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「IUCNの勧告を尊重した政策を早急に実行することを要請する。」

1970.01.01
要望・声明

沖縄島のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息地の保全に関する共同声明を発表


2001年7月6日

 

共同声明

沖縄島のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息地の保全

特に、在沖縄米軍の普天間飛行場代替施設および
山原(やんばる)のヘリパッド建設計画と関連して

WWFジャパン、(財)日本自然保護協会、
(財)日本野鳥の会、日本雁を保護する会、
野生生物救護獣医師会、エルザ自然保護の会
(IUCNメンバー)

ジュゴン保護基金委員会、ジュゴンネットワーク沖縄、
沖縄環境ネットワーク、ジュゴン保護キャンペーンセンター
(賛同団体)

 
2000年10月に、ヨルダンのアンマンで開催されたIUCN(国際自然保護連合)の第2回世界自然保護会議において、「沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」に関する勧告が採択されている。

勧告では、日本政府に、軍事基地建設に関する環境アセスメントを完遂すること、ジュゴンの絶滅防止対策を実施すること、山原(やんばる)保全計画を作成すること、世界遺産リストへの登録を検討することを求め、アメリカ政府に、環境アセスメントに協力することを求め、日米両政府に、軍事施設と演習の影響に関するアセスメントを行い保護対策を実施するように要請している。

IUCNは、79か国の政府、112の各国政府機関、735のNGOによって構成され、国連と密接な関係を持つ世界最大の自然保護機関である。IUCNの勧告は国際条約にもとづく勧告と同等の重みがあり、関係する政府、政府機関、NGOは、勧告を尊重し実行する義務がある。

私たちは、日本政府およびアメリカ政府が、「沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」に関するIUCNの勧告を尊重し、以下の政策を早急に実行することを要請する。


日本政府に対する要請

ジュゴンについて

1.普天間飛行場代替施設の基本計画を策定する前に、複数の代替案について、環境アセスメントを実施すること。

日本政府は、 普天間飛行場代替施設協議会で、名護市辺野古における3工法8案の海上基地を提示するなど、軍事基地の基本計画策定を先に進め、環境アセスメントについては基本計画策定後に実施するとしている。

しかし、基本計画策定後に、ただひとつの案について環境アセスメントを行うのでは、軍事基地建設がジュゴンとその生息地におよぼす影響を比較検討して、回避、低減をはかることは不可能であり、計画を容認した上で矮小化された環境対策を付記する程度のものになる可能性が高い。代替施設協議会に提出された防衛庁資料でも、3工法8案すべてにおいて、ジュゴンへの影響と保全措置の必要性を記しながら対策は何も示されていない。

代替施設の建設場所が、はじめから名護市辺野古に限られていることも問題である。この海域はジュゴンの生息域の中心部分であり、沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」では、自然環境の厳正な保護を図る地域(評価ランク?)に指定されていることから、本来、代替施設の建設を回避すべき場所のはずである。

はじめに建設場所を名護市辺野古に決め、3工法8案を提案し、これらのなかからひとつを選んで基本計画を決定し、後に環境アセスメントを実施するという手順は、IUCNの勧告が求めている国際水準を満たす環境アセスメントとは全く異なるものである。これは、ジュゴンの絶滅防止、回復を保証するものではない。

IUCNの勧告を尊重するならば、環境アセスメントは、基本計画を決定する前の段階で、辺野古の3工法8案だけでなく、辺野古以外の場所も含み、また、建設しないというゼロ案も含む複数案について環境アセスメントを実施するべきである。

私たちは、日本政府に対し、IUCN勧告を尊重し、基本計画策定の前に、複数の案について、環境アセスメントを実施することを要請する。

2. アメリカ政府に環境アセスメントに関する協力を求めること。

IUCN勧告では、ジュゴンがアメリカ合衆国の「絶滅のおそれのある種の法(ESA)」の指定種であることから、アメリカ政府に対し、日本政府の依頼により環境アセスメントに協力するように求めている。アメリカ政府もIUCNの本会議において、日本政府の依頼によって協力する用意がある旨の発言をしている。したがって、私たちは、日本政府が行う環境アセスメントへの協力を、アメリカ政府に対して依頼するように要請する。

