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2011.07.01

南アルプスは貴重な生物多様性保全の屋台骨

リニア中央新幹線計画について、 意見を提出しました。

会報『自然保護』No.522(2011年7・8月号)より転載


5月12日、国土交通省交通政策審議会鉄道部会中央新幹線小委員会(委員長・家田 仁 東京大学大学院工学系研究科教授)が最終答申を提出し、南アルプスをトンネルによって貫くリニア方式による中央新幹線計画が決定しました。これに先立ち、パブリックコメントが募集されたため、NACS‐Jでは多くの問題を抱えているこの計画について、意見を提出しました。

3月11日に東日本大震災が発生し、甚大な被害が生じました。これまでの既存の安全基準が破たんし、新しい安全対策、経済や社会構造のあり方そのものを再検討しなければいけない状況になりました。小委員会では、東北新幹線の被害が直下型の阪神淡路大震災や中越地震よりも軽微であったことから、想定以上の地震に対しても今の安全基準で十分と結論しています。しかし今回の地震の震源は東北新幹線の直下ではありませんでした。リニア中央新幹線の想定ルートには、中央構造線、糸魚川~静岡構造線といった大断層線のほかにも既知の活断層が多く存在しています。さらに、未知の断層が存在することもこれまでの知見で明らかです。いくつもの断層地帯を横切る計画は危険であり、直下型の地震が起きた場合の想定は必須です。

リニア計画を推進する前に、もう一度これまでの基準を見直し、これからの国土のあり方についての国民的議論が必要です。

 
南アルプスは貴重な生物多様性保全の屋台骨
南アルプス地域は国立公園のみならず、原生自然としての厳重な保全が求められる「大井川源流部原生自然環境保全地域」の指定地も存在しています。この地域ではこれまで、横断する道路は南アルプススーパー林道しか存在せず、限りなく人の手が入っていない状況を維持してきました。こうした大規模な山地で、一般車両が通行できる道路、鉄道、トンネルが全く存在しない場所は、本州では南アルプス以外にはありません。これは、まさに日本の生物多様性を支える屋台骨であり、後世に引き継ぐべき財産です。

こうした環境への影響について小委員会の議論では、「戦略的アセスメントになっておらず、その前段階」、「環境面からはどのルートが最適か判断できない」という意見が出されていました。しかし、最終答申では、「南アルプスルートが最適」と結論されています。これは、明らかに矛盾しています。
今回の小委員会では、合計3回のパブリックコメントを実施しました。しかし、これらの機会に提出された意見に対して小委員会としての回答は示されていません。これでは進め方として不十分と言わざるを得ません。

今以上の高速交通網が本当に必要なのか、私たちは問われているのだと思います。本計画のような大規模な事業はいったん立ち止まり、日本の将来像についての国民的なコンセンサスを再構築し、自然環境に影響を与えてまで進める必要性が本当にあるのかを議論するべきです。今後、事業者による環境配慮書の公開、パブリックコメント、環境大臣意見を経て、アセスメントへと進みます。皆さんも今後の進捗を注視してください。

>>NACS-Jの意見詳細はこちら

(辻村千尋・保護プロジェクト部)

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