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生物多様性を脅かす外来種問題

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2000.10.01

特集「エイリアンスピーシーズ」その8 まとめにかえて

会報『自然保護』No.450(2000年10月号)より転載


今回は「移入種問題」という聞き慣れないテーマを扱った。従来、帰化植物や帰化動物と呼ばれ「馴染んでいくもの」といったニュアンスがつきまとった対象が、今、生物多様性に影響を与える重大な問題として、むしろ国際社会から新たな形で投げかけられている。ニュージーランドは一世紀半くらいにわたる「移入種の実験場」を経て、世界で最も厳しい移入種政策を確立し、その経験を国際社会に還元しようとしている。

さて、日本はといえば、世界の流れに促されようやくこれから対策を始めようというところ。すでに、アライグマやブラックバス、マングースの例に見られるような深刻な事態が各地で起きている。農業・漁業被害などとともに在来の生態系へのダメージは、未だカウントされないうちにも、日々滅びつつある。今回の事例紹介では主として移入動物をレポートしたが、植物や昆虫などについても多くの事例が報告されていることはご存知だろう。

今後ますます進行するグローバリゼーションの潮流の中で、物流、人の移動などがさらに激しくなることは避けられない。現状の検疫体制や出入国管理体制では、とても移入生物種の進入を防ぎきれないのは明らか。ならばと、この水際防御作戦を厳格にするには、それに合意できるだけの国民の知識と理解力が欠かせないのだ。すでに侵入種となってしまったものの駆除や管理についても同様だ。IUCNガイドラインが、「啓発・啓蒙」を最優先課題としているのもそのためである。

国民の理解力という観点から日本の現状を眺めればどうだろう。いま最も深刻な被害や大々的な生態系への打撃をもたらしているのが、アライグマやブラックバスのような、逃亡したり放流した動物によるものだろう。珍しい動物を飼いたいというエキゾチックアニマル・ブーム、遊びに都合のよい生態系に改変して楽しむようなフィッシング・ブーム……人間の欲望やビジネスには際限がないといっていい。これに規制をかけたりルール化し徹底していくためには、ベースとして、自然の本当のしくみと価値を理解する感性と能力を養う以外にない。が、そう十分な時間的余裕があるわけでもない。

手をこまねいている間に日本の生態系が各地で改変され、私たちは「兎追いしかの山、小鮒釣しかの川」だった”ふるさと”をいつしか失い、代わりに「アライグマ追い……、ブラックバス釣り……」などというブラック・ジョークのような近未来が待っているかもしれないのだ。

(保屋野初子)

企画構成 『自然保護』編集部・志村智子、オフィスこむん・保屋野初子
取材執筆 保屋野初子、島口まさの

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