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2010.10.06

新戦略計画(ポスト2010年目標)について NACS-Jポジションペーパーを発表

NACS-J(理事長田畑貞寿)は、10月6日に、生物多様性条約締約国第10回会議(CBD/COP10)の開催に向け、ポジションペーパー「生物多様性条約(CBD)新戦略計画(ポスト2010年目標)に向けて」を発表しました。これは、2009年10月にNACS-Jが発表したポジションペーパーについて、特に最重要議題である「新戦略計画」(別名ポスト2010年目標)に焦点をあて、改訂したものです。
また、同日行われた「自然保護NGOと環境大臣との懇談会」において環境大臣に手渡し、議長国として生物多様性保全に向けた活発な議論をすすめることを求めました。COP10の会議場においても、これをもとに提言・ロビングを行っていきます。

 

 Position paper on  生物多様性条約(CBD)

新戦略計画(ポスト2010年目標)に向けて

世界が地球上の生命の未来を約束する最大のチャンス……
「自然と共生する世界」の実現に向けあらゆる政策・取り組みを
「ステップチェンジ」していく
~14+8の意見・提言~
 

新戦略計画(ポスト2010年目標)についてのNACS-Jのポジションペーパー
NACS-J Position Paper on Post 2010 Target

2010.10.06
(全文PDFファイル/602KB 和文・English)

 

1. はじめに

財団法人日本自然保護協会(NACS-J)は、60年にわたり日本の自然保護に取り組んできた。この文章は、生物多様性条約第10回締約国会合(CBD-COP10)の開催に際して2009年10月にNACS-Jが発表したポジションペーパーについて、特に最重要議題である「新戦略計画」(別名ポスト2010年目標)に焦点をあて、改訂したものである。

「地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)」では2010年目標は未達成と評価され、今後の10年の活動が次の世代の未来を左右することが示唆された。このポジションペーパーの根幹を成す主張は、生物多様性の危機状況を脱するために、政府、企業、教育研究機関、自治体、そして何より、NGO/NPOや地域社会の生物多様性の取り組みを活性化していかなければならないというものである。

特に、新戦略計画の戦略目標D「生物多様性の恩恵を強化する」は、NACS-Jが進めている自然保護の活動において重要な点である。NACS-Jが考える自然保護は、単に自然だけを守るということではなく、生物の多様性がもたらす恵みを地域社会が実感し、将来世代にわたって享受していく社会をつくり上げること(目標14)にある。そのために今残されている生物多様性を保全していく取り組みこそが、気候変動への適応をはじめ、私たちの社会の安全・福祉・安心の保障や豊かな社会の実現につながる(目標15)。また、生物多様性の保全を担う地域(途上国や過疎地/里やま)と利用する地域(先進国や都市部)が負担・利益を分かち合うこと(目標16)を意識して、活動を進めている。

NACS-Jは、2010年CBD-COP10を全世界が地球上の生命の未来を約束する最大のチャンスとして捉えている。そして、生物多様性の保全にむけ「ステップチェンジ」していく第一歩とするため、生物多様性条約市民ネットワーク提唱の「国連生物多様性の10年」決議を支持し、その他の国際団体との連携も視野に入れながら、COP10への政策提言と、COP10後の生物多様性保全型社会の実現に全力で取り組みたい。

2. 新戦略計画のビジョン・ミッションへの意見・提言

『未来像「自然と共生する世界」の実現を国際政治の最優先課題とし、締約国に強い意志と実行力を求める』

NACS-Jでは、2009年ポジションペーパーにおいて「2050年までに、生物多様性の状況を2010年のレベルかそれ以上で維持し、人と自然の持続可能な関係を構築する」必要があることを指摘した。新戦略計画(条約事務局案)のビジョン・ミッションに、NACS-Jの意見と合致する提案が盛り込まれており、基本的に賛同する。

具体的には、ビジョン「自然と共生する世界」を実現するためにミッション・目標は、より意欲的でなければならず、「2020年までに生物多様性の損失を止める」(案2)だけではなく、2020年より早く損失を食い止め、同時に生態学的アプローチにもとづいた回復・修復も行わなければならない。これらを、全世界の共通認識として、あらゆる効果的な取り組みを最大化しなければ、生物多様性の状況が劇的に悪化する「臨界点(ティッピングポイント)」を越えてしまうことを回避できない。