3. 早急に、ジュゴンを種の保存法の政令指定種とし、あわせて生息地等保護区の指定も行うこと。

ジュゴンに関しては、水産庁・環境庁の覚書(1992年)により種の保存法の指定種には含まれないとされていたが、2001年3月の参議院予算委員会において、農水・環境両大臣により覚書からはずす旨の発言があった。また、5月の新聞報道によると、環境省はジュゴンを国内希少野生動植物種に指定し、あわせて生息地等保護区の指定も検討するとのことである。さらに6月に、環境大臣は、ジュゴンおよびその生息地の海草藻場の広域的調査を行うと発言している。上記の政令指定種の指定、生息地に関する広域的調査を早急に実施することを要請する。

4. 混獲等によるジュゴンの死亡事故の防止対策を急ぐこと。

沖縄島では、漁網などにからまって死亡したとみられるジュゴンの死体が、多い年で3頭も確認されている。きわめて個体数の少ない沖縄のジュゴン個体群にとって、このような死亡は絶滅につながる大きな要因になっていると考えられるので、漁業者が不利益を被らない方法で、混獲防止対策や網に入ったジュゴンの救助体制を早急につくることを要請する。

 

ノグチゲラ・ヤンバルクイナについて

1. 防衛施設庁による継続中の環境調査について、情報を公開し、研究者・市民・環境NGO等の意見を聞き、調査結果の評価に反映させること。

北部訓練場(米国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)における米軍ヘリパッド等の建設に関連して、防衛施設庁が環境調査を2年間継続することに決めたことは評価できる。この調査に関しては、調査地域、方法、結果などについて情報を公開し、研究者、地域住民、市民、NGOの意見を求め、結果の評価に反映させることを要請する。

2. 環境アセスメントを実施すること。

IUCNの勧告で求められているように、北部訓練場(米国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)における7か所のヘリパッドとその軍用道路の建設およびそこで行われる予定の軍事演習が、山原(やんばる)の生物多様性やノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物におよぼす影響について、きちんとした環境アセスメントを実施することを要請する。

3. 山原(やんばる)の生物多様性・絶滅のおそれのある種の保全計画を早急に作成すること。

IUCNの勧告で求められているように、山原(やんばる)の生物多様性と絶滅のおそれのある種について保全計画をできる限り早急に作成し、緊急に行うべき対策は直ちに実行するとともに、これらの種とその生息地の詳細な調査研究を進めることを要請する。
沖縄島のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息地の保全に関する共同声明を発表


2001年7月6日

 

共同声明

沖縄島のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナとその生息地の保全

特に、在沖縄米軍の普天間飛行場代替施設および
山原(やんばる)のヘリパッド建設計画と関連して

WWFジャパン、(財)日本自然保護協会、
(財)日本野鳥の会、日本雁を保護する会、
野生生物救護獣医師会、エルザ自然保護の会
(IUCNメンバー)

ジュゴン保護基金委員会、ジュゴンネットワーク沖縄、
沖縄環境ネットワーク、ジュゴン保護キャンペーンセンター
(賛同団体)

 
2000年10月に、ヨルダンのアンマンで開催されたIUCN(国際自然保護連合)の第2回世界自然保護会議において、「沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」に関する勧告が採択されている。

勧告では、日本政府に、軍事基地建設に関する環境アセスメントを完遂すること、ジュゴンの絶滅防止対策を実施すること、山原(やんばる)保全計画を作成すること、世界遺産リストへの登録を検討することを求め、アメリカ政府に、環境アセスメントに協力することを求め、日米両政府に、軍事施設と演習の影響に関するアセスメントを行い保護対策を実施するように要請している。

IUCNは、79か国の政府、112の各国政府機関、735のNGOによって構成され、国連と密接な関係を持つ世界最大の自然保護機関である。IUCNの勧告は国際条約にもとづく勧告と同等の重みがあり、関係する政府、政府機関、NGOは、勧告を尊重し実行する義務がある。

私たちは、日本政府およびアメリカ政府が、「沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」に関するIUCNの勧告を尊重し、以下の政策を早急に実行することを要請する。


日本政府に対する要請

ジュゴンについて

1.普天間飛行場代替施設の基本計画を策定する前に、複数の代替案について、環境アセスメントを実施すること。

日本政府は、 普天間飛行場代替施設協議会で、名護市辺野古における3工法8案の海上基地を提示するなど、軍事基地の基本計画策定を先に進め、環境アセスメントについては基本計画策定後に実施するとしている。

