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2009.09.03

生態系区分でみえてきた小笠原の独特な自然。

会報2009年9/10月号より転載


世界自然遺産登録を目指す小笠原では、さまざまな自然再生事業や外来種対策が行われています。しかし、こうした事業の設定範囲の多くは、実際の生態系の広がりと十分合っているとは言いがたい状況にあります。そこでNACS-Jでは、小笠原の生物多様性保全を確実に進めるために、自然の成り立ちを重視した「生態系区分」が必要だと考え、独自にジオエコタイプ(GET)による区分図づくりを進めてきました。地形や地質と生きものの分布を重ね合わせGET区分で表すと、小笠原の環境がいつ、どのようにして成立してきたのかが読み取れてきました。

自然の成り立ちを分析し、自然再生事業の提案を行う。

図1は、小笠原諸島父島の相関植生図(図a・優占している種を指標に区分した植生図)と、地形分類図(図b)を重ね合わせてつくったGET区分図です。
図1中の丸で囲った父島中央東部は、父島の中で最も小笠原の自然の姿をよく残し、絶滅の危機に瀕した植物種が多く生育している場所です。

090901GET区分図.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、標高200m以上の緩斜面と平坦地がある小規模な盆地状の地形で、相対的に水が集まりやすく土壌も厚い場所です(図2)。この場所は、最終氷期※には海面が100~120m低下したため、その当時は300m以上の標高となり、雲霧帯の下限ぎりぎりにかかる環境だったと考えられます。このため湿度が高い環境に適応した植生が展開しました。
その後、海面が上がり、徐々に標高が下がるとともに乾燥化し、今のように乾燥環境型と湿性環境型の混在した地域となった成り立ちが、地形分類と地史から推測できます。この過程を経てきた成り立ちが、多様な環境と絶滅危惧種が多いことの理由だと考えられます。

090901父島の断面図.jpg

図2:父島の断面図。乾燥環境型と湿性環境型の植生が混在する盆地状の地形。

 

 

次に、こうした「自然の成り立ち」と今の状況を合わせて考えることで、今後の自然再生の方向性や優先度を検証してみました。中央東部と同じような基盤の地形・土壌環境を持つ、標高200m以上の盆地状の地形条件となっている所を抽出してみた結果、同じような環境が北東部と南部の2カ所にあることが分かりました。この2カ所は戦前の開墾による畑作利用など人為的な影響が及ぼされる以前は、中央東部と同じような環境をしていたと考えられます。

つまり、この2カ所は元々は島の特徴的な環境が広がっていた地域であり、中央東部と同じ環境を目標とすべき場所として、自然再生・修復事業を進めるべき場所であることがみえてきたのです。この結果からNACS-Jは林野庁や環境省に対し、この2カ所を自然再生・修復の対象地域として具体的にどんな対策が必要かを提言し協議を続けています。

(辻村千尋 保護プロジェクト部)

※地球の環境が今より寒冷で、氷河が発達した時代。特に最後の氷期(最寒冷期が2万年前で1万年前に終了)を最終氷期という。
☆本事業は(財)自然保護助成基金の助成により実施しました。

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