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2010.09.01

ついに全国規模の1年分のデータが集結! 日本の里やまの生物多様性の現状は?

会報『自然保護』No.517(2010年9・10月号)より転載


NACS-Jは100年間にわたって全国の里やまの生物多様性の変化を捉えることを目的とした「モニタリングサイト1000里地調査(以下、里地調査)」(環境省委託)を実施しています。2009年度の調査には、全国1200人以上(のべ1万8000人)の調査員が参加され、約22万6000件のデータを寄せていただき、事業開始以来初めて全国規模(図1)の1年分のデータが得られました。その結果、植物2335種、鳥類156種、中・大型哺乳類18種、チョウ類115種を記録することができました。
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▲図1(左) : 2009年度までにデータの提出があった調査サイトの分布 /図2(右):1サイトで記録される各分類群の在来種の種数の全国平均。ただし植物は木本と同定の難しい種群(シダやイネ科)を除いた種数。

森林の分断化や伝統的管理放棄の影響が明らかに
100年間の1年目のデータが得られたにすぎませんが、今後各サイトの変化傾向を知る上での基準点が把握できたといえます。また、「里やまを歩くと何種類くらいの生物に出合うか(図2)」「アカガエルやホタルは普通どれほどいるか」といった、里やまの生物多様性の現状や全国的な傾向も浮き彫りにできました。
 
里やまの生物多様性は、現在さまざまな要因によって脅かされています。衰退要因のひとつに「開発行為による生育生息地の破壊・分断化」が挙げられます。都市化の程度が異なる全国の調査地のデータを比較した結果、周辺に森林が少ないサイトでは、植物も、鳥類も、哺乳類も、チョウ類も種の多様性(種数)が低い状態になっていることが明らかとなり(図3)、森林の連続性を確保することの重要性が確認されました。

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▲図3 : 調査サイトの周辺の森林面積比率と、各分類群の在来種の種数との関係。森林面積比率は、環境省の植生図(第2~5回自然環境保全基礎調査)を用い、サイトの中心点から半径1kmの円内における森林の面積比率を求めた。棒グラフの高さは全国の各サイトの記録種数を森林面積比率別に平均した値を表したもの。

「伝統的管理の放棄」や「圃場整備」も里やまの生物多様性を脅かす要因です。全国の調査の結果からは、カヤネズミやアカガエル類、ホタル類が「確認できるが生息面積や個体数が非常に少ない」状態にあるサイトの割合が高いことが明らかとなりました(図4)。カヤ原のように定期的なかく乱が必要な環境や、水辺としての重要性をもつ昔ながらの水田・水路の環境が多くの場所で少なくなっており、このような環境を保全再生することの必要性が示唆されます。

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▲図4 全国のサイトでのカヤネズミ、カエル類、ホタル類の調査結果 

生物多様性を脅かすもうひとつの要因である「外来種の侵入」についても、例えば特定外来生物のアライグマの生息を愛媛県で初めて確認するなど、個々の外来種の分布状況(有無や個体数)の全国的な傾向を把握できました。
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▲センサーカメラによって、愛媛県で初めて確認されたアライグマ。 

このほかにも、記録される在来種の種の構成や個体数の地方ごとの差が定量的に把握できたり、各サイトで特徴的な種(個体数が多い、ほかのサイトでは記録されにくいなど)を明らかにすることで各サイトの個性・重要性を捉えることができました。

調査結果を保全に結びつけるために
毎年続けるモニタリングは、言い換えると「生物多様性の健康診断」です。今年度は、生物多様性の現状を毎年皆さんに定期的に伝え、変化の兆しがすぐ読みとれるような「健康診断書」をつくる予定です。
 
また、全国のサイトのデータを比較することで、悪影響を与える要因の特定や環境変化の影響予測、外来種管理や保護区設計などにも繋がると考えています。調査成果を具体的な施策に結びつけることを目指し、対象とする行政施策の洗い出しやデータの発信方法の検討を進めているほか、学会やJ-BON(生物多様性観測ネットワーク日本委員会)への参加を通じて研究者らとの意見交換を継続しています。行政への効果的な働きかけができるよう、現場の調査員との連携体制づくりも今後進めていく予定です。

皆さんのご協力を求めています!
ただ、里地調査のデータだけではサイトが都市近郊に集中しているなどの限界もあります。会員の皆さん(特に郊外にお住まいの方!)も、里地調査や自然しらべ、生きもの情報館の活動に参加し、ぜひ日本全体のモニタリングにご協力ください!

(高川晋一/保全研究部)

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