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2012.02.29

国有林の今後の形が見えてきました。

日本の面積の約7割は森林。森林は木材の生産のほか、渇水や洪水の緩和や良質な水を育むこと、山地災害の防止や二酸化炭素の吸収・貯蔵、レクリエーションや教育の場、野生生物の生息環境など多くの役割を同時に持つ自然環境です。
その中で、国有林は760万haあり、国土の約2割、森林の約3割を占め、約半分の市町村に存在しています。

2011年の1月末から約1年をかけ、林野庁林政審議会の国有林部会では「今後の国有林野の管理経営のあり方について」をまとめ、12月16日に答申しました。
これは林野庁長官から審議会が諮問を受け、それへの答えです。
私もこの全ての論議に参加し、北海道から沖縄までの生物多様性保全に役立つ国有林になるよう発言してきたので、その結果を報告します。

注目したい5つのポイント

今後の国有林のあり方で生物多様性と関係が深いポイントは、5つとなりました。
第一は、「公益重視のより一層の推進」という位置付けです。
具体的には、国有林にかかわって生活される地域関係者や隣接する民有林の持ち主との連携を一層深めることや、AKAYAプロジェクトでは先行しているように、「地域管理経営計画」も役所で案をつくる前段階から地域と相談や調整を行ったり、民有林と国有林が別々のことをするのではなく協定を結ぶ、などの方法を使って健全な森林生態系保全の取り組みを進めることなどがあります。
また、農林業被害や自然植生の変貌や消失の拡大が深刻な鳥獣対策も、地域と一体となって推進すべきとしました。
さらに「国有林の資源管理の高度化と面的な管理」という項目では、多様な生物の生息・生育域の確保といった機能は面的なまとまりをもって対策を行っていくことの必要性を強調しました。

第二は、「森林・林業の再生への貢献」で、大量に山にある造林木を資源化する林業事業体の育成や、担い手となる技術者の育成を図るべきとしました。
どのような保全管理策を考えても、実際に森で仕事ができる人がいなければ放置するだけとなってしまいます。
また、国有林を国産材の供給源として自給率を上げる中核とするとともに、再生可能エネルギーを使い持続的な社会とするため、木質バイオマスなどの新たなエネルギー資源を生み出し、需要に結び付けていくことに積極的に取り組むこととしました。
自然景観や自然湧出温泉地を壊しかねない地熱発電所や、希少猛禽類や渡り鳥にとって致命的なものになりかねない山岳地域への風力発電所の建設よりはるかに確実で自然との整合が考えやすい木質バイオマス発電は、もっと考えられるべきです。

第三は、「山村地域の振興、震災復旧・復興への貢献」で、第四が「組織・人材のあり方」です。
森林管理局・署は、流域を単位に直接国有林の現場にあるため、現在の組織体制を基本にすることとしました。
一方、今後、森林・林業政策を地域で推進する役割を担うには、地域の人材の能力を向上させることが重要としました。
これと関係が深いのが、今後の国有林野事業の経理のあり方ですが、国有林野事業の企業性を廃し、企業特別会計ではなく一般会計で賄うことが適当としました。
ただし一般会計とは経理区分し、林産物収入などにより過去の膨大な債務を返済できる仕組みを構築することと引き換えにしています。

最後に、このような管理経営の方針転換を受け、規定の見直しとともに必要な法制度上の措置の検討をすることとしました。
国有林は、「公共用財産」である道路などとは法的な位置付けが違い、国営企業の「企業用財産」というのが現在の位置付けなのです。
このことが元になり、森は資源か自然かという自然保護問題が多発しました。

これに終止符を打つことができると期待しています。
※詳しくは、林野庁の資料をご参照ください。

 

(横山隆一/常勤理事)

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