しかし、基本計画策定後に、ただひとつの案について環境アセスメントを行うのでは、軍事基地建設がジュゴンとその生息地におよぼす影響を比較検討して、回避、低減をはかることは不可能であり、計画を容認した上で矮小化された環境対策を付記する程度のものになる可能性が高い。代替施設協議会に提出された防衛庁資料でも、3工法8案すべてにおいて、ジュゴンへの影響と保全措置の必要性を記しながら対策は何も示されていない。

代替施設の建設場所が、はじめから名護市辺野古に限られていることも問題である。この海域はジュゴンの生息域の中心部分であり、沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」では、自然環境の厳正な保護を図る地域(評価ランク?)に指定されていることから、本来、代替施設の建設を回避すべき場所のはずである。

はじめに建設場所を名護市辺野古に決め、3工法8案を提案し、これらのなかからひとつを選んで基本計画を決定し、後に環境アセスメントを実施するという手順は、IUCNの勧告が求めている国際水準を満たす環境アセスメントとは全く異なるものである。これは、ジュゴンの絶滅防止、回復を保証するものではない。

IUCNの勧告を尊重するならば、環境アセスメントは、基本計画を決定する前の段階で、辺野古の3工法8案だけでなく、辺野古以外の場所も含み、また、建設しないというゼロ案も含む複数案について環境アセスメントを実施するべきである。

私たちは、日本政府に対し、IUCN勧告を尊重し、基本計画策定の前に、複数の案について、環境アセスメントを実施することを要請する。

2. アメリカ政府に環境アセスメントに関する協力を求めること。

IUCN勧告では、ジュゴンがアメリカ合衆国の「絶滅のおそれのある種の法(ESA)」の指定種であることから、アメリカ政府に対し、日本政府の依頼により環境アセスメントに協力するように求めている。アメリカ政府もIUCNの本会議において、日本政府の依頼によって協力する用意がある旨の発言をしている。したがって、私たちは、日本政府が行う環境アセスメントへの協力を、アメリカ政府に対して依頼するように要請する。

3. 早急に、ジュゴンを種の保存法の政令指定種とし、あわせて生息地等保護区の指定も行うこと。

ジュゴンに関しては、水産庁・環境庁の覚書(1992年)により種の保存法の指定種には含まれないとされていたが、2001年3月の参議院予算委員会において、農水・環境両大臣により覚書からはずす旨の発言があった。また、5月の新聞報道によると、環境省はジュゴンを国内希少野生動植物種に指定し、あわせて生息地等保護区の指定も検討するとのことである。さらに6月に、環境大臣は、ジュゴンおよびその生息地の海草藻場の広域的調査を行うと発言している。上記の政令指定種の指定、生息地に関する広域的調査を早急に実施することを要請する。

4. 混獲等によるジュゴンの死亡事故の防止対策を急ぐこと。

沖縄島では、漁網などにからまって死亡したとみられるジュゴンの死体が、多い年で3頭も確認されている。きわめて個体数の少ない沖縄のジュゴン個体群にとって、このような死亡は絶滅につながる大きな要因になっていると考えられるので、漁業者が不利益を被らない方法で、混獲防止対策や網に入ったジュゴンの救助体制を早急につくることを要請する。

 

ノグチゲラ・ヤンバルクイナについて

1. 防衛施設庁による継続中の環境調査について、情報を公開し、研究者・市民・環境NGO等の意見を聞き、調査結果の評価に反映させること。

北部訓練場(米国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)における米軍ヘリパッド等の建設に関連して、防衛施設庁が環境調査を2年間継続することに決めたことは評価できる。この調査に関しては、調査地域、方法、結果などについて情報を公開し、研究者、地域住民、市民、NGOの意見を求め、結果の評価に反映させることを要請する。

2. 環境アセスメントを実施すること。

IUCNの勧告で求められているように、北部訓練場(米国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)における7か所のヘリパッドとその軍用道路の建設およびそこで行われる予定の軍事演習が、山原(やんばる)の生物多様性やノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物におよぼす影響について、きちんとした環境アセスメントを実施することを要請する。

3. 山原(やんばる)の生物多様性・絶滅のおそれのある種の保全計画を早急に作成すること。

IUCNの勧告で求められているように、山原(やんばる)の生物多様性と絶滅のおそれのある種について保全計画をできる限り早急に作成し、緊急に行うべき対策は直ちに実行するとともに、これらの種とその生息地の詳細な調査研究を進めることを要請する。