特に、生物多様性損失の根源となる要因は、社会や経済に深く入り込んでいるため、効果的な取り組みを政策改革として早急に行うことが最重要課題である。貧困や格差解消のためにも、生物多様性保全を温暖化対策と並ぶ国際政治課題として位置づけ、政策・施策へと転換していく強い意志と実行力が各国首脳(政策決定者)に求められる。

3.新戦略計画の目標への14の意見・提言

(1)生物多様性の損失の根本原因に対処する
① 『すべての人に生物多様性の教育の機会を保証した上での理解促進を』(目標1)
NACS-Jは、発足以来、地域の自然保護と自然保護教育に取り組んできた。その経験から、すべての人々が生物多様性の価値を「認識する」ことは非常に重要と考える。ただし、ここで言う「認識」とは、人々が自ら気づきわかることであり、生物多様性の価値を、政府が「広報」するだけのものとは、まったく異なる。「自らの気づきを引き出す」のは、本来の教育が持っている力であり、そのような教育の機会を学校教育、社会教育などにおいて、途上国を含めたすべての国、すべての世代の人々に保障することこそが、締約国の責務と考える。

② 『 “国の豊かさの指標” に生物多様性を加え、保全が前提となる国家運営を』(目標2)
生物多様性の価値を、GDPなどの経済尺度以外の尺度として政府の国家勘定に組み込み、生態系サービスの観点からその保全が国の豊かさにつながることを世界の共通認識とする必要がある。その上で、将来の国土利用と地域社会の構造にかかわる国土のグランドデザインにも、生物多様性の保全を組み込んでいかなければ「自然と共生する世界」を形成できない。また公共事業についても、短期的な経済発展や基盤整備にとらわれることなく、長期的な豊かさをもたらす生物多様性の保全を目的としたものへ転換していくことが重要である。それには、これまで開発を優先し、生物多様性の損失を引き起こしていた計画プロセスや環境影響評価などの法制度についても、生物多様性の保全を前提とした法体系へと転換していくための点検と整備がまずは急務である。

③ 『生物多様性に有害な補助金を撤廃し、保全の奨励措置を推進する』(目標3)
生物多様性を損なう破壊行為へのあらゆる予算措置(国内の補助金・海外への援助)を廃止しなければ、根本原因への対処にはならない。目標3の文案にある「奨励措置」は海外援助や助成だけでなく、政府が関与する補助金・交付金・公的助成金なども含まれる目標でなければならない。破壊行為のインセンティブを減らすことによって財源(予算)を確保し、それを生物多様性の保全および復元のための直接的な取り組みや、それを促進する資金メカニズム(例えば保全型農業への直接支払いやエコラベル・エコポイントといった奨励・認証制度)へと転換すべきである。

(2)生物多様性への直接的な圧力を減少させ、持続可能な利用を推進する
④ 『地域固有の生物多様性はオフセットできない』
生物多様性は地球誕生からの歴史と進化の産物であり土地固有のものであるため、他地域のものと代替することが極めて困難であることを認識しなければならない。生物多様性オフセットや市場メカニズムなど経済的手法を通じて代償を促進するのではなく、損失を回避し現状の保全を最優先させるべきである。オフセットを含む代償措置は、回避も最小化も不可避であると証明・審査できる環境影響評価制度にもとづくものでなければ、推奨すべきではない。

⑤ 『持続可能な保全型農林漁業へ大きく転換する』(目標6,7)
日本をはじめとする先進国の多くは、他国から農作物、木材資源を輸入している。輸出国においては過度な資源利用により生物多様性が劣化し、算出国が本来享受すべき生態系サービスを失い、伝統的な農林業の継続が困難になり、貧困を生んでいる。各国が生物多様性に配慮し、持続可能な農林漁業へ大きく転換していくには、世界規模の物流をはじめ大規模化・効率化の流れを見直し、地域固有の伝統的な方法を活かし、地域社会に見合った生物多様性保全型の農林漁業を進めていく必要がある。
特に、漁業において、2020年までに海洋資源の持続的な管理を目指し、漁業資源の乱獲、破壊的な漁法が撤廃され、違法・無報告・無規制な漁業(IUU)を停止すること(目標6)は、世界の共通目標とならなければならない。そして、持続的な農林漁業の推進のため、すでに導入され始めている認証制度をすべての産物に普及・強化することが目標(6,7)に盛り込まれる必要がある。

