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2006.11.01

森林生態系保護地域設定は終了。常設委員会の設置へ。

会報『自然保護』No.494(2006年11/12月号)より転載


小笠原、一般国有林の99%以上を森林生態系保護地域に

 

NACS-Jでは、小笠原諸島にしか存在しない重要な生態系を守るため、林野庁と協働し、これまで約950haでしかなかった小笠原の保護林を、小笠原全面積の6割を占める国有林全域に拡大する事業を行ってきました。その結果、8月の最終委員会で一般的な国有林の99%以上(約5600ha)を保護林とすることが決定しました(指定は2007年3月予定)。

 

20060701ogasawara-all.jpg

今回設定されたのは、「森林生態系保護地域」と呼ばれる保護林制度の一つですが、ほかの保護林の種類とは異なり、

 

  • (1)科学者・自然保護団体などからなる委員会を設け、設定範囲を検討する、
  • (2)厳正な保護区域である「保存地区(コアゾーン)」と、生活圏とコアゾーンの緩衝帯である「保全利用地区(バッファーゾーン)」の2重構造になるよう区分する

 

という特徴を持っています。

 

白神山地などの通常の森林生態系保護地域は、保護上重要な地域を核心部としてコアゾーンにし、その周りを取り囲むようにバッファーゾーンをつくります。しかし、この方法は、世界で唯一の固有植物種群落が、生活域のすぐそばでさえ確認されているなど、島全域で固有の生態系を形づくっているこの島々に対する設定方法としては、適切ではありません。そこで、NACS-Jはまず国有林の全域をコアゾーンと考え、そのうち生活圏に接する部分や森林以外(砂浜など)だけをバッファーゾーンにしていくという逆転の発想による新しい考え方を提案し、その方針が採用されました。その結果、森林生態系保護地域の95%をコアゾーンにすることができました。

 

設定中に大きな議論となったのは、空港検討候補地を保護地域から除外してほしいという一部の委員からの強い要望への対応です。

 

小笠原では1980年代より、兄島という世界に類を見ない生態系が存在する場所に空港計画が立てられてきましたが、NACS-Jと研究者が協力して保護活動を進めたこともあり、計画が撤回されたという経緯があります。NACS-Jは設定委員会において、正式な構想・計画がない中で空港検討候補地の保護地域からの除外を検討することはできないが、正式な計画段階になれば議論を行えること、絶滅が心配される動植物がこの地域にも存在することなどを説明し、空港検討候補地保護地域にも保護地域に含めて、バッファーゾーンとすることが合意されました。

 

設定後の保全管理の仕組みづくり

 

通常、コアゾーンでは、自然の推移に委ね人手を加えないのが原則です。しかし、小笠原では、アカギやグリーンアノールなど外来種の影響により、多くの固有種が絶滅の危機に瀕しており、本来の生態系を守るためには、外来種の除去など積極的な保護施策が欠かせません。そこで、今回の設定委員会では、設定後に常設の保全管理委員会(仮称)をつくり、自然保護・修復の事業を、計画的かつ積極的に行っていくことも合意されました。

 

小笠原では、これまで生物の種ごとに保護対策や、外来種の除去などの調査研究が進められてきました。少しずつ成果が出てきた一方で、一部には科学的考察が十分とは言いにくい活動も存在するようです。また、多くの外来種が在来生態系の一部に組み込まれつつあるなど、問題は一層複雑になっています。今一番必要なのは、植物、昆虫、鳥など固有種がさまざまに影響し合い成り立った生態系を守るため、行政機関ごと、生物ごとに個別に行われてきた調査研究と対策が、統一された目標のもとに進められていくことです。そのための一つ目のステップとして、今まで形式的にしか行われてこなかった国有林の入林許可申請の仕組みを使って、いろいろな調査研究活動の全体像を把握したり、より有効な活動にしていくためのチェックリストをつくったりするなど、保全管理委員会(仮称)の場で、さまざまな検討ができる仕組みをつくりたいと考えています。

 

島の方々と協力する「小笠原プロジェクト」へ

 

小笠原は、島に住む方々の自然に対する関心が高いところです。それでも、広範囲にわたるコアゾーンの指定と、その中での自然をこれ以上劣化させないための利用ルールの策定は、「コア(核心)」=「厳正に保護された立ち入り禁止地域」のイメージが先行し、その意図の理解を含めた啓発はこれからです。

 

島には、保護調査や環境教育に取り組んでいるNPO・NGOがあります。その方々とともに、生態系の危機的状況やこのプロジェクトに対する島の理解者を増やしていき、その中で、フィールドガイド、農業、教育といったさまざまな生活分野と自然保護活動との協働方法を探り、保全管理の場に反映させていきます。

 (金子良知夫 総合プロジェクト小笠原担当)

 

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アカギ
小笠原における外来種の代表であるアカギ(トウダイグサ科)の親木(写真奥中央)とその萌芽(手前)。原産地での生態とは大きく異なり、暗い林床でも旺盛な発芽力を持ち、小笠原本来の森林に侵入し、生育地を急速に拡大している。

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