アメリカ政府に対する要請

1. 普天間飛行場代替施設に関して、日本政府の行う環境アセスメントに協力すること。

IUCNの勧告で求められているように、日本政府からの依頼にもとづき、ジュゴンの生息場所やその周辺での軍事施設の建設に関して、日本政府が行う環境アセスメントに協力することを要請する。特に、日本政府が行う環境アセスメントの水準が、次項で述べるアメリカの環境法の水準に達し、アメリカ政府が独自に行う環境アセスメントと整合するように調整することを要請する。

2. 沖縄における米軍基地の建設と米国海兵隊の軍事演習がジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物におよぼす影響について、アメリカ合衆国の環境法にもとづいて環境アセスメントが行われること。

私たちは、沖縄における米軍基地の建設と、その基地を使用して行われる米国海兵隊の軍事演習計画には、「国家環境政策法(NEPA)」や「絶滅のおそれのある種の法(ESA)」などのアメリカ合衆国の環境法がもとになるべきだと考えている。基地建設・軍事演習がジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物およびその生息地に対しておよぼす影響について、これらの法律の定めるところにより環境アセスメントが実施されることを要請する。

3. 絶滅のおそれのある種の適切な保護対策を実施すること。

IUCN勧告で求められているように、環境アセスメントの結果にもとづき、米軍基地および演習区域内において、絶滅のおそれのある種であるジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの生存を確実にするための適切な対策を実施することを要請する。

以上

 
添付資料1.IUCN 勧告(2000 年 10 月 アルマン・ヨルダン)
沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全
添付資料2.IUCN 本会議における NGO、日米両政府のコメント

 


添付資料1.IUCN勧告(2000年10月 アンマン、ヨルダン)
 
CGR2.CNV004xCNV005
Rev 1

沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全

<WWF Japan 訳>

ジュゴン( Dugong, Dugong dugon )は、世界的にみて絶滅のおそれのある種であり(危急種VUA1cd, IUCN 2000)、日本では過去30年間(1970年以降)、沖縄島の海岸でのみ記録されていることから、沖縄島周辺の地域個体群も絶滅のおそれのある種(絶滅危惧種CRD1またはCR C2b,日本哺乳類学会1997)であり、また、ジュゴンは、アメリカの「絶滅のおそれのある種の法」(Endangered Species Act)の対象としてあげられていることに注目し、さらに、ジュゴンが周年生息する範囲は、現在では沖縄島の中部および北部の東海岸に限られ、これは沖縄のジュゴンの保全にとってこの範囲がきわめて重要であることを示しており、この孤立した生息場所の面積は小さく、その生息数もたいへん少ないことに注目し、

アメリカ合衆国海兵隊の軍事空港を建設する計画が、生息域中央部の海域または隣接する陸域において(普天間飛行場の移転先として)、立案されていることを理解し、

この空港建設計画は、実現すれば、ジュゴンの重要な休息場所および採食場所になっている辺野古沿岸のサンゴ礁と海草藻場を消滅させ、小さな地域個体群の生存に対して大きな脅威を与える可能性があることを認識し、

ジュゴン個体群が生存のために依存しているサンゴ礁と海草藻場を含む海域・陸域の生息場所に対し、建設が与え得る影響を測定するために、自発的な環境アセスメント(EIA)を実施するとの日本政府の最近の決定を保証し、

沖縄島北部の山原(やんばる)の亜熱帯林には、ノグチゲラ(Okinawa Woodpecker,
Sapheopipo noguchii)(絶滅危惧?A類, IUCN 2000)やヤンバルクイナ(Okinawa Rail, Galliralusokinawae )(絶滅危惧?B類,IUCN 2000)をはじめ、国際的に関心が持たれている多数の固有種、固有亜種が生息し、生物多様性の保全上きわめて重要な地域であることに注目し、

山原(やんばる)では、ダム建設、林道建設、森林伐採、移入種の侵入などによって生息場所が劣化し、多くの固有種、固有亜種の生存が危ぶまれていることに注目し、

民間人の開発行為や立ち入りが禁止されているアメリカ軍演習場(アメリカ合衆国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)が、野生生物の避難場所の役割を果たしてきたことを想起し、

米軍演習場の半分が、近い将来日本に返還される決定がなされ、森林生態系保護地域および国立公園に指定される可能性があることを歓迎し、

アメリカ合衆国海兵隊の支配下に残された地域における軍用機のヘリパッド7か所とそれらを結ぶ軍用道路の建設が、残されている最も重要な自然林地域において、固有種の生息地の劣化をひきおこす可能性があることに留意し、

