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第5回IUCN世界自然保護会議(WCC)― 公海の保全に関するワークショップに参加しました。

2012.09.15
活動報告
icon_abe.jpg保護プロジェクト部の安部です。
WCCで9月10日に公海の保全に関するワークショップに参加しました。
 
公海とはどこの国にも所属しない海のことです。例えば北極海や南極海が相当します。
 
今回はワークショップで行われた4つの講演のうちのなかの1つである、
クリスティナ・ギルデ博士の「世界の共有財産である海の管理への挑戦」
というお話しを紹介しながら、公海が抱える問題をお伝えします。
 
「国連海洋法をはじめとしてさまざまな海を守る国際的な取り決めがあるものの、海の64%を占める公海の保全が進んでいない。サルガッソ海という海藻のホンダワラが構成する海を例にあげてお話しする。この海がダメージを受けていることについて、私の他にも心を痛めている人がいることだろう。
 
ホンダワラを基盤とするこの海には、145種の無脊椎生物が棲む海のゆりかごとなっている。そしてここはクジラなど海棲哺乳類の移動ルートともなっている。ここには深海の鉱物資源採取、石油流出、漂着ゴミ、移入種、研究や漁業などのための採取など、さまざまな活動が与える影響が複合的に蓄積されて及んでいる。
最近行われている海のジオエンジニアリング(ocean-geoengineering)という、海に鉄分をまいて二酸化炭素を吸収しようという取り組みは、実は環境に与える悪影響の方が大きいということが最近になりわかってきたが、止められる様子はない。
 
人や生き物には国境は無い、つまり全ての海はつながっているということを認識することが重要である。
 
また地図が示すよう、どの機関にも守られていない海域が公海上には多く存在する(色がついている部分が法律の守備範囲となっている海域)。これに対する対策を取らなければならない。つまり国際的協力が必要である。
 

GAPS_R.jpg

既存の国際機関を活用して、予防原則を導入し、決定プロセスの透明性を確保し、生態学的に重要な海域を決めて、そこから保全を始めたい。条約に加盟しない等の非協力的な姿勢の国にはどうすれば良いか、また管理する人間がいないない場所はどうすれば良いかなど課題は山積みである。」
(右写真:条約等で保全されている海域(色がついている部分)
 
スーザン・リーバーマン博士(PEW財団)は世界の漁業資源の現状を示しながら、保全対策の重要性を訴えました。
 
これらの公海の保全の重要性を説く一連のプレゼンに対し、「とある国」の水産庁の方から反論が出ました。
「何かが起こる証拠もないのに、何も大変なことをしなくても良いではないか。行政の縦割りを解消するのが大変なのは我が国を見てもわかることなので、各国の沿岸域の漁業等を充実させていく方が良いのではないか」とのことでした。
 
それに対し、賛成の意見も反対の意見も出ました。反対を唱えた方の意見を1つ取り上げます。
「長い間、海は私たちを支えてきてくれた。それなのにそのお返しとして今人間は海を痛みつけている。1カ国であれ、世界全部の共通の遺産である公海を痛めて良いものではない。証拠は今日の話で示されたもので十分ではないか。」
 
私としてもこの講演で示された情報と、海がつながっているため人も生き物もゴミも汚染物質も国境を越えてしまう事実と、予防原則を取り入れる必要性から、公海の保全を進めることに賛成です。
 

publicseaws_R.jpg

(左写真:このワークショップのパネリストは5名とも女性でした。今回のIUCN WCCの海の担当者はなぜか女性が多く見られました。海の保全は女性の腕にかかっているのかもしれません。)

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