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2010.03.01

全国各地のイヌワシ調査方法の基準を示し、赤谷からモデルを提案する。

群馬県みなかみ町の赤谷川上流の集水域で進めている「AKAYAプロジェクト」は、プロジェクト開始以来、保全策の根拠をつくるため多くの生きものの調査研究を行っています。その中でも、大型猛禽類であるイヌワシ・クマタカの2種類は、生物多様性の変化を計る指標生物として最も重要なモニタリング対象のひとつにしています。

特にイヌワシは、多様性の保全に注目する時代になったにもかかわらず、全国で繁殖つがいは減少し続け、四国からは残念ながら消失してしまったことが分かっ
ています。その要因は、自然林を人工林に置き換え、必要以上に増やしたものの収穫や管理がおろそかにされているというマイナス効果の総合で、これがイヌワ
シを通してはっきり見えてきたと考えられています。イヌワシが昔から暮らしてきた地域では、この生きものが健全に子育てをし、常に一定の数が生息できてい
るかどうかは、自然の質と量を同時に評価する「ものさし」になるのです。

20100301AKAYA_イヌワシの生息環境.jpg

 

 

 

 

 

 

 

▲AKAYAプロジェクト・エリアのイヌワシの主要な生息環境(2004年3月)

20100301AKAYA_イヌワシ2.jpg

 

 

 

 

 

 

 

▲赤谷にすむイヌワシ。雌雄とこの年生まれた幼鳥の止まり行動(2006年12月)

イヌワシに悪影響を与えかねない不適切な調査の問題

イヌワシを指標にした地域の自然性の評価には、イヌワシの存在や暮らし方を調べなくてはなりませんが、簡単なことではありません。ところが、いろいろな行政機関や団体が事業にかかわって行っている調査の中で、熟練を要する目視による丁寧な観察を十分せず、自動撮影のビデオ機材を安易に使って繁殖を妨害したり、捕獲して発信機をつけることをむやみに推奨するかのような情報提供がなされていることが問題になっています。

こうした悪影響については、本来、環境省を中心とした行政指導のチャンスがあるのですが、ルールも体制も十分ではないため、イヌワシへの影響が最小限で、かつ有効な調査方法の基準づくりが必要となってきています。

イヌワシ生息環境保全調査事業検討委員会発足

そのような状況の中で、昨年から赤谷で開始したことに「イヌワシ生息環境保全調査事業検討委員会」(林野庁関東森林管理局設置)があります。ここでイヌワシ調査をめぐるいろいろな問題、特に調査機材の「使用の原則(目的との整合性と、倫理のあり方)」をまとめ、イヌワシに対して最も悪影響が少ない効果的な調べ方、モデルにすべき方法論を示そうというものです。

検討項目は、
(1)目的別に行うべき目視調査法、
(2)発信機や自動撮影ビデオのあるべき用い方(手法を採用する際の条件、実行の際の原則)
(3)餌状況の調査方法
(4)モデル地域での調査の組み立て方 です。

この委員会での検討結果は、全国の国有林内での調査活動に波及させることが目標です。少なくとも、日本の森林の多くを占める国有林の中で行おうとする調査活動には、きちんとしたチェックがなされる状況をまずつくりたいと考えています。

(横山隆一・NACS-J常勤理事)

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