さらに、頻繁におこなわれる軍事訓練が、ノグチゲラやヤンバルクイナなどの希少な野生生物種に影響を与え、この地域において絶滅のおそれを高める可能性があることに留意し、

世界自然保護会議は、その第2回会議(2000年10月4-11日、アンマン、ヨルダン)において、

1. 日本国政府に対し、以下のことを要請する;

  1. ジュゴンの生息場所やその周辺における軍事施設の建設に関する自発的な環境アセスメント(EIA)を、できるかぎり早急に完遂すること、
  2. ジュゴン個体群のさらなる減少をくい止め、さらに、その回復に役立つジュゴン保全対策を、できるかぎり早急に実施すること、
  3. 山原(やんばる)の生物多様性と絶滅のおそれのある種およびジュゴンの地域個体群の保全計画をできるかぎり早急に作成し、これらの種とその生息地の詳細な調査研究を行うこと、
  4. 山原(やんばる)の「世界自然遺産」への指名を検討すること、

2. 米国政府に対し、日本政府の依頼により自発的な環境アセスメント(EIA)に協力することを要請する;

3. 日米両国政府に対し、以下のことを要請する;

  1. 自発的な環境アセスメントの結果を考慮しながら、それにもとづいてジュゴン個体群の存続を確実にするために役立つ適切な対策を講じること、
  2. 上記1(c)で言及した調査を考慮しながら、予定されている軍事施設建設と演習に関する計画が環境へおよぼす影響についてアセスメントを行い、それにもとづいてノグチゲラおよびヤンバルクイナの生存を確実にするために役立つ適切な対策を講じること。

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  • WWFジャパン(WWF- Japan)
  • (財)日本自然保護協会(NACS-J)
  • (財)日本野鳥の会(WBSJ)
  • 日本雁を保護する会(JAWGP)
  • 野生動物救護獣医師会(WRV)
  • エルザ自然保護の会(ENC)

 


添付資料2
 

IUCN本会議におけるNGO、日米両政府のコメント

注:本会議でのコメントを録音にもとづいて訳したものであるが、日米両政府の発言については、政府関係者による校閲は行っていない。

NGO(WWFジャパン)

私たちは、沖縄のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全に関する決議案を提出した。沖縄を含む多くの日本人が、このIUCNの決議に、大きな関心と期待を寄せている。47,000の人々が、IUCNに対しこの決議を採択するように求めた要請書に署名した。署名簿は、沖縄のブースで展示された。彼らは、沖縄の固有種や絶滅危惧種が保全されることを強く望んでおり、また、IUCNとその決議に大きな信頼と尊敬をいだいている。会場の皆さんが、私たちの決議案を支持するようにお願いする。

日本政府(外務省)

日本政府はすでに普天間飛行場の移設、北部訓練場の返還に際して、自然環境に重大な影響を与えないよう最大限の努力をはらうという政策目標を定めている。この政策目標にもとづき、日本政府は、普天間飛行場代替施設の基本計画の作成より前に、ジュゴンの状況の評価を進めることを決めた。このアセスはできるだけ早くやりとげる。いくつかの理由で、我々はコンセンサスに加わることを棄権したい。しかしながら、先に述べたとおり、我々は、ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの生存を保証するために最大限の努力をする。この発言を記録に残し今会議の決議集の中に盛り込んでほしい。

アメリカ政府(国務省)

ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保護に関する本決議の意味を考慮し、アメリカ政府は絶滅のおそれのあるこれらの種とその他の種を保全するための努力を支持する。そして、決議への反応が示す、これらの種が生存し続けるようにとの関心に敬意を払うとともに、それを共有する。最初の決議案の文案には、いくつかの疑問を持っていたが、現行の案は、より明確になっていると思う。その意味で、我々は普天間移設計画に対する包括的で透明性のある環境アセスメント
(EIA)を支持するとともに、日本政府の要請によって、日本政府が行う環境アセスメント(EIA)に協力する用意がある。アメリカ政府は、日本の環境を保全するために、あらゆる努力を払うという約束を公にしている。そのような努力を行うなかで、我々は、関心のあるNGOとの対話を歓迎する。この発言を記録に残すようにお願いする。

