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2007.01.01

やんばるでの保護林設定に合意 中核地域を自然保護区に。

沖縄県、沖縄島北部、山原。米軍北部訓練場となっている国有林を、返還後にどう扱うかを定める林野庁・九州森林管理局の検討委員会が2006年10月17日に開催されました。そこでは、林業に使用する木材生産林は設けず森林生態系保護地域などを設定すること、リュウキュウマツ人工林を自然林に戻していくよう再生事業地とすることなどを決め、困難だったまとまった規模の自然保護区づくりに、ひとつの道が開けました。

2007年1/2月号より転載


 

固有種の宝庫・やんばるの森にある三つの脅威

森で覆われたこの地域は、島の自然史を反映し、大陸や熱帯とつながりが深い生物の生育生息地として知られてきました。ケナガネズミ、トゲネズミといった哺乳類、ヤンバルクイナ、ホントウアカヒゲ、ノグチゲラといった鳥類、イボイモリなどの両生類、ヤンバルテナガコガネに代表される昆虫類、あらゆる生き物の中に固有種がいて、日本を特徴付ける代表的な自然です。ところが、この自然には主に3つの脅威が降りかかり、取り除けないまま今日に至っています。

3つの脅威とは、

①戦後のダム開発や、復帰以降の農林業拡大のための森林伐採による森と渓流環境の変質・縮小・消失。以前より開発規模は小さくなったものの、産業用に使うと決めた森林は補助金で開発され、自然性を守る機能は後回しとなっています。

②肉食の哺乳動物による捕食圧。もともと沖縄島に肉食の哺乳動物はいませんでしたが、人に放されたマングースが北部に侵入、イエネコの野生化もあり、森が安全でなくなっています。元来の食物連鎖の頂点はハブなので、在来動物たちは肉食の哺乳動物を避けるすべを知りません。

③重要地域を占拠する軍事施設。そのためにまとまった自然保護区がとれず環境が悪化しています。今までは、わずかに鳥獣保護区、国定公園、天然保護区域があるのみで、リュウキュウアユのように、新種と記載される前に県内から絶滅させてしまったものすらいるのです。琉球列島は、世界自然遺産候補地になっていますが、やんばるを守る方策がない中では、検討すらおぼつきません。

 

再開された委員会で保護と再生・環境教育の場とすることで合意

NACS-Jは1994年から3年間、やんばる保護のキャンペーンを進め、同時期、最も多くの土地を占拠している米軍北部訓練場返還の動きも起きたことから、97年にこの検討委員会の発足をみました。

私は01年までの4回にわたる検討会議と各種の資料づくりに参加、沖縄島の中央部に連なる脊梁山地の西は村有地や私有地ばかりのため、まず東に広がる約3400haの国有林でまとまった保護地域を確保する提案を行いました。この地域は、ほとんどがイタジイの自然林で覆われています。ところが度重なる米軍問題で返還は延期、検討会も中断。今回、5年半ぶりにようやく再開され、先の中間取りまとめに至りました。

協議したのは、地域と林業の代表も入った委員12人。経済利用したいとの強い希望も出たものの、時代の要請を踏まえ、保護林の設定と再生事業、環境教育の場とすることなどで合意しました。やんばる地域の林齢を見ても、この地域は中核の地域です。07年3月、森林生態系保護地域設定委員会に改組され、実際の生態系の広がり方に基づいて区域検討をすることも予定され、現実に展開させていく道筋もつくれました。

長く関心を持ち続けてくださる会員の皆さまに感謝し、今後の協議への注目と、持続可能な地域社会づくりのための知恵のご提供を、ぜひともお願いします。
(横山隆一・常勤理事)

沖縄北部返還予定図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ▲米軍訓練場とされている国有林と返還予定範囲の関係(黄色の部分)

北部国有林の現存植生図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北部国有林の現存植生図

沖縄島北部の林齢図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲沖縄島北部の林齢図

図1~3/出典:九州森林管理局検討会資料より

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