⑥ 『生物多様性の宝庫であるサンゴ礁や沿岸域の破壊行為を止める』(目標10)
サンゴ礁をはじめ脆弱な沿岸生態系に迫る危機は、気候変動や海洋酸性化だけではなく、従来以上に開発行為による直接的破壊や汚染物質の流入などが大きくあり、十分気をつけなければいけない。締約国は、海岸線を改変する開発行為や汚染物質の流入が、生物多様性の脅威・損失になっている現状を十分に検証し、その反省のもと、沿岸域の破壊行為を止めなければならない。

(3)生物多様性の状況を改善する
⑦ 『面積だけの保護区設定から、効果的な保護区の管理へ』(目標11)
生物多様性損失の直接的要因や間接的要因の対処に、最も効果的なツールが生態系レベルでの取り組み、すなわち「保護地域」である。この目標で重要なことは、保護地域の面積だけでない。あらゆる生態系タイプごとで保護地域を設定すること(代表性)、生態学的コリドーで近接する保護地域との連続性を図ること(連続性)、過剰利用や盗掘といった人為的インパクトを排除し、地域の文化・暮らしと結びついた持続的な利用を考慮した総合的な管理を行うこと(効果的な管理)、保護地域の周辺においても生物多様性保全の整合性を図ること(ランドスケープレベルへの統合)が目標に組込まれていることが重要である。

⑧ 『実効的な海洋保護区の設定を促進する』(目標11)
沿岸と公海を合わせて15%を2020年までに保護地域にする目標(COP9決議IX/20)の実現のために、重要な海域の特定と海洋保護区のネットワークの設定を促進しなければならない。効果的、実効的な海洋保護区の設定には、原生的な自然状態にある海域を可能な限り含めること、地域住民・漁業者を含む多様な主体が関与することが不可欠である。行政上も環境・河川・水産・港湾などの縦割りを廃し、協力の議論のもと、実効的な海洋保護区の設定することが重要である。

⑨ 『保護回復計画にもとづく絶滅危惧種の保全活動を強化させる』(目標12)
「2020年までに既知の絶滅危惧種の絶滅、減少を防止する」(目標12)ことを達成するには、「少なくとも絶滅危惧種の10%は状況が改善される」といった数値目標を明記しなければならない。また、これらの目標を達成するためには、種ごとの保護回復計画をつくることを法的に確保し、行政・市民・NGOが協働のうえ、具体的な行動に移されていくしくみが整備されなければならない。また、科学的な調査にももとづく絶滅危惧種の現状把握および生物多様性のホットスポットの特定と生育・生息域内保全の強化が不可欠である。

(4)戦略計画の実行力を高める
⑩ 『すべてのセクターが「主体」となった国家戦略の立案・実行・評価が必要』(目標17)
生物多様性国家戦略・行動計画が様々なセクターによって主体的に実行されていくためには、戦略そのものが自分たちのものとして認識されることが重要である。そのためには、多様な主体が計画・実行・評価の全プロセスに、求めに応じて「参加」するのではなく、「実施主体」として参画するしくみが求められる。

⑪ 『生物多様性を尊重した伝統的知識を掘り起こし、継承する』(目標18)
持続可能な暮らし方を見つけるためには、生物多様性を尊重してきた伝統的知識を見直し、現在の暮らしの中に活かしていくことが重要である。経済大国日本においても1950年代までは地域の智恵の多くが受け継がれていた。急速にすたれ始めた伝統的知識を、各国で掘り起こし継承することは今ならまだ可能であり、2020年までに達成すべき目標である。

⑫ 『人材育成のリーダーを育て、能力を増やす』(目標20)
条約の実施には、2020年までに人的能力を増加させることは必須である。ただし、専門家・行政関係者だけが10倍になればよいのではない。すべての人が生物多様性の価値を認識するだけでなく、正しい知識を持って保全のために行動しなければならない。伝統的知識の掘り起こしとともに、地域社会が担ってきた人を育てる力を改めて見直すべきである。人材育成リーダーが市民の中にいることの価値を高く認識するとともに、生物多様性保全に関する教育・人材育成システムを、行政・企業・地域社会・市民の各セクターにおいて構築することが必要である。

(5)計画実現に有効な実施・支援メカニズムを特定、推進する
⑬ 『地球規模モニタリングに資する市民やNGOの取り組みを推進する』
地球規模モニタリングに資するような広域的・長期的な生物多様性のモニタリングネットワークを確立するためには、市民やNGOが主体となっているモニタリング事業を不可欠な要素として取り込み、戦略的に発展させていくことが重要である。地域社会の市民が地域の生物多様性と自ら享受している生態系サービスをモニタリングすることは、生物多様性への理解と保全の促進にもつながるため、市民によるモニタリング調査を新戦略計画実行のための不可欠な実施メカニズムと位置づけるべきである。

