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2006.07.01

風力発電施設の立地適正化に向けた 自治体独自の施策

施設規模によっては周囲の環境に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、環境影響評価法の対象から外れており、アセスメントが義務付けられていない風力発電事業。計画地の中には、事業者と反対住民の板挟みとなって苦慮する自治体もあります。このような中、自然環境や森林機能、住環境などに悪影響を与える場所への立地を避けるため、独自の取り組みを始めた自治体があります。

会報『自然保護』特集:風力発電事業を考える(2006年7/8月号)より転載


長崎県は2006年4月、福島県(2001年)に次いで全国2番目に、一定規模以上の風力発電事業を環境影響評価条例の対象とし、条例に基づく環境アセスメントを事業者に義務付けました。長崎県内では各地で風力発電施設の計画が進んでおり、大型施設は場所によっては景観を損なうといった議論が生じたからです。

条例化を検討する過程で同県は、県民を対象にアンケート調査(配布数3000、回収数1173)を実施。風力発電推進の必要性を感じている層が86%に上った一方、騒音や景観・動植物への影響などを懸念して、事業実施にあたっては環境影響評価を行う必要性を感じている層も78.3%と高い割合を占めました。このアンケートや県環境審議会での議論の結果などから、同県では風力発電施設の建設については環境への影響を見極める必要があると判断し、条例化に踏み切りました。

福島県に対しては、条例化を検討する他県から問い合わせが数件あったといいます。その一方で、各県が独自に条例化をしようとすると、風力発電を促進したい市町村から反対意見が出るなど調整が難しいため、法律による全国一律の基準を設けてほしいとの本音も担当者から聞こえてきます。

また、条例化されている自治体であっても、アセスメントの具体的調査方法を決めるのはあくまで事業者であり、その結果の妥当性に疑問の余地が残ります。加えて、アセスメントの結果、問題が明らかになったとしても、自治体としては意見や指導ができるだけで、計画を中止させることはできません。

 

環境保護の観点から建設を

回避すべき場所を地図で明示

条例化を目指しつつも、別の方法で風力発電施設の立地適正化を図ろうとする自治体もあります。長野県では06年3月、「本県の自然環境や景観等に少なからず影響を及ぼすおそれのある場所への中・大型(出力50kW以上)風力発電施設の建設は抑制する」との基本方針を発表。風力発電施設の建設を回避すべき場所を示した「アボイドマップ」(アボイド=回避)の作成を進めています。

このマップは、①水源かん養や山地災害防止等の点から森林機能の保全が特に必要な地域、②自然環境や生態系に少なからず影響を及ぼす恐れのある地域、③希少野生動植物の生息・生育に影響を及ぼす恐れのある地域、④景観に少なからず影響を及ぼす地域、のそれぞれについて、風力発電施設の建設を避けるべき度合いを3段階に分けて示すというもの。特に、2つの大規模計画が持ち上がっている、伊那市などの入笠山周辺については、山地性の大型猛禽類の生息が確認されたほか、建設により地滑りを誘発する恐れのある個所が見られるため、県は、周辺地域に絞ったマップの作成と公表を急いでいます。

同県企画局土地・景観チームでは「マップに建設の可否を定める強制力はないが、事業化を検討する際に一定の抑止効果があるのでは」としています。

 


※条例で環境アセスメントが求められる場合

  • 福島県環境影響評価条例
    出力1万kW以上または風車15台以上
    (なお、出力7000kW以上1万kW未満または風車10台以上14台以下の場合は、アセスメントの必要性を県が個別に判断)
  • 長崎県環境影響評価条例
    出力1万5000kW以上または風車10台以上

(宮崎朋美/編集部)

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