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日本生態学会で小笠原南島の調査結果を発表しました。

2004.11.01
活動報告

会報『自然保護』No.482(2004年11/12月号)より転載


第51回日本生態学会は8月25日~29日の日程で釧路にて実施されました。NACS-Jからは、現在小笠原南島で実施している「保護と適正な利用のための自然環境モニタリング調査(東京都・関東森林管理局委託)」の結果の一部を報告しました。

南島の問題は、狭い面積ながら自然再生、外来種、エコツーリズム、モニタリング調査など現在扱われている生態学的な諸問題を多く含んでいることから、事例研究としても普遍性があると考られます。

過去にヤギの放牧で壊滅状態だった南島でヤギの完全駆除から約30年たった植生の回復状況を、ドリーネ地形(石灰岩地域に見られるすり鉢状の窪地)に沿った地形的な植生パターンと種の多様性構造に注目して解析した結果を発表しました。内容は、地形に沿っていくつかの調査枠を設置し、植物の種類や被度、高さを比較していくと、7つの異なる優先種からなる植生タイプに区分されます(下写真参照)。それぞれドリーネ内側と外側、斜面と尾根というように地形に対応して植生が分化していることから、30年を経てようやく植生パターンを形成しつつあることが明らかになりました。

 

041101優先種.jpg

植物は1968年の最初の調査で15種しか見られませんでしたが、1993年以降の調査では約60種前後で推移していたことからも、種数が安定した状態になりつつあることを示していると考えられました(下図参照)。ただし、種数増加の背景には、クリノイガ、タバコなど観光利用で人為的に散布されたと考えられる帰化種の侵入が大きく影響しており、保護と適正な利用に向けて今後の保全策が求められています。

 

041101過去30年の種数変化.jpg
「小笠原研究ネット」立ち上げ

今回の日本生態学会では、堀越和夫氏(小笠原自然文化研究所理事長)と大河内勇氏(森林総合研究所)が発起人となり「小笠原諸島の自然再生と利用に研究者はどうかかわれるのか?」という自由集会が行なわれました。

小笠原では多くの関係機関と事業が相互に関連づけられることなく実施されているのが現状で、
少なくとも保全事業にかかわる研究者同士が、最新の情報をリアルタイムで交換し、それぞれの研究や保全事業に役立てることで、小笠原の生態系保全促進に貢献することを目的に「小笠原研究ネット」の提案を呼びかけました。

こうしたネットを活用することで、より科学的な情報に基づく保全事業の展開をすすめたいと思います。

(朱宮丈晴・保護研究部)

 

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