⑭ 『生物多様性の本質と、保全の取り組みが正確に評価される「指標」を開発する』
GBO3などを通じてモニタリング・評価の指標開発が進んでいるが、生物多様性の状態を測定する指標は、生物多様性の構成要素(バイオームの面積や絶滅危惧種・特定種の個体数など)に偏っている。森・川・海といった異なる生態系間の連続性や、物質の動態、撹乱、種間相互作用など、機能・プロセスに着目した指標の開発が必要である。また、保全策の進捗を評価する指標として、自然保護活動・自然環境調査に参加している市民の数や、伝統的知識や慣習により事実上守られている地域の面積もしくはそのコミュニティに暮らす人口などを加えるべきである。

4.日本政府への8の意見・提言

日本政府には、生物多様性保全の節目となるCBD-COP10の議長国として、新戦略計画の実行をリードしていく姿勢と責任が求められる。NACS-Jは、日本政府に下記の行動を求める。

<法制度の見直し>
① 『種の保存法を実効性ある制度に見直す』
日本政府は、「絶滅危惧種の絶滅の防止」(目標12)を率先して達成するために、「種の保存法」を、実効性のある制度に大幅に改正すべきである。具体的には、レッドリストを法律上に位置づけ、すべての絶滅危惧種を回復(デリスト)させることを目標とした法律とし、種ごとに実効性のある保護回復計画を策定・実行し、絶滅の危険性に応じて予算配分していく必要がある。計画実施にあたっては、行政・市民・NGOと協働で進めることや、具体的な目標値や行程が明記されること、定期的に回復計画を見直すことが担保されるよう、体系的に改正すべきである。

② 『生物多様性地域戦略計画を開発の上位計画に位置づけ、戦略的環境影響評価制度を導入する』
COP10を期に、各地方自治体が生物多様性地域戦略計画を策定・着手しはじめたことは評価する。「国と地方の開発の戦略・計画プロセスに生物多様性を組み込ませる」(目標2)とあるように、開発計画や河川・海岸等の公物管理計画、漁業等の資源管理計画を含むあらゆる国土管理計画の上位に生物多様性国家戦略や地域戦略計画を位置づけ、戦略的環境影響評価制度の導入と合わせて、地域の保全管理と持続可能な土地利用が導かれるよう計画制度を体系づけるべきである。

<河川生態系の保全>
③ 『川の生物多様性を損失してきたダム・堰事業を見直す』
ダム・堰は、川の連続性を断絶し本来もつ川の機能を損ない、流域から海域にわたり生物多様性を損失させ、生態系サービスを低下させてきた。政府は、この反省に立ち、陸水域や汽水域の生物多様性の損失を止めるため、工法や環境配慮にとどまらずに、「治水のあり方」をはじめとする河川管理の根本を見直し、「森・川・海」の連続性を確保した国土管理のあり方を省庁の縦割りを越えて実現すべきである。

④ 『渓流環境の修復のために治山(砂防)ダム撤去・改修を推進する』
全国に多数設置された治山(砂防)ダムは、災害防止に貢献する一方で、渓流の連続性を分断し、渓流本来のダイナミズムを阻害するなど、生物多様性に悪影響を及ぼしてきた。これらのダムの寿命は50~100年程度であるため、今後多くのダムの改修が必要となる。森林の回復によって、ダム設置当時よりも災害の危険性が低下した場合もあるため、災害の危険性および災害防止の必要性を改めて検討し、ダムの撤去、スリット化も含めた改修を進めるべきである。政府は、科学的な検証のもと、渓流環境の修復を目指したダム改修の指針をつくるべきである。

<海域生態系の保全>
⑤ 『海の生物多様性を損なう沿岸域の埋め立てをやめる』
日本政府は、生物多様性の脅威となってきた海岸線・沿岸海域の開発の失敗を再検証しCOP10 開催国としてふさわしくない沿岸域の破壊行為をやめることを決断し、沿岸保全管理や保護地域化などを検討すること。特に、沖縄のサンゴ礁域(泡瀬干潟や辺野古・大浦湾など)や閉鎖性海域(諫早湾や瀬戸内海・上関など)は緊急の現場課題である。