以上


アメリカ政府に対する要請

1. 普天間飛行場代替施設に関して、日本政府の行う環境アセスメントに協力すること。

IUCNの勧告で求められているように、日本政府からの依頼にもとづき、ジュゴンの生息場所やその周辺での軍事施設の建設に関して、日本政府が行う環境アセスメントに協力することを要請する。特に、日本政府が行う環境アセスメントの水準が、次項で述べるアメリカの環境法の水準に達し、アメリカ政府が独自に行う環境アセスメントと整合するように調整することを要請する。

2. 沖縄における米軍基地の建設と米国海兵隊の軍事演習がジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物におよぼす影響について、アメリカ合衆国の環境法にもとづいて環境アセスメントが行われること。

私たちは、沖縄における米軍基地の建設と、その基地を使用して行われる米国海兵隊の軍事演習計画には、「国家環境政策法(NEPA)」や「絶滅のおそれのある種の法(ESA)」などのアメリカ合衆国の環境法がもとになるべきだと考えている。基地建設・軍事演習がジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナなどの絶滅のおそれのある生物およびその生息地に対しておよぼす影響について、これらの法律の定めるところにより環境アセスメントが実施されることを要請する。

3. 絶滅のおそれのある種の適切な保護対策を実施すること。

IUCN勧告で求められているように、環境アセスメントの結果にもとづき、米軍基地および演習区域内において、絶滅のおそれのある種であるジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの生存を確実にするための適切な対策を実施することを要請する。

以上

 
添付資料1.IUCN 勧告(2000 年 10 月 アルマン・ヨルダン)
沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全
添付資料2.IUCN 本会議における NGO、日米両政府のコメント

 


添付資料1.IUCN勧告(2000年10月 アンマン、ヨルダン)
 
CGR2.CNV004xCNV005
Rev 1

沖縄島のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全

<WWF Japan 訳>

ジュゴン( Dugong, Dugong dugon )は、世界的にみて絶滅のおそれのある種であり(危急種VUA1cd, IUCN 2000)、日本では過去30年間(1970年以降)、沖縄島の海岸でのみ記録されていることから、沖縄島周辺の地域個体群も絶滅のおそれのある種(絶滅危惧種CRD1またはCR C2b,日本哺乳類学会1997)であり、また、ジュゴンは、アメリカの「絶滅のおそれのある種の法」(Endangered Species Act)の対象としてあげられていることに注目し、さらに、ジュゴンが周年生息する範囲は、現在では沖縄島の中部および北部の東海岸に限られ、これは沖縄のジュゴンの保全にとってこの範囲がきわめて重要であることを示しており、この孤立した生息場所の面積は小さく、その生息数もたいへん少ないことに注目し、

アメリカ合衆国海兵隊の軍事空港を建設する計画が、生息域中央部の海域または隣接する陸域において(普天間飛行場の移転先として)、立案されていることを理解し、

この空港建設計画は、実現すれば、ジュゴンの重要な休息場所および採食場所になっている辺野古沿岸のサンゴ礁と海草藻場を消滅させ、小さな地域個体群の生存に対して大きな脅威を与える可能性があることを認識し、

ジュゴン個体群が生存のために依存しているサンゴ礁と海草藻場を含む海域・陸域の生息場所に対し、建設が与え得る影響を測定するために、自発的な環境アセスメント(EIA)を実施するとの日本政府の最近の決定を保証し、

沖縄島北部の山原(やんばる)の亜熱帯林には、ノグチゲラ(Okinawa Woodpecker,
Sapheopipo noguchii)(絶滅危惧?A類, IUCN 2000)やヤンバルクイナ(Okinawa Rail, Galliralusokinawae )(絶滅危惧?B類,IUCN 2000)をはじめ、国際的に関心が持たれている多数の固有種、固有亜種が生息し、生物多様性の保全上きわめて重要な地域であることに注目し、

山原(やんばる)では、ダム建設、林道建設、森林伐採、移入種の侵入などによって生息場所が劣化し、多くの固有種、固有亜種の生存が危ぶまれていることに注目し、

民間人の開発行為や立ち入りが禁止されているアメリカ軍演習場(アメリカ合衆国海兵隊ジャングル戦闘訓練センター)が、野生生物の避難場所の役割を果たしてきたことを想起し、

