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風力発電所建設問題

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2011.11.02

オランダの再生可能エネルギーと環境影響評価制度の現状を視察してきました。

会報『自然保護』2011年11/12月号より転載

現在、政府は風力発電について、環境影響評価(環境アセス)のしくみを決めようとしています。東日本大震災直前の3月上旬、風力発電の環境アセスのあり方、特に計画段階のしくみを知るための環境省総合政策局の調査グループに参加し、オランダとドイツを視察しました。今回はオランダの状況を紹介します。

オランダの風力エネルギーは現在の総エネルギーの4%で、2020年までに20%にまで引き上げる政策目標があります。電力に限れば風力シェアは9%。日本と同様、火力や原子力で電力を増やすことに世論の抵抗は大きいと言います。

まず、フレーボランド州という干拓地にあるワーヘニング農業大学・再生可能エネルギー研究所を訪ねました。ここは大学の実験施設で、大学とオランダの独自資本の電力会社が提携し、06年から風力だけでなく家畜糞尿と飼料残さによるバイオマス発電・発熱も合わせた再生可能エネルギーの生産・利用システムを研究しています。農業とエネルギーの合体は、日本の現実的な打開策として有効と思える施設でした。

オランダには、この種の施設は現在100カ所程あり、ここは123MWの発電能力ですが、最新施設には1.2GW級のものもあるといいます。フレーボランド州の60%はこうしたエネルギーで賄われているそうです。ただし州は、今後の施設の更新では発電能力を強化したものに置き換え、風車の数は減らしていく方針を決めたとのことです。

 

効果的な戦略的アセスの評価

これらの建設と運転は環境問題となり得るので、戦略的(行政意志決定段階)環境アセスの対象施設です。大規模な施設は、自然環境へのインパクトが小さい地域にしかつくれず、産業団地への併設が有力です。洋上発電についても国が風力施設の建設可能な区域を定めていて、この方式は、日本にないものでした。

このしくみを知るため、環境影響評価委員会(NCEA)次長のロブ・ベーム氏を訪問。NCEAは社団法人で、資金は環境、農業、自然文化科学に関する政府官庁からの助成金ですが、信頼性確保の理由から、国や事業者から独立した立場です。

仕事は、環境アセスにかかわる国からの付託事項へのアドバイスと事後調査と保全対策の品質管理。普通この仕事は政府官庁が行うので、特にユニークなしくみだと思いました。環境アセスの知識センターでありヘルプデスクにもなっていて、このしくみも日本にはありません。

オランダの環境アセスのしくみは、EU(欧州連合)指令に基づく環境アセス指令、戦略的アセス指令を基礎に、環境管理法により制度化されています。戦略的アセスが対象とするのは、事業の枠組みとEUリストに基づく自然保護区などに影響を与えるもの。手続きは日本とほぼ同じですが、国がアセスに関してNCEAに付託する事項を決めた後は、NCEAが質を審査し、コンサルタントにアドバイスをします。

NCEAには、政府が女王の任命に基づいて登録した600人の外部の専門家がいます。NCEAの職員(法律専門などのセクレタリー) は、案件に見合う専門家3~5人を選んでチームをつくり、現地視察と2回の会議を行ってレポートを作成し、これに対して所管官庁や事業者が意見を言う、というしくみでした。

どの国の政府でも、事業の許認可前に4つの決定が必要です。

まず①なぜか。なぜ新たな発電所つくるべきなのかというような戦略は、政府、州、市が判断します。実施すべきと決定された後は②どんなものか。電力計画であれば、風力か水力かというプランを考える。そして③どこで、④どのような、という段階を経ます。ほとんどの国は①~③を行政の意思を決定する戦略的段階、④を事業実施段階としています。

日本では、①②に関して政治家の説明がほとんどない中で、③④を事業者が出すということが繰り返されていますが、ここが最も重要な改善点だと思いました。

(横山隆一/常勤理事)

No524活動クローズアップーオランダの風力・ワーヘニング農業大学▲ワーヘニング農業大学の研究所。風力発電は、2.3MW/基の発電能力を中心とするタワー38基で、この施設と南に約100㎞離れた大学本体の電力需要を満たしているという。

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