<環境・自然管理>
⑥ 『科学的なモニタリングにもとづく環境管理と地域づくりを進める』
NACS-Jが土地所有者(国有林)、行政、地域と進める群馬県の「AKAYAプロジェクト」や宮崎県の「綾の照葉樹林プロジェクト」は、科学的なモニタリングにもとづく生物多様性の保全と持続的な地域づくりを目指している。政府はこのような先駆的な地域環境管理の事例を手本として、あらゆる主体が、生物多様性の保全・復元に資する役割を担い、生物多様性を活用する社会を実現するための枠組みを形成していく必要がある。

⑦ 『魚の放流やサンゴ移植など資源回復行為の遺伝的攪乱について十分考慮する』
現在各地で天然食料資源や観光資源の回復を目的とした稚魚の放流やサンゴ等の生物の移植が行われているが、それらの資源が生物多様性そのものであるという認識が薄い。資源回復事業にあたっては、その種の生態系の中での役割や他種との種間相互作用があることを認識し、その種の生活史全体の健全性を保障・回復していくこと重視し、進化の過程で形成された遺伝的な固有性や構造を損なわず、将来的に生態系への影響が出ることのないよう配慮する必要がある。実施にあたっては科学的な評価検証や予防原則にもとづく対策を講じることが重要である。

<環境教育>
⑧ 『義務教育の中に生物多様性保全を盛り込む』
生物多様性保全の考え方なくして、人類の幸福な未来はない。目標1を実現するためには、読み書き手習いと同様に、生物多様性への理解のために体験を含む基礎からのカリキュラムを、すべての国民が享受できるよう、具体的に義務教育に盛り込んでいく必要がある。目標17、19の実現につなげるためにも、あらゆる社会活動の基礎に生物多様性保全の考え方を常識としていかねばならない。

5.NACS-Jの行動計画

 これから、新戦略計画によって、日本の生物多様性は確実に保全され、社会全体が「自然と共生する世界」に向け、様々な政策・取り組みを「ステップチェンジ」していかねばならない。そのために、NACS-Jは、会員(2万1千人)や支持者を増やし、地域の自然環境保全を担う市民や専門家とともに地域の暮らしに根ざした生物多様性の保全を加速していく。この目標達成のために、次のような行動・プロジェクトを推進し、その成果により世界の生物多様性の保全に貢献していく。

<開発事業などにより危機に瀕した場の保護>
・日本においては、海岸の埋め立てやダム、発電施設の建設等の、生物多様性を劣化させる開発事業が未だに政府主導で行われている。開発事業や環境影響評価制度の運用の監視、法制度への提言を通じた、生物多様性の損失要因を確実に除去するための行動を進める。

<多様な主体による生物多様性保全と持続的利用のモデル構築>
・地域住民、行政機関と協働で進める「AKAYAプロジェクト」、「綾の照葉樹林プロジェクト」等、地域生態系管理にもとづく持続可能な地域づくりの先駆的事例を進め、保全管理のシステムを構築する。

<市民・科学者のネットワークによる地域生態系モニタリングと保全>
・世界自然遺産地域をはじめとした自然保護区や地域において重要な身近な自然、あるいは里やま、干潟、海岸といった国土全体の生物多様性について、各地域の市民を主体としてそのモニタリング・評価・保全活動が進められるよう、活動を展開していく。
・科学的情報の活用にあたっては、政府と市民・研究者のインターフェイスとしての役割を果たす。
・助成事業を通じ、全国各地における市民・研究者による調査・教育活動などを推し進めると同時に、両者の交流を図る。

<生物多様性保全の担い手育成と教育普及活動>
・市民ボランティアであるNACS-J自然観察指導員を全国各地で養成し、活動のフォローアップやサポートを行うことで、地域の社会における生物多様性保全のリーダー(担い手)を育成し、地域ごとの生物多様性の価値を社会に浸透させる。
・行政、企業ほか、広く一般に向けて、生物多様性の保全を支えるライフスタイルへの転換を促し、生物多様性の正しい理解のもと、生物多様性の保全に向けて行動することができるよう、普及教育を行う。

<生物多様性と市民の接点をつくりだす参加型プロジェクトの推進>

・多くの市民が、自分たちの地域の自然やそこからもたらされる生態系サービスの価値に気づき、関心を持つために、①地域の生物多様性および生態系サービスのモニタリング活動、②生物多様性の守り手の育成、スキルアップ、③地域の生物多様性を実感するプログラム(観察会、調査、セミナー、スタディツアー、媒体)の開発・普及、④市民活動と企業、自治体の協働、マッチングの促進、を実施する。

以上

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