米軍演習場の半分が、近い将来日本に返還される決定がなされ、森林生態系保護地域および国立公園に指定される可能性があることを歓迎し、

アメリカ合衆国海兵隊の支配下に残された地域における軍用機のヘリパッド7か所とそれらを結ぶ軍用道路の建設が、残されている最も重要な自然林地域において、固有種の生息地の劣化をひきおこす可能性があることに留意し、

さらに、頻繁におこなわれる軍事訓練が、ノグチゲラやヤンバルクイナなどの希少な野生生物種に影響を与え、この地域において絶滅のおそれを高める可能性があることに留意し、

世界自然保護会議は、その第2回会議(2000年10月4-11日、アンマン、ヨルダン)において、

1. 日本国政府に対し、以下のことを要請する;

  1. ジュゴンの生息場所やその周辺における軍事施設の建設に関する自発的な環境アセスメント(EIA)を、できるかぎり早急に完遂すること、
  2. ジュゴン個体群のさらなる減少をくい止め、さらに、その回復に役立つジュゴン保全対策を、できるかぎり早急に実施すること、
  3. 山原(やんばる)の生物多様性と絶滅のおそれのある種およびジュゴンの地域個体群の保全計画をできるかぎり早急に作成し、これらの種とその生息地の詳細な調査研究を行うこと、
  4. 山原(やんばる)の「世界自然遺産」への指名を検討すること、

2. 米国政府に対し、日本政府の依頼により自発的な環境アセスメント(EIA)に協力することを要請する;

3. 日米両国政府に対し、以下のことを要請する;

  1. 自発的な環境アセスメントの結果を考慮しながら、それにもとづいてジュゴン個体群の存続を確実にするために役立つ適切な対策を講じること、
  2. 上記1(c)で言及した調査を考慮しながら、予定されている軍事施設建設と演習に関する計画が環境へおよぼす影響についてアセスメントを行い、それにもとづいてノグチゲラおよびヤンバルクイナの生存を確実にするために役立つ適切な対策を講じること。

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  • WWFジャパン(WWF- Japan)
  • (財)日本自然保護協会(NACS-J)
  • (財)日本野鳥の会(WBSJ)
  • 日本雁を保護する会(JAWGP)
  • 野生動物救護獣医師会(WRV)
  • エルザ自然保護の会(ENC)

 


添付資料2
 

IUCN本会議におけるNGO、日米両政府のコメント

注:本会議でのコメントを録音にもとづいて訳したものであるが、日米両政府の発言については、政府関係者による校閲は行っていない。

NGO(WWFジャパン)

私たちは、沖縄のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全に関する決議案を提出した。沖縄を含む多くの日本人が、このIUCNの決議に、大きな関心と期待を寄せている。47,000の人々が、IUCNに対しこの決議を採択するように求めた要請書に署名した。署名簿は、沖縄のブースで展示された。彼らは、沖縄の固有種や絶滅危惧種が保全されることを強く望んでおり、また、IUCNとその決議に大きな信頼と尊敬をいだいている。会場の皆さんが、私たちの決議案を支持するようにお願いする。

日本政府(外務省)

日本政府はすでに普天間飛行場の移設、北部訓練場の返還に際して、自然環境に重大な影響を与えないよう最大限の努力をはらうという政策目標を定めている。この政策目標にもとづき、日本政府は、普天間飛行場代替施設の基本計画の作成より前に、ジュゴンの状況の評価を進めることを決めた。このアセスはできるだけ早くやりとげる。いくつかの理由で、我々はコンセンサスに加わることを棄権したい。しかしながら、先に述べたとおり、我々は、ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの生存を保証するために最大限の努力をする。この発言を記録に残し今会議の決議集の中に盛り込んでほしい。

アメリカ政府(国務省)

ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保護に関する本決議の意味を考慮し、アメリカ政府は絶滅のおそれのあるこれらの種とその他の種を保全するための努力を支持する。そして、決議への反応が示す、これらの種が生存し続けるようにとの関心に敬意を払うとともに、それを共有する。最初の決議案の文案には、いくつかの疑問を持っていたが、現行の案は、より明確になっていると思う。その意味で、我々は普天間移設計画に対する包括的で透明性のある環境アセスメント
(EIA)を支持するとともに、日本政府の要請によって、日本政府が行う環境アセスメント(EIA)に協力する用意がある。アメリカ政府は、日本の環境を保全するために、あらゆる努力を払うという約束を公にしている。そのような努力を行うなかで、我々は、関心のあるNGOとの対話を歓迎する。この発言を記録に残すようにお願いする。

以上

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