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川辺川ダム建設計画問題

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2003.09.01

川辺川ダムを考える住民討論集会で環境影響を討論

会報『自然保護』No.475(2003年9/10月号)より転載


7月13日、熊本県庁において、第8回川辺川ダムを考える住民討論集会が開かれ、川辺川ダムが環境に与える影響について、ダム推進側の国土交通省とダムに疑問を持つ市民団体や研究者の間で、討論が行なわれた。市民団体側からは、東幹夫長崎大教授、石賀裕明島根大教授、大熊孝新潟大教授、村上哲生名古屋女子大教授らが出席、またNACS-Jからは常務理事の横山、吉田の2名が登壇した。

川辺川ダムを考える住民討論集会は、潮谷義子熊本県知事が国土交通省にダムの必要性に関する説明を求めて、2001年12月から開かれている。これまではダムの治水効果やダム代替案の可能性について討論が行なわれてきたが、今年2月からは環境にテーマを移して議論が行なわれてきた。今回は5月に続き、その3回目の討論会となった。

これまで、ダムが河川の水質・流量に与える影響、アユ等の魚類への影響、八代海に与える影響、クマタカ・洞窟生物など希少生物に与える影響などについて議論が行なわれたが、国土交通省と市民団体の意見はことごとく対立してきた。今回はこれらのテーマを包括的に議論する環境総括討論として行なわれた。

川辺川ダム問題に関してNACS-Jは、これまでクマタカ、洞窟生物、アユをはぐくむ河川環境などの調査に取り組んできた。今回の討論会では、これらの調査データの科学的な根拠に基づき、ダムが環境に与える影響を討論した。国土交通省はこれらの問題について、環境保全措置によって影響を軽減するよう努力するとしているが、いずれも不確実性の高いもので、川辺川でそれを実験することは許されない。

NACS-Jでは、これまでの調査結果を報告書にまとめ、地元で報告会を開催するとともに、川辺川ダムを環境影響評価法と新河川法の対象として、その必要性自体から見直すべきだと主張していきたい。

(吉田正人・常務理事)


川辺川と球磨川本流でのアユの餌の比較結果

川の石に付着した藍藻とアユの胃の内容物を調査した結果、ダムのない川辺川のアユはよい香りのもととなる珪藻を食べているのに対し、ダムのある球磨川本流のアユは藍藻を主に食べていることがわかった(図1)。

川辺川と球磨川の位置関係を示した地図の画像 藍藻の割合を示したグラフの画像
図1.川辺川と球磨川本流でのアユの餌の比較結果

 

川辺川のクマタカの繁殖成功率を見直す

流域で知られるクマタカ7つがいの繁殖成功率をまとめてみた(表1)。国土交通省が調査結果として開示した繁殖成績の中には、繁殖状況の判定方法が一部適切でなく、データの吟味も十分でないことから、繁殖できなかった年も繁殖成功と判断してしまっているものがあった。こうした問題点を修正した上で比較した。繁殖成功率の上下には、気象等の影響もあるため、単年度の数字を比較するより一定期間における傾向を見る必要がある。

表1.川辺川のクマタカの繁殖成功率の変化

算出期間 成否成績 不明 繁殖成功率
(1)1994-98の5年間 成功6失敗10 19 37.5%
(2)1999-02の4年間 成功4失敗24 0 14.2%
(23.3ポイント低下)
(3)1994-02を通した
9年間の単純平均
成功10失敗34 19 22.7%
(安全レベルの1/3程度)

表1からわかること

  • (1)の時代は37.5%だったものが、(2)の時代では14.2%と低下。この急低下の要因は、ダムの付帯事業にともなう「繁殖環境の悪化」の可能性が高い。
  • (3)の9年間平均も22.7%と、地域個体群の健全な維持に必要な安全レベルを70%としても(理想的には70~80%)、その3割程度でしかない。この上ダム開発が行なわれるとすれば、さらなる低下を招きかねない。川辺川流域のクマタカは、まさに危機にある個体群といえる。

(横山隆一・常務理事)

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