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千葉・印旛沼をまたぐ鉄道・道路計画 -環境アセスメント準備書に意見提出-

2005.05.17
要望・声明

050517印旛沼

17日自第18号
2005年5月17日

 

千葉県知事
堂本 暁子 殿

(財)日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿

成田新高速鉄道線建設事業ならびに、
一般国道464号北千葉道路(印旛~成田)建設事業に係る
環境影響評価準備書に対する要望書

 

北印旛沼地域には、広大な湿地と里山・谷津田の自然を中心に、豊かな里やま(里山)環境が残されており、千葉県は県立印旛手賀自然公園として保護し、保全・再生に関わる諸策を講じてきた地域でもあります。しかし、成田空港と東京間の新たなアクセスルートとして、成田新高速鉄道と国道464号線が計画されています。この複合した計画は、幅計約30m(橋梁部)、延長10.7kmの人工構造物として、北総を代表する印旛沼とその周辺の里山・谷津田の自然環境を分断し、下記の理由において自然生態系への影響を及ぼすことから、

 

千葉県知事は、環境影響評価準備書に対し、県内の自然保護団体から寄せられている意見も踏まえ、自然環境・景観の保全上の観点に留意した意見を述べ、事業者としてはトンネル化もしくはルート変更について再検討することを要望します。

理由

 

1.千葉県立自然公園に橋梁を造るべきではない
北印旛沼をまたぐ橋梁は、県立自然公園第3種特別地域の指定地を貫通する計画である。どのようなデザイン・構造であっても、この巨大な人工構造物は印旛沼の自然豊かな広大な景観にふさわしいものではない。千葉県環境基本計画では、道路及び鉄道の立案の際の配慮事項として「自然環境保全上重要な緑地などのある地区の通過は極力避けること」をあげており、計画の整合が図られておらず、自然公園を管理する県の姿勢が問われることになる。

 

2.湿地生態系の分断は代替のヨシ原の造成では不十分である
開放的な湿地環境に、橋梁のような人工物が建設された場合、鳥類にとって、生息地の消失だけでなく、生息地の分断、遮断により、行動上の障害となる。準備書では、サンカノゴイをはじめとする湿地性希少鳥類の保全のために、ヨシ原の代替措置としてヨシ原の造成が検討されているが、単に面的な生息可能地をつくるに過ぎず、一定の範囲を利用するサンカノゴイやチュウヒなどにとって、橋梁による生息地の分断や遮断が生じる影響の軽減にはならない。

 

3.北総を代表する里山・谷津田環境を分断すべきではない
印旛沼地域は、北総を代表する谷津田を中心とした里やま環境を残している。谷津の低地は、2000年の昔から水田として利用され、樹林地や畑、さらには集落、川沼と一体となった里やまが形成され、伝統的な利用により、地域の文化も集積されている。このような環境は、農業生産の場としてだけでなく、生物多様性の保全、地域文化の継承の面から、農業体験や環境教育としての可能性が注目されている。このような北総を代表する里山・谷津田環境を鉄道と国道によって分断し、将来の可能性を失うべきではない。

 

4.里山・谷津田環境を代表する貴重種サシバの営巣・生息を阻害する
両生類やは虫類を主に補食するサシバは、里山・谷津田環境の指標種といえる。そのサシバの複数の営巣地が計画路線上や隣接にあるため、2つの繁殖ペアの営巣木は伐採され、他の繁殖ペアの高利用域へも影響があるとされている。サシバには水田と雑木林がセットとなった環境が必要なため、全国的に里やま環境が荒廃した現在、その個体数の減少が注目されている。「千葉県の保護上重要な野生生物―千葉県レッドデータブックー動物編」では「B:重要保護生物」に指定されており、サシバの生息に重大な影響を与える事業は、認められるものではない。また、谷津田に橋梁が横断した場合、サシバにとって利用空間が分断され、生息環境を狭められる。準備書に記載されている保全措置は、有効性の根拠もない止まり場の新たな設置、段階的な施工による順化(コンディショニング)で済まされており、営巣環境の保全措置には成り得ていない。

以上

 

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