向は種によっては異なっていました。全体として高度経済成長期以前の状態に戻っているとは考えられませんでした。

 

また地球温暖化に関しても、貝類を通してみた場合、大きな変化は見られませんでした。組成が激変しているのではなく、現時点での変化はかなり緩やかだということです。”何だ、大したことないな”と考えられる方が多いでしょうが、これが実態だと思います。

 

トピックスとして報道などでは、自然界の短期間の激変が取り上げられますが、全体を見渡した場合、必ずしもそのような例だけではないことを理解していただけたらと思います。

 

今回対象にした種の多くは、プランクトン幼生によって分布域を広げている、各地の海岸で普通に見られていた種です。普通の種が全てセットで残っている場所はほとんどないのでしょう。

 

これから守るべきは「普通の貝が普通に生息している環境」であり、そのような環境には、多くの希少な生物も生息している可能性が高く、普通の貝が生息できる環境を大切にしていくことを願います。

 


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誰にでも簡単にできる「貝がらさがし」。その結果を積み重ねることによって、過去の様子や他地域との比較ができるようになります。貝は名前を覚えるのに少し苦労は必要ですが、今回の自然しらべがその入口になれれば嬉しい限りです。

 

黒住耐二(自然しらべ2012学術協力者/
千葉県立中央博物館上席研究員)

2012 貝がら さがし! 結果レポート(PDF/1.3MB)

※「全調査記録の目録」を含む完全版冊子(60ページ)は定価1000円(NACS-J会員価格1割引)で販売しております。こちらよりお問い合わせください。




貝がらをしらべて、こんなことが見えてきました。

 

回復してきた貝・回復していない貝

 

貝類は、1960-70年代の高度経済成長期に海の水質汚染や海岸の埋立て、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)等の影響により、多くの種が激減してしまいました。幸い良い環境が残された海岸もまだまだありましたが、世紀をまたぐ約20年間で、これらの場所でもさらに貝類の減少傾向が続きました。

 

しかし近年、各種の環境規制等により生息の回復傾向が見られ、今回のデータからもその状況が明らかになりました。
その一つがベニガイです。かつては全国各地の砂浜でよく見られましたが、近年姿を消していました。それが今回の調査では、日本海側を中心に比較的多くの地点から報告がありました。
同じような傾向は、ミクリガイでも認められました。ただミクリガイはもともと日本海側に少ないことにもよるものなのか、太平洋側に記録が偏りました。

 

逆に生息の回復が遅い対象種は、ヤカドツノガイ・ビワガイ・イソシジミ類でした。

 


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古典文学にも登場するサクラガイについては、瀬戸内海を中心に北海道を含む広い地域から確認されました。また、近い形をした別の種も比較的多くの報告を頂きました。解析の結果、外海に面した海岸にすむカバザクラはベニガイと同じく日本海側を中心に見つかりました。

 

一方、高度経済成長期までは普通種だった、ユウシオガイ、モモノハナ、オオモモノハナは、全て10地点未満の記録しかなく、ユウシオガイは九州周辺のみの報告でした。この3種はいまだ回復していないと考えられます。

 


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南方系の貝・北方系の貝の動向

 

地球温暖化の影響により、南方系の種が北に分布域を広げている例が、さまざまな生きもので報告されています。貝類でも分布域が北に広がっていることが、アシベマスオガイなどの種で報告されています。
ただ今回集まった記録からは、今まで知られていた分布域を越えた記録はありませんでした。タカラガイ類などの南方系の種も、各地の種の組成もこれまでとほぼ同様でした。

 

一方、その分布が紀伊半島以南とされながら、高度経済成長期以降、本州から九州ではほとんど見られなくなっていたイソハマグリが愛媛県で確認されたのは、地球温暖化の影響と生息の回復の結果と思われます。

 

また、ウバガイ、サラガイ、ビノスガイなどの北方系の貝が、分布域をより北に後退させているか、あわせてしらべました。食用名「ほっきがい」の方が通りのよいウバガイは、従来通り分布南限の関東地方でいくつもの記録がありました。このように北方系の対象種については、分布の北上傾向は認められませんでした。

 


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気になる外来種の状況

 

外来種の分布の変化を知るため、4種類の外来の貝もしらべる対象種にしました。戦前に帰化したムラサキイガイ(在来種のキタノムラサキイガイを含みます)は、北海道から種子島まで多くの地点から報告されましたが、他の対象種の確認地点は多くありませんでした。
特にホンビノスガイは、1990年代後半に最初に発見された東京湾のみから、ミドリイガイも既知の分布域(東京湾と相模湾、瀬戸内海等)からの報告があったのみでした。
1960年代後半に東京湾で発見されたシマメノウフネガイは、東北地方南部から東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の広い地域から報告がありましたが、日本海側では石川県からの1地点のみの報告しかなく、日本海側ではあまり増加していないようです。

 

ミドリイガイは外来種ではないという見解もあります。1960年代後半に瀬戸内海東部で、1980年代に大阪湾・東京湾で発見されています。

 


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