絞り込み検索

nacsj

生物多様性条約COP11が終わりました。資源動員戦略のまとめ。

2012.10.26
活動報告
icon_douke.jpg保全研究部の道家です。
インド・ハイデラバードで開催されていた生物多様性条約第11回締約国会議が、20日の午前3時に閉会しました。
今回のCOP11では、全34の決議をとりまとめ、世界各地から5000人強(国際会議場内登録者数)が参集した結果となりました。
何度か経過報告した資源動員戦略は、下記の通りにまとまりました。(本まとめは、L文書をベースに意訳)
<報告枠組みと基準値>
1.「第4回条約の実施とレビューに関する作業部会(WGRI4th)」で示された報告枠組みを(暫定)報告枠組みと採用すること、WGRI5thまでに使用にあたっての課題を報告すること
2. 2006-2010年の平均値を、資源増加の(暫定)基準値とする(資金を2倍といった場合の基準値)こと
<目標値>
3. 2015年までに、生物多様性に関係する途上国への資金の流れ(International Flow)を2倍にする(先進国のみならず、途上国から途上国の流れも含む)。2020年までは、その金額を維持する。
4. 2015年までに、75%(100%になるよう努める)の国が、生物多様性を国家の優先項目または発展計画に組込み、国内における生物多様性への適切な支出を図る
5. 2015年までに資金提供を受けた国の75%(100%になるよう努める)が、国内における生物多様性への支出に関する報告を行い、ちゃんとした基準値の把握や目標値の改善に資するようにする
6. 2015年までに資金提供を受けた国の75%(100%になるよう努める)が、生物多様性に関する国家財政計画を提出し、30%のそれらの国が、生物多様性の内在的、生態学的、遺伝的、社会経済的、科学的、教育的、文化的、レクリエーション的、審美的価値を査定または評価する。
7. 生物多様性に関する誘導措置(補助金)について、その具体化に向けた手順やマイルストーンを、採択も視野に、COP12で検討する。
<資源動員戦略の検討と、ロードマップ>
8. 資源動員戦略を実施状況をWGRI5thで検討し、最終(2020年までの)目標値の採択をするために、愛知目標20をCOP12で再検討すること。
結局、目標値は暫定という位置づけになり、COP12に持ち越されました。「善きことは カタツムリの速度で動く。」とは、インドの思想家マハトマ・ガンジーの言葉ですが、原案よりもややトーンダウンした内容ではあるものの、無事に合意されたというのが印象です。
COP11で決まった決議の数が全体で34というのも、COP10の47決議と比べれば減っている印象を受けますが、「決議(交渉)よりも実行を」というディアス生物多様性条約事務局長の掛け声のもと、複数のテーマを一つの決議に集約したものもあってのことです。
「実行implementation」が、COP11のキーワードでした。
今回の会議を振り返ると、愛知目標達成に向け、国連機関、IUCN、国、自治体、企業、NGO、先住民地域共同体の様々な取り組みが提案されました。非常に積極的な取り組みが数多く、「愛知目標がみなの共通目標として受け入れられている」という空気は十分伝わってきました。
単に生物多様性条約関連だけではなく、他の環境条約(ラムサール条約や、移動性動物の保護に関するボン条約)国連機関(FAO食糧農業機関、UNDP国連開発計画)などが積極的に発表していました。
企業も一企業というより、もう少し組織だって動いていた印象を受けました。
こんな状況に逆行するように日本人だけ愛知目標のことを知らないなんてことにならないように、日本での活動展開を頑張らなければと、身の引き締まる思いです。
ただし、成果に対しては「良いのだけれども、不十分」というのが、IUCNや他の方の見方ではないかと思います。愛知目標の言葉一つ一つをしっかり読むと、非常に意欲的なことが書かれており、今回刻むことのできたステップは、国際交渉的には常識の範囲内(=大きな飛躍がない)という印象をぬぐえません。
COP12は、韓国で、2014年の後半に行うことが正式に決まりました。COP12は各国の取組みの成果をベースとした愛知目標達成の中間評価を行うことが決まっています。
「見たいと思う世界の変化に あなた自身がなりなさい。」(マハトマ・ガンジー)
これからの2年間は「日本での実施implementation」が課題となります。私たち日本人がどう変わったか、どう行動したかを、2年後に胸を張って発表できるよう、頑張りたいと思います。
ひとまず、これでCOP11国際会議レポートを終えたいと思います。

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する