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熊本県知事が計画白紙を表明! ダムに頼らない流域管理・再生の実現へ

2008.11.01
活動報告

会報『自然保護』2008年11/12月号より転載


9月11日は、川辺川ダム問題に取り組んできた住民団体、熊本県内・県外からこの問題に注目し応援してきた人々、そしてNACS-Jにとっても、記念すべき日となりました。

建設の是非をめぐり42年間も地域を翻弄し続けてきた川辺川ダム計画に、蒲島郁夫県知事が県議会で、「球磨川は守るべき宝」としてNOを突きつけ、ダムに頼らない総合的な治水を国に求めることを表明したのです。この知事表明が、地元団体の皆さんの粘り強い、長年の活動の成果であることは言うまでもありません。

地元の自然観察指導員の協力要請から始まったNACS-Jの川辺川の保護活動は、ダム建設予定地周辺のクマタカ生息調査にはじまり、固有希少昆虫類やコウモリの生息する洞窟調査や尺アユ調査などで河川全体の生態系への悪影響を指摘してきました。

081101川辺川

また、川辺川ダム計画や既存の市房ダムや荒瀬ダムが河川生態系だけでなく、八代海の沿岸域生態系や漁業へも悪影響を及ぼすことを、多くの研究者・地元団体とも連携・協力しながら指摘し、ダム計画の白紙撤回を求め続けてきました。

 

亡霊ダム計画は温存すべきでない

この過程と知事の決断を、いかに川辺川ダム計画の完全中止と全国のダム問題の解決に波及させ、これからの河川環境管理を真の生物多様性の確保につなげる転換ができるかが行政・政治に向けた最大の課題であり、NACS-Jの役目でもあります。

時は、総裁選と内閣の転換期。大臣、首相も、「知事の判断は重く受け止める」「ダム計画は見直す」ということ以上の発言は控えているように見え、国土交通省が政策転換したという姿勢は見えてきません。これまでの地元の経緯と社会の反応からも、亡霊のように川辺川ダム計画を「穴あきダム」などで温存することは許されません。

構図が同じ全国各地の計画中の巨大ダムも、この機会に見直すシステムが必要です。97年に河川法を改正し、自然環境重視や住民参加を盛り込んだものの、自然環境に影響を及ぼすダム計画を撤回せず、各水系の流域委員会は機能不全に陥っています。法制度も含め、もう一度、河川行政全体で現代的な見直しを行う時にきているのです。

川辺川と本流の球磨川、そして八代海……。球磨川流域は、さまざまな恵み(生態系サービス)に支えられた農林水産業や観光などによって、安定的な経済・財政を築いていける潜在的な地域性を持っています。この恵みをこれからも受け続けるには流域全体の生態系の健全性を取り戻すことが必要で、今後は荒瀬ダム撤去も含め、遊水池機能を持った氾濫湿地を再生するなど、新たな治水の方法で「流域再生・管理」に取り組むことになるでしょう。

そのためにも多くの住民・関係者を巻き込みながら、「川とのつきあい方」を追及することが何よりも重要です。全国で地域のさまざまな恵みを失わせてきたダムをもう一度見直し、あるべき川の姿を呼び戻すことへつなげていきたいと考えます。

(保護プロジェクト部・大野正人)

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