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泡瀬干潟の埋め立て計画地周辺には希少種続々

2004.07.23
活動報告

 

2003年7月に発足した「NACS-J泡瀬干潟自然環境調査委員会」は、その調査結果の中間とりまとめを行い、2004年7月23日に沖縄でその成果を発表しました。



泡瀬干潟の自然環境調査中間報告

<WWF・日興グリーンインベスターズ基金助成>

沖縄県中城湾の泡瀬干潟では、埋立工事が進んでいます。しかし、事業者(内閣府沖縄総合事務局・沖縄県)の実施した環境アセスメントでは、泡瀬干潟の自然の実態を十分に把握しておらず、「万全を期す」としている埋立計画地外の干潟・藻場の保全については何も対策がとられていません。

これに対しNACS-Jは、泡瀬干潟の自然環境の現況を明らかにし保全策を提言するために、この1年間調査を実施してきました。

主な3点を下記に報告します。
 

1.泡瀬干潟は複雑な地形をもち、その環境に適応して多様な生物が生息する日本を代表する生物多様性のホットスポットである。希少種や新種、新産種が埋立計画地に集中して分布している。

例えば

  • 海草は、新(産)種2種〔ホソウミヒルモ、ウミヒルモsp.(仮称)〕含め、11種が生育。
    既知の9種は、全てが環境省レッドデータブック記載種〔ウミヒルモ(NT)、ヒメウミヒルモ(VU)、リュキュウスガモ(NT)、ベニアマモ(NT)、リュウキュウアマモ(NT)、ボウバアマモ(NT)、ウミジグサ(NT)、マツバウミジグサ(NT)、コアマモ(DD)〕。
    日本に生育する熱帯性海草11種のうちの10種が生育するこの豊かな海草藻場は特筆に値するものです。
  • 海藻は、新種リュウキュウズタや、絶滅危惧I類のホソエガサ、クビレミドロが生育。
  • 貝類は、新種ニライカナイゴウナ、沖縄島新産のオサガニヤドリガイ、絶滅危惧種スイショウガイなどが生育。

2.新たに4種の海藻草類の生育を確認。今後も調査が進むほどに泡瀬干潟の自然環境の重要性はますます高まるものと思われる。

新たに確認されたもの

  • カラクサモク:絶滅危惧種に相当。これまでヤツマタモクとされていた。南西諸島固有種であるが、最近分布が確認されている地点はわずかである。
  • リュウキュウズタの1品種:側葉の形成されないリュウキュウズタの変異種。これまでのところ、泡瀬海域のごく一部でしか生育が確認されていない。
  • クビレズタ(ウミブドウ)の1品種:球状の葉が全くないか、わずかに有するクビレズタの変異種。これまで泡瀬海域以外では観察されていない。
  • 水深6mのコアマモ群落:水深6mに生育することは本州でも稀。沖縄では報告例がない。

これで、埋立着工後に新たに発見された種は11種にのぼります。そしてこれらはすべて、埋立計画地とその周辺に分布しています。事業者が実施した環境アセスメントが、いかに不十分だったかを示す結果となりました。

 

3.シギ・チドリ類の種数、個体数が多く、ムナグロの越冬地としては日本最大。

  • 越冬期の2月の調査では、19種1160羽が記録され、優占種はムナグロ(34.1%)、メダイチドリ(32.2%)、シロチドリ(6.7%)、ハマシギ(6.6%)の4種であった。
  • 春の渡りの4月の調査では、24種1268羽が記録され、優占種は、ムナグロ(67.6%)、メダイチドリ(12.1%)、キョウジョシギ(7.6%)の3種であった。


NACS-J泡瀬干潟自然環境調査委員会メンバー(●委員長)
相生啓子(海草:前東京大学海洋研究所)
新井章吾(海藻:海藻研究所代表)
長田英巳(人と自然の関わり:潟の生態史研究会)
黒住耐二(貝類:千葉県立中央博物館動物学研究科上席研究員)
仲座栄三(底質・波・流れ環境:琉球大学工学部助教授)
中村和雄(鳥類:沖縄大学法経学部教授)
長谷川均(自然地理・環境変遷:国士舘大学大学院地理・環境専攻教授)
花輪伸一(シギ・チドリ類:WWFジャパン)
●目崎茂和(サンゴ礁・海象環境:南山大学総合政策学部教授)
山城正邦(鳥類:沖縄野鳥の会)

現地調査および協力者(順不同)
菊池亜希良・山下博由・玉置 仁・大須賀 健・名和 純・棚原盛秀・水間八重
前川盛治・小橋川共男・譜久里 茂・藤井晴彦・後藤智哉 ほか

NACS-J事務局
開発法子・廣瀬光子

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